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18 親友?

下総美月はイラついていた。


プンスカプン!


「私がなんでこんなことしなくちゃいけないの!もう!」


なんでこんなにもイラ立っているのかというと、原因は先日の一件である。


先日、鼎の歓迎会(自分は度外視)のため、あずさはケーキをどこで買ってくるか迷っていたので、自分の友人がパティシエなので、彼女に頼むことを提案したのだが、そのケーキが問題だった。


なにせ片方は美月と思われる水色の髪の女の子と銀髪の男の子がキスしているという素晴らしい出来で美月自身()()彼女への称賛の嵐だったのだが、もう片方はあろうことか、【趣味はお菓子作りです。鼎くん、私と結婚してください。BY星空凛】などとチョコプレートに書くというメスのアピールをしてきたのだ。


当然、あずさと忍から怒られ、金森姉妹からも白い目で見られた。


鼎は楽しそうに微笑っていたのが幸いだったが、それでも恥をかかされたのには違いない。


それにも関わらず、それにも関わらずだ!


なにが悲しくてお礼をしに彼女のもとへと出向かなくてはならないというのか……。


【急だな…仕方がない。()()の頼みだ。急ピッチで仕上げてやるから、条件としてそいつの写真を頼む。】


まあ頑張ってくれるみたいだし、それくらいなら、たぶん鼎くんならいいって言うだろうし…と安請け合いして、実際にそれを手に入れたのだが、やるせない。


一応鼎と美月とのツーショットも持ってきていたので、嫌がらせとしてそれでも差し出そうかと溜飲を下げるようなことを考えていたら、いつの間にか見覚えのある建物の前に立っていた。


その建物は洋風でピンクを基調としたファンシーな外観をしており、美月自身可愛いと、自慢げな凛を称賛したものだが、今は気分的に少女趣味が過ぎるのではないかと毒づきたくなる。


植え込みのところの立て看板には【お菓子工場 凛とした星空】と書かれており、やはりここが今日の目的地だった。


美月はため息を吐くと、営業中なのかも確認せずにいやいや中に入る。


チャリンチャリンというベルの音が鳴ると、店の奥でなにやら物音がし、「少し待っていてくれ。」という普段より少しトーンの高い声が聞こえたと思ったら、自分と同じくらい背の低い、後ろに綺麗な長い黒髪を流した、太い眉、意志の強さを感じさせるキリッとした目の美少女が出てきた。


「いらっしゃ……なんだ、美月か…。」


彼女は美月を見た途端、割烹着姿で常にパッツンパッツンな胸元をさらに強調させるように腕を組んだ。


「なんだとはご挨拶じゃないかな?」


「ふむ、確かにそうか。まあいい。せっかく来てくれたんだ茶くらいは用意しようじゃないか、適当な席に座るといい。」


そう凛は席の方を指差すと、自分はお茶の用意をしに後ろへと下がって行ってしまう。


美月としてはさっさと帰って、家事をしつつ、鼎のトレーニングをサポートしたいのだが、凛の素っ気ない口調ながらも、嬉しそうな笑顔を見ていると、そんな言葉を言うのは偲びなく、大人しく適当なところに腰を下ろした。


「ふふふっ、待たせたな。今日はイチゴのタルトだぞ。最近、ベリーに凝っていてな。これは切った苺だけじゃなく、木苺なんかをすり潰したものを……。」


楽しそうにお菓子のことを話す凛に美月は思わず目を細める。高校の頃もこうやって、お菓子の話を始めては、本当に楽しそうにキリッとした目を子どものようにキラキラさせて……っと、おっと…今、私は怒っていたのだった。アイムアングリー。


「こうするとまた違った味が出ていいのだ、わかったか?」


「わかった。わかったから、今日来たわけを話させて。」


美月の素っ気ない態度に凛は拗ねたように口をとがらせると、お茶とタルトを美月と自分の前に置いて、対面へと座った。


「なんだ…せっかく久々にゆっくり話せると思ったのに…つまらないじゃないか……して、なんの用で来たのか?」


マイペースな凛に圧されて、少しばかり弱まっていたものの、美月は溜まっていた怒りを放出した。


「…用もなにもあったもんじゃないよ!!なんで!ねぇ!なんであんなことしたの!」


「なんでとは?」


怒りを解き放った美月だったが、どうやら凛はなんのことかわからないらしいので、よりイラつきつつも凛に怒りを受け止めさせるため、補足した。


「あああ~もう!ケーキ!この前頼んだケーキのこと!!誰があんな細工してって頼んだの!私頼んでないよね!!」


「ん?……あ、あああ~あれ。あれのことか〜。いいだろう?美月が男と暮らし始めるっていうから、ラブい?感じにしてみたんだ。あれ、結構大変だったんだからな!銀髪ってどうやんの?って、とりあえず銀箔と、2体ともゼリーでのコーティングで事なきを得たが…。」


