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19 鼎の初出演ドラマを見て

最初の撮影から二週間ほと経ち、先日で鼎が出るところは6話まで取り終えた。


なぜこんなにも早くそんなにも進んだのかというと、ショートドラマのため複数撮りで、なおかつ鼎が出るのは全てスタジオ内で撮れるものであったというのが大きい。


今週の撮影は初の外での撮影もしたいというので、次回で全8話撮り終わりということにはならないが、それでもなんとなく峠は越えたという少しの余裕が生まれるくらいには、肩の荷が下りたという感覚があった。


それというのも、優しい先輩とスタッフの方たちのおかげなので、最近の悩みはなにかお礼の品でも贈りたいと暇があれば考えている。


()()()関係者全員が女性の方なので、あずさたちに助言を貰おうと、リビングに顔を出すと、いつものように三人がソファに腰掛け、お酒を片手にテレビの前で……あれ?珍しくお酒がない……あとなんか真剣にテレビを見てる?もしかして何かあったのかな?


そう思い、鼎もテレビの方に向かうと、シンプルでも可愛いらしいピンクのパジャマを着た忍が鼎の気配に気がついたのか、こちらを向いた。


「鼎、どうかしたのか?」


「三人ともお酒も飲まずに何をしてるんですか?」


「ん?ああ…これはだな…っと言うか、私はそんなに飲んべえじゃないぞ!二、三日に一回だ!毎日飲んでいるのは、主だけだ!」


「私だって違うよ!鼎くん、そんなうわばみみたいに言わないで!私も忍さんと同じくらいだからね!飲む日数!毎日飲んでるのはあずさ様だけだよ!」


「私だってっ!!……まあ、飲んでるわね……毎日ガブガブガブガブと前世は蛇なんじゃないかってくらい。ワインに日本酒、ウォッカ、ウイスキー…ビールは苦手だけど…休肝日作らないといけないかもしれないわね……。」


最初こそ同調しそうだったものの、尻すぼみに健康のことを考え始め、声音が小さくなっていくあずさに、忍はやれやれと手のひらを上に向けた。


「…はあ…やっとわかってくれましたか…私が言っても『別に誰に迷惑掛けてるわけでもないんだからいいでしょ。ゴクゴクプハー、美味いっ!この一杯のために生きてる〜!』なんてババ臭いこと言いながら、毎晩毎晩やっていたというのに、鼎がちょっと言うと言うことを聞くんですね。」


そんなことを言われたあずさはキャミソールにショートパンツというラフなスタイルで膝を抱えて口を尖らせた。


「ババ臭いですって!!……まあそれはともかく、仕方がないじゃない……鼎くんが心配してくれるのが嬉しいんだもの…忍だって鼎くんがそうしてくれたら嬉しいでしょ?」


「…まあ…私もやめますね。」


「わ、私もやめちゃうと思います!」


でしょ〜、ですよね~と三人が別に鼎が酒をやめるように提案したわけでもないのにそう納得していると、不意に知り合いの声が聞こえ始め、テレビ画面に目を向けると俳優の先輩であるヨルがオフィスにいる姿が見えた。


「あれ?これって……。」


「ああ…そういえば、何をしているのかだったな。今日は鼎が出るドラマ…「失礼しました!」…の初放送で…っと、あれ?」


鼎は忍の言葉を聞き終える前に離脱し、部屋に入ると、電気をつけることなく即座に布団を被ってしまった。


冗談ではない!


なぜ同居人たちの前で自分が出たドラマなど見なければならないというのか!


公開処刑ではないか!


鼎は素人なので、自分が出たドラマを見て爆笑する怪獣のようにはなり得ない。


そんなふうにブルブルと震えていると、いつの間にやら布団の暖かさに身を任せて夢の世界へと旅立ったのだった。



「なんだったんだ?鼎のやつ?」


忍がそう疑問符を浮かべていると、あずさは可愛いらしく微笑んだ。


「あらあら、鼎くんったら、恥ずかしがり屋さんね♪可愛いじゃない。自分が出るのを見るのが嫌なんて♪」


すると、忍はうへぇという表情をして、主であるあずさに苦言を呈する。


「主、邪悪な笑いをするのはやめてください。せっかくの鼎の愛らしさが損なわれますから。」


「どこが邪悪なのよ!可愛い〜く笑っただけしゃない!ねえ、美月!」


「えっ………………あっ、はい。」


えっ…なにそれ、一番傷つくやつ……。


もしかして私、笑顔下手?いつも悪いこと考えてるから?


実は鼎くんにも怖いって思われてたり?


