第二章 二つの真実 ローレンス神殿
「待ちなさい。なぜ、エディーネさまがその容疑に掛けられている」
威厳あるその声で、モーガン副司令官に問い詰めるのは元老院議長シリア侯爵だった。
長年、元老院の長として政治に関わってきただけあり、このような状況でも冷静に対応している。
「これは、元老院議長シリア殿。では、お話いたしましょう。まず、王位簒奪罪に関して。国王の意思を無視して、助言機関に過ぎない元老院の言葉に惑わされ王位に就こうとした事が国王陛下から玉座を奪い取ろうと画策した事になります。セフィーリア王国では国王は崩御されるまで国王です」
獰猛な獣のような唸り声を上げるシリア侯爵。
確かに、国王の退位など王国が建国されて以来、聞いたことが無い。
国王退位を臣下の者のみで決定したという後ろめたさが無いわけではない。
「続いて、国王暗殺未遂。これは、エディーネ王女にしか実行できません」
断言しきったモーガン副司令官。
昔、剣を握って戦場を駆け抜け、敵の騎士を震え上がらせた頃のような鋭い目付きでモーガンを見据えるシリア侯爵。
「その理由、是非とも聞かせていただきたい」
それは、今にも斬りかかりそうな強い圧力が込められている。
しかし、モーガン副司令官も並みの騎士ではない。
竦み上がるような圧迫感にも涼しい顔つきで答える。
「国王陛下の寝室に入るには、幾つもの身体検査を受けなければならないことは知っておられますね」
静かに頷く。
「ひとつだけ例外があります。それがエディーネ王女です」
王族であるエディーネは、そのような身体検査を受けずに入室できた。