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ちゃぶ台の向こう側 (改訂版)  作者: 仙道 神明


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18/20

番外編①「父ちゃん(鉄夫)」

朝五時。まだ薄暗い台所に、新聞をめくる音だけが響く。


「……今日もいい天気だ」


矢崎鉄夫、職人気質の大工で、早起きは三十年以上の習慣だ。

一口、ぬるくなった緑茶をすすって、ゆっくりと新聞をたたむ。


炊き立てのごはん、焼き鮭、具だくさんの味噌汁。

特別なメニューじゃないが、そんな朝食にこそ母ちゃんの心がこもっている。

誰よりも早くちゃぶ台に着き、誰よりも早く食べ終えるのが、鉄夫の「けじめ」だった。


自転車に道具箱を括りつけて出発。

向かったのは、町はずれの古い木造家屋。

今は空き家になっているが、「いつか住むから直しておきたい」と若夫婦から依頼された家だった。


柱の傾きを確認し、軒先の修繕に取りかかる。

ときどき鼻歌まじりにカンナをかけ、黙々と釘を打つ。


「最近の連中は“DIY”だなんて横文字使いやがるがな……」


鉄夫は木くずを払ってつぶやいた。


正午、弁当の時間。ちゃぶ台ではないが、道端の石に腰掛けて、和代が包んでくれたおにぎりを頬張る。


梅干し、昆布、鮭。

どれも手がかかっているわけではないが、噛みしめるほどに懐かしさが広がる。


午後、陽が傾くころには作業も一段落。

汗をぬぐいながら帰り支度をする鉄夫。


「……俺も、だいぶ年取ったな」


そんな独り言を風がさらっていった。


帰宅は夕方。いつものように靴を脱ぎ、玄関に手をかけると、見慣れない靴がある。


(ん?客か……)


「ただいま」


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