第三章 黒い使徒 枢機卿議会
「さて、では次に……」
「ラーグル公国は、前回の報告のまま継続中です」
答えるのはエリック・アンダーゾン枢機卿。
細身で白髪が特徴的な老齢の聖職者。
「ガンゼルグ連邦国だが、大きく変化は無い」
横柄な口調で、簡潔に現状を報告するのはゴードン枢機卿。
「ふむ……なるほど」
報告を受けて、思案していると。
「時に、貴方様の御国はどうなのですか。レナード枢機卿議長」
エリック枢機卿は、ギョロとした目で男を見つめる。
「話に聞きますと、貴方の国の国王は不幸にも毒殺未遂にあわれ身動きが取れず。そう上に、王女が反逆罪で逃亡中。……少しやり過ぎかと思いますよ。このまま事が進めば、我らの計画は大きく修正しなければならない」
それは、まるで諭すような口調だった。
「そこだ! ワシもそれが聞きたい。あの国王を昏睡状態にしたのは分かる。元々、我ら教会にとって不都合な考え方の持ち主だ。だが、次代の王がいないとなれば国は乱れるぞ。あの王女を、王に据えるという話だからこそ秘薬を貸し与えたというのに」
ゴードン枢機卿は、あからさまに不機嫌そうな表情で問いかける。
「皆様の言いたい事は深く理解いたします。確かに、エディーネ王女を次期国王にという事は私も考えました。事実、私の一族の者を通して元老院にこの意見を提案させました。しかし、戴冠式の直前に、私はエディーネ王女と接見する機会がありました」
深いため息をつき、苦々しい表情で言葉を続ける。