第二章 二つの真実 ローレンス神殿
男の言葉と同時に、聖堂内に雪崩れ込んできたのは他国にもその名が轟くセフィーリア王国近衛騎士団第一師団だった。
「現在、エディーネ王女に二つの嫌疑が掛けられています」
男は、なにやら紙面に目をやりながら話す。
「同時に、元老院議長シリア侯爵と副議長ケイト伯爵。それにバーゼン公爵にルーモア伯爵も。現時点を持って王位簒奪に加担した罪で逮捕します」
どよめく大聖堂内、理解できない様子の列席者は間抜けな表情をするより無かった。
「エディーネ王女、貴女にも王位簒奪の容疑が掛けられています。さらには……」
その後の言葉が、エディーネの頭には入ってこなかった。
「な……何といいました?」
言葉とは裏腹に、その表情は凍り付いていた。
今しがた、モーガンが口走った言葉の意味が分からない。
「何度でも申しましょう。エディーネ王女には、王位簒奪と国王ユーリ陛下の暗殺未遂の容疑が掛けられています」
鋭い視線は、エディーネを射抜くように見据える。
「何を言っている! 王女……いや、今は正式に戴冠式を終えられてセフィーリアの女王となられた方に」
声を荒げるケイト伯爵。
普段の温厚さをかなぐり捨てて男に掴み掛かる。
「まだ、王冠を受け取ってはおられない。式の途中のはずです。故に、まだ正式には王位には就いておられない」
確かに、エディーネの頭上に納まるべき王冠は大司教の手の中にある。
「我々としても残念でなりません。しかし、国王暗殺はそれを考えただけでも死罪。陛下の容態を考えれば、実の姉君に在らせられる王女といえども……」