第四章 庶子の王女 修道院長
「そういえば、不思議と修道院を訪問しようとすると急な用件が入っていました」
思い出したようにエディーネは言う。
先ほどまで、エディーネは室内で院長が訪れるのを待つ間、ソファーに腰を下ろし何やら思案に暮れていた。
「ロシェル修道院は、ホーキン卿が治める領地に存在していました。私も幾度かアシムを訪れた際には訪問しようと思っていたのですが」
「しかし、エディーネも当時は王女として動き回っていたのだろ。ならば、急な執務が入るのは仕方がないことではないのか?」
「えぇ……でも、今思うと、何か私が修道院を訪れる事を避けようとしていたような気がします。まるで……」
言葉を遮るように扉が勢いよく開いた。
「私がこの修道院の責任者アルチナ・コンスターだ」
「……」
最初、その人が修道女だという事をエディーネとキリアは理解できなかった。
二人はしばらく唖然とした表情になる。
燃え上がるような真紅の瞳に、低く重厚な声。
エディーネが見上げなければなら程の長身に、紺色の修道服越しに分かるほど無駄の無い鍛えられた身体はキリアと並んでも見劣りしない。
威風堂々と言う言葉が、これほどに似合う人はそうはいないだろう。
「なんだ?」
ギロリとその瞳が光を放つ。
「いいえ何でもありません」
二人は反射的にそう答える。
逆らってはいけない。そう、心の中の何かが叫んでいる。






