第一章 始まりの出会い 運命の出会い
一体、どれほどの時間が過ぎたのか……。
生きているのか、それとも死んでいるのかも分からない。
こんな事を考えられると言う事は、おそらくは前者なのだろうが。
ただ、分かることは一つだけ。
かすかに、額に温かいものを感じる。
その温かいものが、何かは分からない。
ただ、悪くはない。
むしろ、心地よい気持ちになる。
思い起こせば、あの日から常に突きつけられる殺意の渦の中をひたすら走り抜けてきた。
ここまで、安らかな気分になるのはいつ以来だろう。
そんな事を思いながら、重たい瞼をゆっくりと開いた。
まだ霞んでいる視界に、人影がかすかに映る。
黄金色の髪に、宝石のような青い瞳を持つ美しい顔立ちの人が覗き込んでいる。
その美しい顔に見覚えは無いが、不思議と身を任せていられる。
ふと、男は思った。
この美しい人は、神々の世界に住まう女神なのか……と。
……どうやら、俺は死んだようだな
苦い笑みを浮かべずにはいられない。
「あなたは……」
男は、かすれる声を振り絞りながら言葉を捜す。
それを、遮るように薄紅色の唇が言葉を紡ぎ始めた。
「まだ、毒が完全には消えていない。もうしばらく眠りなさい」
額に感じた温もりが、ゆっくりと目元に移った。
その温もりで男は悟った。
……生きているんだ
再び、海底深くに引きずり込まれるような強い眠気に襲われた。