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TREASON PRINCESS  作者: KUROKO A
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第一章 始まりの出会い  運命の出会い


ようやく終わりを迎えようとしている。


目の前には、厳しい目付きでこちらを見据える標的が一人。


誰の目にも、この標的が反撃できるほどの体力を残しているようには見えない。


あと一度、剣を振るえば全てが終わる。


その思いのもと、一思いに苦しまないよう水平に剣を構えてその胸に突き立てようとした時だった。


その瞬間、何が起こったのかわからない。


突然、煙を上げて教会の壁が崩れ落ちた。


いや、壁が壊されたと言ったほうが正しいだろう。


それは、砲撃にあったような強い衝撃だった。


続いて、煙の中に背の高い人影があることに気付いた。


鍛え抜かれた見事な体つきに、鋭い目付きは数々の死線を潜り抜けてきた者が放つ独特の強い光があった。


「貴様、何者だ!」


襲撃者の一人が声を荒げて叫ぶ。


しかし、その男の手に握られた得物を見るや否や表情が一変した。


「その巨大な剣……まさかお前はギルドの……」


それが、その男が口にした最後の言葉となる。


振り抜かれた巨剣は、暴風を巻き起こしながら男を斬り払う。


驚愕と戦慄が辺りを支配する。


「なぜだ! どうやって貴女があのギルドの戦士を雇うことが出来たのだ」


悲鳴にも似た叫びが辺りに木霊す。


「ハァハァ……ギル……ド?」


どこかで聴いたことがある名前だった。


しかし、女が思い出すよりも早く、男はその剣を振るう。


次々と驚愕の表情を貼り付けたまま、地面に倒れこむ襲撃者。


戦士としての桁が違った。


男にとって、恐怖に囚われた騎士の剣など恐れるに足りない。


最後の男が倒れるのを確認してから振り返る。


そこには、鋭い目付きの女性がこちらを睨んでいた。


「どういうつもりです?」


助力に対する感謝の言葉でも、突然の協力者を与えてくれた神に対する感謝の祈りでもなく、女性の第一声は厳しく突き刺さるものだった。


青い瞳には強い光が灯る。


意外な反応に困惑する男。


「……すみません。まずは、ご助勢に感謝すべきでした」


苦い顔つきになり、頭を下げる。


「この者たちは一体?」


血糊をふき取りながら尋ねる男。


教会の壁にもたれながら、呼吸を整えて女性は答える。


「私の命を狙う者……それ以上の事は知らないほうがいいです」


それは、忠告というよりは警告に近い口調だった。


これ以上を知れば、命の保障は無いと。


「しかし、あの者たちは野盗の類には見えない。あの剣筋は、訓練された騎士のものだ。そのような者が、おのれの名誉をかなぐり捨てて多勢で一人の女性を襲うのか?」


騎士たるもの、戦いにおいては正々堂々と、一度戦場に掛け出れば主君のために。


決して、おのれの剣を侮辱せず、主君の恥となる行動は慎む。


それは、卑劣な行動が主君の名誉に傷をつけるからだ。


大体、騎士として恥じるような行動を取る者を、どの領主が雇い入れようか。


それは、古今の法のようなもの。


「かなぐり捨ててでも、私に生きていてもらっては困るのでしょう」


どこか、醒めたような口調で答える。


そこには、感情というものが存在しない。


ただ、事実だけを述べるように淡々としていた。


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