なんかわからないけど、すっごくへこむ。


そんなふうにあずさがショートパンツからピンクの下着をチラ見せするという体育座りをしていると、「いい加減にしないと、鼎が出ますよ。」という忍の言葉にすぐさま我に返った。


「そ、そうだったわね!今は鼎くんの初舞台だものね!」


そうあずさは体育座りを解くと、テレビ画面に集中し始めた。


なにせこのドラマ、静江が社長としての全権力を駆使して、引き抜かれた相手のいる月曜九時という時間に、宣戦布告に応えたように、不利なはずのショートドラマにも関わらず捩じ込んだ大作である。


「これがもしダメなら、喜んでお前たちに社長の座を譲ろうじゃない!」と、大物プロデューサーたちに宣言し、それに対しプロデューサーたちも上等だとSNSに散々こき下ろした言葉を載せたらしいので、もしかしたらテレビ東堂内の勢力図すら書き換わるかもしれないということなので、東院としての立場としてもやはり見なければならないものでもある。


……なんて、すぐに考えちゃうから、私はダメなんでしょうけど……。


なんて思っていると、大きくてもおっぱいが好きらしい鼎を無意識に誘惑していた、ブラもつけずにシースルーのネグリジェというエロエロな格好をした美月がつばを飲み込んだ。


「ゴクリ…そろそろですね。」


どうやら彼女はこの原作のファンらしく、展開が読めているのだろう。


今度こそ、あずさは集中力をMAXに持っていくことにした。


ガチャリ。テレビの中でドアが開く音が聞こえると、ドタドタという音が聞こえ始めた。


すると、満面の笑みの鼎が出てきて、こう言った。


『お姉ちゃん、おかえり。ご飯にする?お風呂にする?それとも……僕?』



鼎がニコニコ顔でそう言った瞬間、外の一切の物音すらすることなく、時が止まった。



「「「…………。」」」



「………えっ?」とようやくあずさが声を上げると、ブシャー!という水音が左隣から鳴り、カーペットに吸いきれないほどの水たまりを作り出した。


慌てて右隣を見ると、忍が恍惚とした表情を浮かべながら、「あんあんっ……んっ!!」と聞いたことがないほど高い声を上げてビクンビクンしており、股のあたりはビショビショと明らかに平静ではなかった。


あずさも己の中から湧き上がるそれがやってきて…。


「んっ!か、鼎く〜〜んっ!!」


ビクビク。


そして、あずさもまたソファを濡らしてしまった。


全員快感の名残りが残りながらも、こんな凄いものはもう見れないだろうと、録画したことも忘れ、もじもじしながら、画面に集中していると、さらなる爆弾が投下された。


『スンスン、お姉ちゃんの匂いだ〜。いい匂いで落ち着く〜。』


それを聞いた瞬間、もうダメだと思いテレビを消すと、あずさだけではなく、忍に美月まで立ち上がると、覚悟を決めた顔で自室へと駆け出した。


……リビングの惨状はそのままに……。



「ん〜〜よく寝た〜〜っ!……ふう。」


目覚ましを見ると、AM7:00


夜早く寝たからか、どうやら早く起きすぎてしまったらしい。


なんとなくお腹が空いていたので、着替えると、顔を洗い、歯を磨いて、何か簡単なものでも作って食べようと、キッチンに向かうと、そこに行くには通らなければならないリビングに入った途端、鼎はなぜかわからないが、とてもドキドキした。


頬が赤くなり、もしかしたら呼吸も少し熱っぽいかもしれない。


ほのかに漂う甘酸っぱい香りに誘われるようにソファに近づくと、どうやらそこから匂って来るらしい。


匂いは三種類それぞれ違って、少し生臭い変な匂いもした。


少し気になったので、花を近づけてクンクンとそれぞれの匂いを嗅いでいた時、カチャっとドアの音が鳴り、叫ぶような声が鼎の耳に届いた。


「な、なにしてるのっ!鼎くん!!」


あずさのその声に何事かあったのかとに忍に美月までやってくると、鼎を見て目を丸くした。


「えっ?何って…なんかいい匂いがしたので。」


カーッと顔を真っ赤にする三人。


慌てて部屋を出ていくと、各々タオルを持ってきて、ソファの辺りを拭き始める三人に鼎は呑気に言う。


「あっ、やっぱりお酒こぼしちゃったんですね…。」


「「「……えっ?」」」


どういうことと疑問符を浮かべる三人に、鼎はそんなに酔っていたのかと呆れつつ、少し怒ったように腰に手を当て人差し指を立てた。生乾きの匂いがするほどなんてどんだけこぼしたのかと…よく見るとカーペットもなんか湿ってるし…。


「ちゃんとこぼしたら、拭かなくちゃダメだからですよ!これに懲りたら少しお酒は控えて……あっ、そういえば三人とも今日は用があるって言ってましたね。これは僕がやっておくので、早く準備してきて。ほらここは僕に任せてくれていいからね!」


そう鼎が三人からタオルを奪うと、水に濡らしてトントントントンし始めた。


それにこれ以上ないくらい顔を真っ赤にした三人は、穴が空くのではないかと思うほど鼎を見つめていたと思ったら、鼎が顔を上げると、「確か8時には出なきゃよね〜。」、「はい!主!」とか、「あっ。今日はタイムセールだった!」と言いながら部屋を出ていった。


その日からなぜか、鼎は脱いだばかりのドレスやスーツ、メイド服なんかを手渡され、なんだろうと首を傾げる日々を送ることになるのだが、これはどうでもいいことだろう。


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