第五章 揺らぐ王国 七貴族議会
薄く広がる雲の隙間から洩れる月明かりと、外郭沿いに掲げられた無数の篝火が微かに王都を照らし出す頃。
静まり返った宮殿の中、城の最深部の一室に集まる人影。
それは、他の者の目に付かないように密やかに行われていた。
皆、落ち着かない雰囲気で室内に用意された席に腰を下ろす。
やがて、この場に皆を招待した男が部屋を訪れた。
皆、一様に起立すると恭しく頭を下げた。
「皆様、お忙しい中お越しくださいましてありがとうございます」
男は、深々と頭を下げると静かに自らの席に腰を下ろした。
そして着席するように視線で促す。
「さて皆様・・・・・・まずはしばらくの間、議会に出席できなかった事をお詫びします。では、早速本題に入りたいと思うのですが。この現状はどういう事なのですか?」
穏やかな表情とは裏腹に、レナード・ロゼ・ホーキンの目は笑ってはいない。
出席者たちを見渡した。
皆、一様に口を閉ざしている。
「まず、バートン卿……貴方には、貴族たちの統制をお願いしていたはず。この有様はどういうことなのですか」
あからさまに不満の色を滲ませる。
口調の穏やかさとは反対に、苛立った視線が向けられた。
それもそのはず。
現在、王国を統べる者の不在といっても過言ではない。
それは、すなわち貴族たちを咎める者が居ない事を差す。
今まで、王宮の権威に恐れ大人しくしていた地方の下級貴族にとっては、またと無い好機だった。
ここぞとばかりに、位の低い貴族たちは民衆に権力を振りかざす。
その事は、以前から懸念されており、この事態を防ぐために貴族の統括を指示していたのだ。
しかし、現状は日に日にその横暴振りは増し、地方から順々に王国の雰囲気を悪くしている。






