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序章 王国の危機
今日も国王は目を覚まさない。
いつ終わるとも知れない深い眠りの中、王都は幾度も季節が駆け抜ける。
ユーリ・ソル・ドゥークス・セフィールが王座に就いて、早二年の月日が流れた。
父であり、先代国王アルゼンの急死により、若干二十一歳の若さでローレンス神殿の洗礼を受け戴冠式を終えたユーリ国王は、その聡明さと武勇により父王以上の名君となりうるだろうと国民からの高い支持をうけていた。
若き王も、その期待に答えるべく熱心に政務に取り組んでいた。
しかし、玉座に就いて半年が過ぎた頃から、徐々に体調の優れない日々が多くなってきた。
初めは、若き王ゆえに激務からくる心労だろうと、その兆候を臣下たちも軽視していた。
しばらく、政務から離れて静養すれば体調も回復するだろうと。
そして、その日を迎えてしまったのだ。