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3 義兄

 「御義兄様、隣国の使節団が我が国に訪れてから半月近くになりますわ」



 若干半目になりながら、オフィーリアが王太子に問うと困った様な顔になり眉を下げる彼。



「うん、そうだねえ」



 不機嫌そうに柳眉がピクリと上がるオフィーリア。



「いい加減お引取り願えませんの?」



 その言葉に肩を竦める王太子。



「ウ~ン、協議があと半月程掛かりそうなんだよね」


「・・・チッ・・・」


「淑女が舌打ちしない」


「フン。使えない閣僚達と官史達ですわね」


「フフフ。気が付いた?」


「? え?」


「多分アガスティヤの出番だ。今回の条約の見直しは我が国と隣国の国境線の見直しで揉めてるんだよ」


「・・・成る程」


「情報を集めて欲しいんだ」


「御意」



 美しく上品なカーテシーをするオフィーリア。



「後、君にとっては許されないような条件の要望があってね」


「?」


「境界線をそのままにするならアンディを隣国に婿入りさせろっていうんだ。これは我が国としては絶対に呑めない条件だ。しかし何故か中立派が其れを強く推すんだ。国王派は当然反対してる。貴族派は今の所様子見のようだが、今後どう転ぶかは分からない」



 オフィーリアの額に青筋が立ったのに気が付いたのは王太子だけではなく、側にいた側近達も同樣だった。



「何で、国政に関係のない婿取りなどを要求するんですかねぇ? ()()()()()()()()()を?」


「まぁ、多分イケメンだから?」



 オフィーリアの手の中にあった鉄扇が『メシッメシッ!』という悲鳴を上げグニャリと曲がったのを見て、王太子達一行の顔色が若干青ざめる。



「大丈夫だよ、アンディがアガスティヤ公爵家に婿入りすることは変更出来ない盟約だから。其れはあり得ない」


「ええ、確かに王家の直系を迎え入れるのが我ら公爵家と王家との昔からの盟約ですからね。それは覆せません」


「君達の一族と王家は一心同体だ。其れが気が付けない凡愚な貴族家など我が国には必要無い」



 オフィーリアが見上げると、王太子オースティンは何時もの温和な笑顔を浮かべていたが、その目は冷たい温度を有していることに気がついたのはオフィーリアだけだった。



「では、家令にその様に伝えますわ」


「そうして貰うと助かるよ」



 今度の彼の笑顔は本物だった。



「兄上、リア!」



 廊下の遥か彼方から声が掛かる。



「アンディ?」


「アンディ様、遅いですわ」



 口を尖らせて不満の意を示すオフィーリア。



「ゴメンよ。ホントに、シツコクテ・・・」



 最後の方の言葉が小声になったのは彼なりの配慮だろうが、その場の全員の眉が下がったのは言うまでもない。




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