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36 下村竜姫との出会い

下村竜姫。東方学園高等部1ーS所属。高校入学後、一度も登校していないため、長い黒髪によって顔立ちがわからない写真のみ。何度か家に訪問したが、母親や妹の応対のみで顔を合わせること叶わず。


また、よく出される【凛とした星空】のケーキが美味しかったので、偶に買いに行くようになった。


なのから渡された資料を要約すると、こんなところだろう。


…なにか余計なことがなかったか?って?いやいや、お菓子のことはむしろ一番大切な情報…ふむ…凄く興味深い…あっ…でもここ凛ちゃんのお店だ…てことは、新しいお店開拓ならず……しょんぼり。


…まあ、それはそれとして、この世界ではある程度女性のことを知らないで外に出るのは危ないからと、女性の危険性をしっかりと教育されてほぼ全員が理解した頃…つまり男性は高校からしか学校に入ることができないらしいので、入学以来不登校の、おそらく一度も学校に行ったことがないはずである竜姫はこのことから外に出るのが怖い、もしくは女性が怖いというのが理由で学園に来ないのだろうとのこと。


鼎は正直、()()()()()()()()()、教育された記憶がないので、その再教育を受けないといけないのではと思いもしたが、「忘れちゃった。」ということにした鼎がなのにそう尋ねたところ、鼎にそのままで問題ないと力説するのでこの場は収めた。


竜姫の学園に来ない理由を推定する限り、女性であるなのがあまり高い頻度で押しかけるわけにもいかず、このままではこれ以上成果が生まれそうにもないことから、どうしようかと悩んでいたのだという。


そこで鼎が生徒会役員になったことで、情報に対する権限が拡充されて、学園の側から生徒の情報を少しばかり開示できるようになり、鼎に同じ男の子として頼ってきたということらしい。


鼎自身は結構大人な考え方もできるので、学校に行かないことも選択肢の一つで、もしそれでなにかしら不利になることがあっても人生のスパイスの一つだと思わないでもないのだが、なのと顔を合わせていないことからも、もし女性の言葉には耳を貸さないというタイプの人間なのだとしたら、一度くらいは竜姫もそういう言葉を耳にする機会はあってもいいのではないかとも思った。


なのからの頼みを聞き入れることにした鼎は、とりあえず美奈たちにはあずさに事の詳細を連絡してもらって付き合わせては悪いから先に帰ってもらい、迎えに金森姉妹を寄こしてもらってから、教えてもらった住所に連れて行ってもらう。


学園から車で十五分ほど。


辿り着いたのは、竜姫の他に男性も住んでいるらしい、セキュリティのしっかりした、コンシェルジュつきの大きなマンションだった。


コンシェルジュの女性がおそらく竜姫の母か妹に連絡すると、護衛役の2人は断られ、鼎のみの入室が許可されることになり、そこで2人と一悶着あったのだが、後で埋め合わせをすると言うと妹の方の音夢が姉の初音を抑え込み、どうにか送り出してくれた。


音夢がいつものようなマイペースで「まくら♪まくら♪」と言っていたので、お礼に枕でも買って貰おうと思っているのだろう。今度、低反発とか調べてみようと思う。


コンシェルジュに指示された通り、エレベーターに乗り、指定された階に降りて少し歩くと部屋の前に着いた。


インターホンを押すと、すぐさまチェーンロックが解かれる音がして、それとともに若い女性の声が聴こえてくる。


「はい、ただいま。少々お待ち下さいませ。」


そうして出てきたのは、鼎と同年代の綺麗な子だった。


その容姿は綺麗な長い黒髪に大きな紫がかった瞳、顔立ちは整っており、どことなく可憐で、そして背も鼎より低く、華奢だからか、それとも髪飾りが桜を模したものだからか、儚い印象をも受ける。


その子は鼎を見るなり、ハッと驚いたように口元に手を当てると、まるで桜が咲いたかのように微笑み、鼎を家の中へ入ることを勧めた。


「本当にカナ様です。嬉しいですわ。どうぞ中へ。」


お邪魔しますと鼎は中に入り、しっかりと靴を並べて、その子の後をついていくと、()()()()()()()()()一応確認として、名前を聞いてみることにした。


「君は?」


「申し遅れました。竜姫兄さんの()の竜美です。」


丁寧にお辞儀をした、竜姫の妹を名乗るその子。


「?」


鼎はそれに思わず首を傾げると、口にした。


「え?だって君、男の子でしょ?」


「っ!?……。」


てっきり竜姫本人、もしくは報告が間違っていて妹ではなく弟だったのだと思っていた鼎に、彼は目を見開き、無言で鼎を見つめたのだが、すぐにクスリと笑うと、色づいた舌をおどけたように軽く出した。


「てへ♪バレてしまいましたね。()()()カナ様です。」


「えっと…それじゃあ…。」


「ええ、カナ様の言う通り、私が下村竜姫です。どうぞお見知りおきくださいませ。」


やっぱりと思う鼎。しかし、こんなことをした理由が理解できなかったので、聞いてみることにした。


「…どうしてこんなことを?」


「いつもは相手に男だと教えていいのか判断するため…防犯目的ですが、今回のはちょっとした悪戯です。うふふふ。」


「防犯目的?」と鼎が別に質問したわけではなく、なんとなく馴染みのないような様子でそう言葉にすると、ふむと顎に手を当てる竜姫。


「おや?そちらに食いつかれましたか…ということは、どうやらカナ様は教育は受けておらず、ヒドい目にも遭っていない…と。()()()へ来て、日も浅い様子ですね。…なるほどわかりました。それでは先輩として、いろはを……と…してしまいますと、このカナ様の良さが失われてしまうかもしれませんか…う〜ん…悩ましいです…。」


とその小さな唇に人差し指を当てていた竜姫は、やっぱりやめましたと微笑うと鼎の手を取り、鼎を可愛いらしい猫の肉球がペタペタと押されたドアプレートに【たつき】と丸文字で書かれた自分の部屋に連れ込む。


ピンクのベッドに鼎を座らせ、スカートを翻らせるようにクルリと回ると、鼎に自己紹介をし始めた。


「まず一言自己紹介を…コホン、私は下村竜姫。15歳。趣味は可愛いもの集めや、お化粧。可愛い服を着たりするのも大好きです。もちろん甘いものも…だって()()()()()()()()女の子ですから♪」


それからもどこかお転婆なところもある令嬢のような仕草で自己紹介を続けていき、そろそろ終わりかという雰囲気になると、竜姫は最後にとんでもないことを言い始めた。


「そして最後に…私もカナ様と同じ転生者です。」



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