第二章 二つの真実 二人の戦士
焚き火の炎が闇夜に踊る。
ウルグナの森に入って二日目。
彼女と行動をともにして、一週間の時が流れた。
相変わらず、人目を避けるように地元の人間からも忘れ去られたような古びた街道を進む。
何か目的があるわけでもない。
ただ、同じ場所に長くいると、刺客に襲われる可能性が高くなるからだ。
そのために、彼女は動き回っている。
ローブを纏い、表情を読み取れないほど大きなフードを被り、見た目には聖地を巡回する巡礼者のように見える。
「貴女は、長い間このような生活をしているのか?」
静かに燃える炎の中に、灌木を投げ入れながら向かい側の女性に問いかける。
「……もう、一年になります」
両膝を胸に抱え、頬を埋めながら炎を見つめる。
揺らめく炎に照らし出された、美しい顔に表情は無い。
「辛かったのは、最初の二、三日だけ。あとは、いつ襲い掛かってくるとも知れない追っ手から逃れるために、必死でしたから」
ゆっくりと顔を上げて、満天の星空を見上げて呟く。
不意に、笑みがこぼれる。
「それにしても、キリア殿は酔狂な人ですね」
再び、視線は炎に注がれる。
「私のような者と、行動をともにしても何も得なことなど無いのに」
どこか、しんみりとした口調だった。
そこには、孤立無援のなかで奮闘してきた自分にはじめて出来た協力者に対する感謝の言葉が隠れていた。