第四章 庶子の王女 もう一人の王女
「それは……何かの間違いでは?」
言葉の静かさとは裏腹に、頭の中は激しく乱れていた。
それは、まさに青天の霹靂だったからだ。
「私の情報に間違いはない」
議論を挟む余地の無いほどに断言しきる。
厳しい視線に、思わず息を呑んだ。
「セフィーリア王国は、新たに王位継承権を有する少女を王宮に迎え入る」
まるで、崩れ落ちるようにその場に座り込んでしまう。
あまりにもありえない言葉だった。
それは、セフィーリア王国の根幹を揺るがす。
つまりは、王家の交代。
「そんな……信じられない」
茫然自失……。
体中が小刻みに震えるのを止める事ができない。
「エディーネ、落ち着くんだ。アルチナ、詳しく教えてくれないか」
震える小さな肩を抱きしめながら、キリアは言葉を続けた。
「セフィーリア王国には、ユーリ国王陛下とエディーネ王女以外に継承権を有する者は存在しないはず。つまり、王家の血統以外の者に王冠を被らせるのか? それでは国民が納得しないのではないのか」
現在、政務が出来ないとはいえ、国王が存命している。
その事実を無視して、新たに王族以外の人間を国王に推挙するなど前例が無い。
まして、そのような横暴が通るほどセフィーリア王国が混乱に陥っているとはとても思えない。
「それは違う」
静かな言葉だった。
「確かに、セフィーリア王国には王位継承権を有する者は国王と王女だけだった」
エディーネには、その言葉の意味を理解する事ができなかった。
「だけだった……?」
思わず、その言葉が漏れた。
その言葉は、その事がすでに過去の事実に過ぎないという事になる。
つまり・・・・・・
「王女、お前には母が違う妹がいたのだ」