第四章 庶子の王女 見極め
エディーネは、これまで幾度も死線を潜り抜けてきた。
それは、生半可な剣の腕では決して生き残る事が出来ない過酷な道のり。
キリアと出会う前から、幾人もの刺客と相対し返り討ちにしてきた。
それは、襲いかかる死の誘いを、手に握り締めた剣で払いのけて前に進む悲しみの日々。
いつ失うとも知れない、生への異常とも言える執着こそが生き残る最後の一線となる。
(もう一度、生きて国王に……ユーリに会いたい)
この思いだけが、絶望に満ちた世界の中でエディーネが歩を進める唯一の希望だった。
この昼夜を問わずに繰り返される襲撃の連鎖の中を、剣を握り締め息を切らせて走り抜けてきたのだ。
だからこそ生まれるものがある。
それは、決して過信ではない。
繰り返される戦いの中で培った、自分の剣に対する絶対的な信頼。
しかし。
「こんなものなのか王女?」
険しい表情で問いかける。
対して、エディーネは疲弊しきった表情で今にも掌から零れ落ちそうな剣を、歯を食い縛って握り締めていた。
あまりにも違いすぎる実力。
住む世界が決定的に違う。
流れ落ちる汗の雫と、整える事が不可能なほどに乱れた呼吸。
おそらくは、この鍛錬所に入って、まだ十分と経っていないだろう。
しかし、エディーネには何時間も戦い続けているような疲労が感じられる。
男を思わせるほどの力強い剣撃は、受けるたびに両の掌を痺れさせる。
かと思えば、エディーネよりも身軽な動きで翻弄する。
一方的な攻撃に、エディーネの体力を激しく奪う。
堪らず、エディーネの膝が崩れる。