67/92
第五章 揺らぐ王国 新たな王女
「ホーキン卿、この少女が?」
レナード・ロゼ・ホーキンに連れられて、王宮を訪れた一人の少女に全ての人々は息を呑んだ。
小柄なその少女は、修道服姿で顔を覆うほどの大きなフードを被り、どこかオドオドしているように辺りを見渡していた。
「そうです」
静かに頷く。
「そ……そうですか」
無理やりに笑顔を作りながら、元老院議長セロンは少女の前に歩み出た。
「さあ、バーバラ様。フードをお脱ぎください」
ホーキンに促され、小さな頭を包んでいたフードをゆっくりと脱いだ。
「!!」
思わず息を呑む。
それは、その姿を目にした全ての者に共通した。
確かに、一目見れば少女がアルゼン陛下の御子だという事が分かるとホーキンは言った。
王宮としても、アルゼン陛下の傍系から国王を選定することは避けたかった。
それは、いかに中央に名だたる大国セフィーリアと言えども、臣下籍に一度でも降りた者を玉座に就けては諸外国との外交に支障をきたすからだ。