そうどこか自慢するように話す凛。


それは美月が望んだものではなかった。しかし、美月としてもあれはいいもの…最高のものだったので、怒りは一時的にどこかへ行ってしまう。


「うん、あれは凄かった!見た瞬間、もうありがと〜って、まあ、歓迎会だったから、あずささんたちに見た瞬間に食べられちゃったんだけどね……。」


「そうか…それは残念だったな…まあ、あれと同じやつなら、また作ってやるから、気を落とすな。」


「本当っ!!」


「ああ、もちろん。私と美月の仲じゃないか。」


「ありがとう、凛ちゃん……。」


このままいい話で終わるかに思えた。しかし、美月は、ん?と少し考えると、本来の目的を思い出した。


「……じゃなくて!」


「?」


「?じゃなくて、もう一つのほうよ!あのチョコプレートの!」


「なんだ…そっちか…どうだった?その男の反応は?」


「えっ?……まあ、普通に微笑ってたけど?」


「ふむふむ、微笑ってたか……なら大丈夫そうだな。」


「?なにが?」


わけがわからず、疑問符を浮かべる美月に、凛はお茶を啜りながら、言う。


「いや、美月は偶にとんでもないことをするからな。こんな珍妙なことをしたとしても微笑って許せるくらいの人間じゃなければ、付き合うなんてことはできまい。な〜に、私から()()を任せられるかテストをしたんだ。どうやらいい男を見つけたようだな、美月。」


そう凛は優しく微笑み、「よかったな。」と美月の頭の上に手を乗せた。


瞬間、美月の涙腺が緩み始め、時が経つにつれて、凛の言葉の意味、自分のことを心配してのことだとわかり、涙が溢れ始めた美月はイスから立ち上がると、凛の胸元へと縋りついた。


「り、りんぢゃ〜〜ん。ごめん、ごめんね……私、自分のことばっかりで〜りんちゃんがごんなに心配してくれでのに〜〜うわぁぁぁ〜〜ん。」


それから凛は美月が泣き止むまで、優しく頭を撫で続けていた。


美月が落ち着いて、席に戻ると、お茶を飲んだ。それは緑茶であり、すっかり冷めてはいたが、泣き叫んで喉がカラカラだったからだろう。一気に飲めてとても美味しく感じた。


ケーキに緑茶?と昔はよく疑問に思っていたが、こういうのも悪くないのかもしれない。


「あっ…そうだ…凛ちゃんに頼まれてた写真持ってきたよ。」


そう美月がいうと、凛のほうから先ほどまでの優しい声音が嘘だったかのような歓声が美月の耳に届く。


「おっ!おお〜〜っ!!」


……あれ?やけに反応がいいような?


美月はそう戸惑いつつも、さっきまであんなに自分を気遣ってくれたのだから、まさか気の所為だろうと凛の反応を流す。


「うん、まあいいや。ほらこれ。」


美月は素直に鼎のみが写った写真を渡すと、凛は目をとろんとさせると、ビクビクとし始めた。


「おっ…しゅ、しゅごいの〜!…コホン…あ〜よくやった。よくやってくれた親友よ。」


ん?あれれ?やっぱりおかしい……でもまあ、気のせいだろうし…鼎くんに頼まれたやつも渡さなきゃ…。


「はい、あと鼎くんがケーキ美味しかったから、それを伝えたいってムービー……うん、今送ったよ。」


うんうん、気のせい、気のせいと美月は携帯を慣れた手つきで操作すると、それを送ると、凛は慌てた様子で携帯を取り出すし、物凄い勢いで操作して、祈るような姿勢で再生ボタンを押した。


すると、一瞬にして、動き出した鼎を凝視し、ハァハァと息を荒らげ始める。


「ハァハァハァハァ。」


【えっと、これ撮れてますか?うん、オッケー。それじゃあ……星空凛さん、行きますよ。凛お姉ちゃん!ケーキとっても美味しかったです!僕ね、ケーキ大好きなので、また食べたいです。凛お姉ちゃんのお陰で僕とっても幸せな気持ちになれました。ありがとうございます!】


ビクンビクンと身体を弾けさせ、その途中、あまりの衝撃にブラが壊れたのかバルンバルンと乳を揺らし、床に大きな水たまりを作った凛。


支えを失った大きく膨らんだ乳を揺らし、股からポタポタと液体を垂らしながら、美月の方へと歩いてくると、すっかりとメスとして出来上がった顔でこう言った。


「……美月、私たち()()だよな。な!な!」


その瞳は愛欲に塗れており、その瞳を見た瞬間、そういえばと、美月は思い出していた。凛にはお菓子のほかにもう一つ、凄い執着を見せるものがあったのだと…それは奇しくも美月と同じだったな……と。


「な!な!な!」


美月は鼎がドラマに出ることなんかを話して、それに気を取られているうちに涙を流しながら、店から逃げ出した。


ううう…、凛ちゃん、さっきまでの感動返してよ〜。



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