表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TREASON PRINCESS  作者: KUROKO A
38/92

第三章 黒い使徒  束の間の安らぎの中で


「エディーネは、海を見るのが初めてなのか?」


エディーネが振り返ると、眩しい太陽の光の中に佇む青年が目に入った。


「キリア殿、海というものがこれほどに雄大で美しいものだとは知りませんでした」


恋する少女のように、頬を紅潮させて熱弁する。


「世界には四つの海があると聞きますが、他の海もこのように美しいのでしょうか?」


目を輝かせ、嬉々とした表情を浮かべる。


そこには、王国に無実の罪を着せられ厳しい逃亡生活を送る王女の苦悩は見えない。


つかの間に流れる平穏の時。


それは、長く続かないことは十分に理解している。


だからこそ、この限られた時間……次にいつ訪れるとも知れない時間を大切にしたいのだ。


「それぞれが、いろいろな表情を持っている。北は氷塊が幾つも浮かぶ危険な海。西と東は荒れ狂う波が印象的だった」


腕組みをしながら、昔を思い出すようにしみじみと言った。


「そうなのですか」


意外な答えに驚きながらも、今は目の前に広がる絵画のような光景を楽しんでいる。


そもそも、この二人がフォルーガ海の真ん中を航行する輸送船に乗ることになったのは二日前までさかのぼる。


連日続いた大雨のために、深い霧が立ち込めるカース埠頭で足止めを受けていた時だった。


元々、カース埠頭周辺は霧が発生しやすい地域なのだが、これほど濃厚な霧の中では小型の船舶で沖の出ることは自殺行為に等しかった。


それでなくても、交易ルートの終点に位置するルーゼル港はカース埠頭からどれほど急ごうとも四日はかかる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