第五章 揺らぐ王国 七貴族議会
「それは……そのですね」
男の言葉を受け、バートン公爵は冷や汗を流しながら言葉を探している。
王国の貴族の中でも上席に位置し、多くの豪族を門下に従える大貴族バートン公爵は、六十を超える老齢で若い頃から七貴族議会に出席していた。
それは、ホーキン公爵が議会に出席する以前からである。
故か、ホーキン卿が議長職についてからもどこか軽く見るところがあった。
だが、それはすぐに見直されることとなる。
優れた政治手腕と統率力は驚愕に値し、あの元老院までも手玉に取っている。
自分との器の違いにもはや脱帽するより他になかった。
だからだろう。
今は十ほど年の離れた男の詰問に答える事が出来ない。
「……いいでしょう。バートン卿にはこれからもお力添え願う事もあります。その時には何卒ご協力のほどを」
言葉とは裏腹に、ホーキン卿の視線は冷たい。
「次にハミルトン卿」
突然、名を呼ばれ青い顔でホーキンを見るのはまだ若い青年だった。
古くから王宮で財務を取り仕切る、由緒正しきハミルトン家の次期当主は政務についてまるで理解していなかった。
「な……何か?」
声が裏返っていた。
「なぜ、これほど国民から税をとる必要があるのです?」
突き刺さるような視線に、冷や汗を浮かべながら硬直する。
その様子を、呆れた表情で見ながらもう一度出席者を見渡し言った。
「皆様、分かっておられますか? 我々は、著しく国民からの信頼を欠いてしまった事を。地方では、決起した国民と領主軍が衝突したという話も聞いています。これが、王国全土に広がればどうなるか……」
熱弁を振るうホーキンに、冷や水を浴びせるような言葉が向けられた。