第二章 二つの真実 二人の戦士
「このお姫さまはねぇ、実の弟で現国王でもあるユーリ陛下の暗殺未遂と王位簒奪の罪で第一級の尋ね人となっている人だよ。見つけ次第、生死を問わずに王国に連れてくるようにという極秘の手配書も出回っている」
「何を言うか! 私は、陛下の暗殺や王位簒奪など……」
顔を赤くして、命一杯の声で否定しようとする。
しかし、エディーネは言葉を遮られる。
「……!!」
目に映らないほどの剣速で、ハイネは腰から剣を抜くと、そのままの速度でエディーネの首もとに剣先を突きつけたのだ。
「今、ボクはキリア君と話をしているんだ。君は黙っていろ」
嘲笑するような顔だったが目元は笑っていない。
放たれる強烈な殺気に足がすくむ。
「君なんて、いつでも殺せるんだから」
今まで、エディーネの命をつけ狙っていた者たちとは桁が違う。
間髪を入れず、その剣を払いのけて間に入り込むキリア。
「本当は、こんなつまらない契約なんてさっさと終わらそうと思っていたけど、君と戦うことが出来るなんてね。これは、想像以上に楽しくなりそうだ。契約者に感謝しないといけないね」
それだけを言うと、踵を返して深い暗闇を孕む森の中へと姿を消した。