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ちゃぶ台の向こう側 (改訂版)  作者: 仙道 神明


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13/20

十二品目 焼きそば

夕暮れの公園。ブランコの鎖が、ぎぃ、と風に鳴っていた。


和夫はベンチに座り、ウルトラマンのカードを手の中でじっと見つめている。


友達に言われた言葉が頭から離れなかった。


「昭和っぽいってさ。古くさくてダサいって」


笑いながら言われた一言が、やけに胸に刺さった。

みんながスマホの話や新しい動画の話で盛り上がる中、自分だけ“古いもの”を好きでいることが、急に恥ずかしくなったのだ。


そこへ、スーパーの袋を提げた昭一と澪が通りかかった。


「……あれ? 和夫?」

「どうしたの?」


声をかけられても、和夫は目をそらす。


「……別に。なんでもない」


けれど、昭一はその様子を見逃さなかった。

袋を地面に置き、ベンチの隣に腰を下ろす。



「そうか……。昔な、俺もよく言われた。“古くさい”って。自転車が変とか、家がタイムスリップしてるとか」


和夫がちらりと顔を上げる。


昭一は空を見上げながら、笑って続けた。


「でもさ、古いもんってのは、誰かが大事にしてきた証拠なんだよ。新しいだけがカッコいいわけじゃねえ」


その言葉に、澪がそっとうなずいた。


「私もそう思う。古いって、言いかえれば“変わらない”ってこと。変わらないものがあるって、すごく安心するよ」


公園の風がやわらかく吹いた。

ベンチの上のカードがふわりと揺れて、ウルトラマンの笑顔が夕陽に光る。


「……俺、やっぱ好きなんだ。昭和のヒーロー」


「いいじゃねえか。ヒーローはな、時代が変わってもヒーローだ」


昭一の言葉に、和夫の顔がようやくほころんだ。



三人で歩く帰り道。

風鈴の音がどこかの家から聞こえてくる。


家へ帰ると、台所から母ちゃんの声が響いた。


「おかえり! 今日は焼きそばだよー!」


どこか元気のない和夫に良子は気づく。


「どうしたん?あんた大好きでしょ、焼きそば」


「いや~、俺も経験あるんだけどさ……」


昭一が代わって説明した。


事情を聞いた父ちゃんが、新聞を畳みながらぼそりとつぶやく。


「“古くさい”ってのはな、“変わらねぇ”ってことだ。変わらねぇもんがある家は、強いんだ」


良子も和夫の頭を撫でながら言った。


「あんたね~、他の家と違うからいいんじゃない。なかなか無いよ、こんな特殊な家。SNSでもバズりまくるから私は好き」


湯気の向こうで、家族の笑い声が広がる。

和夫はちゃぶ台の前に座り、照れくさそうに言った。


「……じゃあ俺、“昭和ヒーロー”でいいや」


その言葉に、みんなが笑った。


ちゃぶ台の向こう側――そこには、確かに“ヒーローの心”があった。


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