プロローグ
昭和の記憶は、いつの間にか遠い昔のものになった。
ちゃぶ台は折りたたまれ、家族はそれぞれの部屋へ。
テレビの音が食卓を満たし、手を合わせる声はいつしか消えた。
それでも、この家では――
まだ時間が止まったままだ。
ちゃぶ台の上に並ぶ湯気立つ味噌汁。
湯呑みで飲むコーヒー。
ブラウン管テレビのざらついた映像。
そして、昔ながらのあたたかい笑い声が響く家族の声。
矢崎昭一は、そんな「昭和のままの家」に暮らしている。
古くて、面倒で、でもどこか落ち着く。
彼にとっては、それが“普通の日常”だった。
ある日、ひとりの少女がその家を訪れる。
名前は、間宮澪。
家庭のぬくもりを忘れ、心の居場所を失くした少女。
ちゃぶ台を囲む家族の輪の中で、
彼女の心は少しずつ、やわらかく溶けていく。
笑い声、叱る声、湯気の匂い。
そのすべてが、澪にとって
“知らなかった優しさ”だった。
ちゃぶ台を囲むたびに、誰かの心が前を向く。
それは、昭一の家に宿る――
目には見えない力。
時代が変わっても、人のぬくもりだけは変わらない。
ちゃぶ台の向こう側には、今日も小さな奇跡が生まれている。
【登場人物紹介】
◉矢崎 昭一
昭和の価値観をそのまま生きる高校生。
ちゃぶ台・黒電話・ラジカセが当たり前の暮らしをしているが、本人はごく普通のつもり。
明るくてちょっと不器用な優しさの持ち主。
◉間宮 澪
家庭が崩壊寸前で、心を閉ざしがちな少女。
とあるきっかけで昭一の家を訪れ、ちゃぶ台を囲んだ日から少しずつ心を開き始める。
無口だが、感受性はとても豊か。
◉矢崎 鉄男
昭和気質の頑固親父、大工。職人気質で口数は少ないが、家族を何より大切にしている。
ぶっきらぼうな中に優しさがあり、ときどき胸に響くひと言を残す。
◉矢崎 和代
家庭の中心で、ちゃぶ台を囲む家族をそっと支える母。穏やかで包み込むような優しさを持つ一方、家族のためには誰よりも強くなる。
母ちゃんの作るごはんには、いつも“愛情”と“昭和のぬくもり”が詰まっている。
◉矢崎 良子
中学生。SNSや流行が大好きな今どき女子。
昭和な家族に呆れながらも、心の底ではその温かさを誰より理解している。軽やかで素直な言葉が、ちゃぶ台に新しい風を運ぶ。
◉矢崎 和夫
ちゃぶ台生活を全力で楽しんでいるヒーロー好き男子。昭和の仮面ライダーとウルトラマンが大好き。
【お品書き】
一、 あんぱん
ニ、 肉じゃが
三、 カレー
四、 シチュー
五、 コンビニ弁当
六、 鍋
七、 コロッケ
八、 大工の鉄夫
九、 冷やし中華
十、 矢崎家のカレー
十一、 ラムネ
十二、 焼きそば
十三、 オムライス
十四、 ナポリタン
十五、 特製カレー
十六、 あんぱん




