第二章 二つの真実 真実
「厄介な奴が相手になってしまった」
険しい表情のキリアは、大きな切り株の上に腰を下ろして考え込む。
「……一つだけ確認したい」
それは、真剣な眼差しだった。
「分かっています」
静かな口調で話し出すエディーネ。
「確かに、私はセフィーリア王国の国王となるはずでした」
事実をそのままに述べるように、抑揚のない淡々とした口調だった。
そこには、過去の栄光への未練も、奪い取られた地位への執着も感じられない。
「ユーリ陛下は、原因不明の病により政務が出来ない状況が長く続きました」
つとめて平静を装うように、静かな口調で言葉を紡ぎ始めた。
「その状況に業を煮やした王国元老院は一つの案を提示したのです」
押し殺しても隠し切れない思いが見え隠れする。
「それは、ユーリ陛下に王位から離れていただき、私に戴冠を促すものでした……もちろんですが、私はその申し出を断りました」
迷いのない口調だった。
「当然です。この国には、正統な国王がおられるのだから……。ですが、王国がこれまでにない危機に瀕していることも事実。現在、国内の貴族たちは王国の諮問機関である七貴族議会が取りまとめています。実際に、議長のホーキン卿はよく働いてくれています。しかし、王国に両雄並び立たず。このままでは貴族たちの忠誠は国王から離れてしまう。言葉にすることも甚だしい事ですが、このままの状況では王家の交代劇にもなりかねません」
事実、徐々に力を増し始めた七貴族議会は、王国の最高機関である元老院をもその権威において凌駕し始めた。