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ちゃぶ台の向こう側 (改訂版)  作者: 仙道 神明


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16/20

十五品目 特製カレー

澪が退院して数日後――


まだ少し足を引きずる澪が、両親とともに矢崎家の玄関をくぐった。


昭一が一番に駆け寄ってくる。


「おお、澪……!」


「よかった、本当に……」


母ちゃんがそっと澪の肩に触れた。


すると、澪の両親が頭を下げた。


「娘が、何度もご馳走になったようで……ありがとうございます」

「ええ、それに……この家で、澪は本当に明るくなって。笑顔を取り戻してたんです」


父親の言葉に、母親も頷く。


「事故のとき、昭一くんが、体を張って娘を庇ってくれたって……」


「そ、そんなの当然ですって……」


昭一は照れくさそうに頭をかくが、頬はうっすら赤い。


「今日はね、特製のカレー作って待ってたから。お腹すいてるでしょ?」


矢崎家の台所から、あの懐かしいスパイスの香りが漂ってくる。


ちゃぶ台の上に、揚げたての唐揚げと湯気の立つカレー皿が並ぶ。

みんなで並んで座ると、自然と笑いがこぼれた。


昭一は澪の両親に向かって、縁側の横の棚を指差す。


「これ、ぜんぶ父ちゃんコレクションなんすよ。ラジカセに、インベーダーゲームに、あと……これ見てください!“足踏みミシン”!」


和夫も負けじと「こっちは俺のソフビ!」と、得意げに並べる。

すると、良子がスマホを取り出して「ちょっと並んで並んで!写真撮ろうよ!」と声を上げる。


ちゃぶ台の前にぎゅっと

座る6人。


昭一がやや緊張しながらも

「タイマー、セットできた……よしっ」


カシャッ、とシャッター音が鳴った。


「……不思議ですね」


澪の母親がぽつりとつぶやく。


「何がですか?」と、鉄夫が聞き返すと――


「まるで……昔から、こうやって集まってた気がするんです」


すると、鉄夫が湯呑を手に、どこか遠くを見るように言った。


「ちゃぶ台を囲むってのは、家族だけのもんじゃねえ。血のつながりとか、そういうの関係なくてさ……一緒に飯食って、同じ空気吸って、心配して、笑って……」


少し照れくさそうに目を伏せたあと、こう締めくくった。


「それで十分。――もう、家族みたいなもんだろ? 家族って、そういうもんだ」


「コーヒー淹れたよ!インスタントだけどね」


母ちゃんが手に持って現れたのは、湯呑み。

しかも、昭和の観光地土産っぽい、ちょっと色あせた絵柄付きのものばかり。


澪の両親、目を疑う。

(……湯呑みにコーヒー?……)


鉄夫が目を細め、


「この湯呑み、昔、箱根で買ったやつだ!

俺が小学生のとき!懐かしいなぁ」


「まだ割れずに残ってるのがすごいよな」


昭一がコーヒーを啜りながら、にやりと笑う。


「うん……おいしい」


澪の母が一口飲んで、少し驚いたような顔をする。


「なんだろう、妙に落ち着く味ね」


「それが“昭和味”ってやつよ」


母ちゃんが誇らしげに胸を張る。


澪の父も静かに湯呑みを手に取り、しばし眺めたあと、


「こういう時間も……いいもんだな」


とつぶやいた。


良子がすかさずスマホでちゃぶ台を囲むみんなの様子をパシャリ。


和夫はというと、最後の唐揚げをまだもぐもぐしていた。


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