第三章 黒い使徒 枢機卿議会
「結論から申しましょう。エディーネ王女も、ユーリ国王同様に王国の中枢に教会の勢力が及ぶ事を嫌っておられた。私は、幾度か説得を試みましたが全ては無駄に終わりました。せっかくユーリ国王に退席していただき新たな国王を選定したというのに……」
再度、ため息が漏れる。
「だが、これからどうするのだ? セフィーリアにはもう王家の血統がいなくなる。そうなれば、新たな王を選定する事となるのではないか。まさか貴方が新たな王にでもなるおつもりか?」
エリック枢機卿の言葉を受けて、男は悩む素振りを見せながら答える。
「そうですね。もし仮に、私があの国の王になったとしましょう。そうなれば、セフィーリア王国に対する計画はその時点で、ほぼ終了したといえましょう。しかし、代償が大きすぎます。それは、王となった私は他国を行き来する事が非常に難しくなる。全体的に見れば大きく計画は遅れる事となるでしょう。それに、我らが目指すものはそのような小さき事ではありません」
世界にその名が知られた大国の玉座を小さき事と言い捨てる。
「ご心配は無用です。王家の血を受け継ぐのはあのお二人だけという訳ではございません」
そう言って、レナード・ロゼ・ホーキンは怪しく笑った。