第二章 二つの真実 二人の戦士
炎に焼かれた灌木が、その高熱に負けて弾ける音が小さく響く。
「キリア殿は、なぜ傭兵となられた?」
ふと、エディーネは疑問に思った。
この一週間、幾度か刺客と相対する場面があった。
その度に、この男の並外れた戦士の力量を目の当たりにしている。
望めば、正規の騎士団にも入団できるだろう。
事実、この男の戦いにおける冷静で的確な状況判断にはエディーネも舌を巻く。
「それは……」
男が口籠りながら答えようとした時だった。
「自国の国王さまに裏切り者の烙印を押されたからだよ! そうだろキリア君」
場違いなほどに明るい口調が深い森の奥から聞こえた。
すぐさま、剣の柄に手を掛ける二人。
「出て来い、ハイネ!」
声を上げる男。
どうやら、声の主に心当たりがあるようだ。
暗闇に沈む木々の中から現れたのは、若い男だった。
北方に住む民族特有の鮮血よりも濃い真っ赤な髪に、僅かに幼さを残る笑みを貼り付けたような顔立ち。
楽士のような服装に、頼りないほどに細い体つき。
飄々とした印象を受ける。
「どういうつもりだ?」
険しい表情のキリア。
「キリア殿、この者は?」
並々ならぬその剣幕に、ただならぬ事と感じながらも問う。
「ハイネ・ガルシア。ギルドでも五本の指に入る狂戦士。もっとも戦場で相対したくない男だ」
思わず息を呑む。