第四章 庶子の王女 もう一人の王女
「しかし、その者……いえ、そのお方を我々も国民達も知りません。そのような事で、果たして国民からの支持を得られるかどうか。まして、そのお方が本当にアルゼン陛下の落胤だという事をどのように証明されるおつもりですか」
毅然とした口調で問う。
しかし、その口調とは裏腹に隠し切れない不安な思いが表情に滲み出る。
そして、それはこの場に立ち会う者、全てに言える事だった。
「ご安心ください。この事実を知る者は、少数ながらも王宮に存在します。その中の一人、エルミダに証言してもらいます。彼女は王宮での生活も長いことから貴族たちの信も深い。それに、元が商家の出である事から国民からも慕われております」
一同がざわめく。
かつて、もっとも国王から信頼を置かれていた侍女の証言とあれば疑う余地は無い。
「元老院の皆様、ご決断を」
しばらくの沈黙が議場を支配した。
「分かりました。この件に関して、我々元老院は貴殿にお任せする事とします」
「セロン議長閣下並びに元老議員の方々の賢明なご判断に感謝します」
深々と一礼する。
「後日、そのお方を元老議会にお連れ頂きたい。その上で、我々は精査の上で正式にそのお方に王位継承権を有する『ドゥークス』の称号を承認いたしましょう。それで、そのお方の御名はなんと申されるのですか? ホーキン卿」
一同の視線が男に注がれる。
「バーバラ……現在は、バーバラ・ローゼンと名乗りアシムのロシェル修道院にて修道女として生活されております。しかし、本来の名はバーバラ・サラ・セフィール様。おそらく、その御姿を一目見れば彼女が王位の正統な継承者だと分かるでしょう」