第四章 庶子の王女 見極め
「……本気を出せ」
赤い瞳が危険な光を放ち始める。
それは一歩間違えれば殺気とも受け取れるものだった。
「……それとも死ぬか?」
ゆっくりと歩を進める。
その光景に、背に寒いものを感じた。
傲慢なほどに緩慢な動きで、徐々に近づいてくる。
やがて、目の前に迫るもの。
鈍い光を放つアルチナの剣が、高く掲げられた。
「もう一度、言ってやろう。……本気を出せ」
一言、呟いた後……獅子の咆哮の如き、裂帛の気合と共に剣は振り下ろされた。
鈍い光を放つ切っ先。
それは、エディーネの目の前で静止している。
「なるほど……お前の力は大体分かった」
納得したような口調。
その中には僅かな満足感が含まれている。
その手に握り締められた剣。
鋼色の刃には一筋の細い裂け目が走っていた。
激しく乱れる呼吸の中、一心不乱に斬り上げたエディーネの細剣がアルチナの巨剣を弾き返したのだ。
激しい力の衝突のため、エディーネの剣は真ん中で二つに折られていた。
先ほどまで、辺りを支配していた圧倒的な存在感が徐々に薄れていく。
思わず体中の力が吸い取られていくような虚脱感に襲われた。
エディーネは、力無く床に座り込む。
「今、お前の国で起こっている真実は、この程度の衝撃では済まないぞ」
見上げた先、そこには屈強なる戦士の如く威風堂々たるアルチナの姿がある。
「今まで、隠され続けてきた事実が動きだした」
ゴクリと喉が鳴る。
「知りたいのであれば・・・・・・」
強い光を放つ赤い瞳から、目が離せない。
「王女、後で私の部屋に来い。何が起こっているのか教えてやる」