第四章 庶子の王女 見極め
徐々に、太陽が傾き始めた頃。
「おい王女!」
修道服を纏いながら、修道女たちに混じって広大な庭に干された無数の洗濯物を取り入れるエディーネに声をかける者。
修道院長アルチナ・コンスターは、おもむろにエディーネを呼ぶとズカズカと回廊を進む。
「アルチナ殿、どちらに行くのです?」
エディーネからの質問を無視しながら歩を進めると、やがて本館から少し離れたところにある小さな建物の中に姿を消した。
エディーネは無言で後に続く。
「……ここは」
建物内は、天井の高い殺風景なものだった。
壁には無数の刀剣が立て掛けられ、そのどれもが激しく消耗した形跡がある。
視線を下に向けると、床はなく踏みしめられて固まった土が剥きだしだった。
「……鍛錬所。皆はそう呼んでいる」
「……!」
そう言いながら、こちらを振り向いたアルチナの手には剣が握られている。
その剣は、キリアの剣に比べて一回りほど小さいものだった。
それでも、剣という区分に入るのか疑わしいほどに鈍重な造りをしている。
「私は自分で感じたものしか信じない。お前がどれほどの力の持ち主か確認させてもらうぞ」
大の男でも扱う事に苦労するだろう。ましてや、エディーネには持ち上げる事すら叶わないほどの巨剣を、軽々と片手で振るう。
「構えろ、王女!」