第二章 二つの真実 真実
「国王の助言機関である元老院とは違い、七貴族議会はあくまで貴族たちを統率し、貴族間の紛争を防止することを目的に作られました。そのために、王国でも上席の大貴族で構成されています。しかし、その事が仇となりました。元老院議員は、皆が高い位にある貴族とは限りません」
血統よりも能力を重視した元老院と、血統を重視した七貴族議会。
誇り高い貴族から見れば、どちら側を支持するかは火を見るより明らかだった。
元老院の唯一の強みであった、国王の助言機関という立場も、ホーキン卿が国王の政務を代行している現状では意味を成さない。
「ホーキン卿は元老院議員ではないのですか?」
元老院は能力重視だという。
ならば、元老院を凌駕するほどの実績を生み出したホーキン卿ならば、問題なく元老院議員になれただろう。
「ホーキン卿は、元々は元老院議員でした。当時はまだアシム卿としてホーキン公爵家が治める領地の一部を任されていました。しかし、公爵の爵位と広大な領地を受継いでしばらくしてから議員を辞職し、七貴族議会に入りました……」
エディーネは、ほんの僅かな時間だったが口籠った。
「……話が、外れてしまいましたね」
キリアも納得して頷いた。
「私は、ひとつの条件をつけることで、その申し入れを受けることを了承しました」
ハッキリとした迷いない言葉だった。
「ひとつの条件?」
「退位に関する事です。私がその時期を決定するというもの」
呟くほどに、小さな声だった。
しかし、男にはその小さな声で紡いだ言葉の中に含まれた深い思いの篭もった響を聞き逃さなかった。
「ユーリ国王が目覚めるまでの間ということですか?」
そっと目を閉じて、小さく一度頷いた。
誰よりも王国の行く末を案じ、国王の身を案じている。
そのような人がなぜ、今このような状況に追い込まれているのかが理解できない。
本来ならば、こんな所で息を潜めているような人ではない。
セフィーリア王国の王宮で玉座に座り、女王として政務に勤しんでいるはず。
「すべてはあの日、ローレンス神殿から始まりました」