第八十四集 夢の続き➀
開いていただきありがとうございます。
前回の後書きで、"次は爆破直後のお話"と書きましたが、もう少し先のお話になってしまいました。
すみません。
よろしくお願いします。
「ジーショウ! 腕を上げたな!」
「生死の境を彷徨った事で一皮剥けたでごザル!」
豹猟拳の外の修練場で、リバとジーショウが手合わせをしていた。
相変わらず交流は続いている様だった。
更に修練場には何名かのゴリラの武獣家の姿もあった。
「ふん!」
「ぐおっ!」
そのゴリラと対峙していたターチが、攻撃を受け、吹き飛ばされた。
それをリバが唖然とした顔で見ていた。
「すげー……。
ターチがあんな簡単にぶっ飛ばされるのかよ……」
「隙あり!」
「おっと!」
よそ見をしていたリバにジーショウが鋭い蹴りを放ったが、リバを華麗な身のこなしでそれを躱した。
「うほっ!」
今度はゴリラがリバの動きに目を奪われていた。
蹴りを躱されたジーショウが、リバに向かって抱拳礼をした。
「さすがリバ様でごザル。
あの蹴りが躱されるとは……」
「いやー、ギリギリだったぞ!
ジーショウも、タマ! タマ! 言ってるだけじゃねーみてーだな!」
「当然でごザル!
もう二度とタマちゃんに、恥ずかしい姿は見せられんでごザル!」
ジーショウが腕を組んで、半身に構えるいつものポーズを決める。
リバはそれに構わず遠くの空を見つめた。
「タマのやつ、どうしてっかなー?」
■
「当主! 本日の組手希望者が揃いました!」
「ごわっ!」
若い虎がやって来てそう告げると、当主と呼ばれた一際大きい虎が玉座から立ち上がった。
その虎が道場の中央へと進むと、そこには多種多様な武獣家が鼻息を荒くして待っていた。
「どっからでも掛かって来るでごわす!」
一際大きい虎が声を張り上げると、集団の中から一人の武獣家が飛び出した。
しかし次の瞬間、そのジャガーか豹かの武獣家は吹っ飛び、壁際のトラ達に抱えられていた。
「次でごわす!」
あとはその繰り返しだった。
あっという間に、一際大きい虎と対峙する者は一人もいなくなった。
伸された武獣家達は道場の隅に寝かされていた。
周りで見ていたトラ達が、「お疲れさまです!」と一際大きい虎に頭を下げていた。
そこに華やかな見た目をした、ヒト型の武獣がやって来た。
「ワンフー、お疲れ様ですね」
「おお! 姉上!
獅子爪牙拳から戻られたでごわすか?」
「ええ、第二回フェリダエ武獣研鑽会の開催が決まりましたよ」
「おお! でごわす!」
フーがニコリと笑って言うと、ワンフーは目を輝かせた。
そこへコック帽にエプロン姿のティグが駆け寄ってきた。
両手にはお玉とフライ返しが握られていた。
「ワンフー! いや、当主! 飯だぞ!
あれ、フー様!? おかえりなさい!」
「ただいま帰りました。
ティグ……、また料理ですか……」
「いや~、あれ以来すっかりハマってしまいました。
私の料理を食べた時の、タマちゃんの笑顔が忘れられません!」
ティグがお玉とフライ返しを持ったまま構えた。
フーとワンフーは呆れ顔でそれを見つめた。
「タマと言えば、タマも必ず研鑽会には参加するはずでごわすな。
きっと修行の旅で腕を上げてるでごわす」
「でも、今は何処にいるのでしょうか?
研鑽会のことを知らせてあげたいのですが……」
「なーに、タマ達の事でごわす。
きっと何処かで噂を聞きつけて、ちゃんとやってくるでごわす!」
「そうですね」
フーがそう言って、いつもの様に穏やかに微笑んだ。
■
「ウー大師、ありがとうございます!」
羊の姿をした親子がそう言って、ウー大師に何度もペコペコと頭を下げた。
ウー大師はそれに優しい笑顔で応えた。
「お大事にしてくださいね」
クリクリ頭の武獣家がその親子を出口まで案内していく。
その姿を見て、長身の全身真っ白な武獣家が、隣に座った大師に声をかけた。
「大師、お疲れ様です。
今日の患者さんは今の方々が最後の様です」
「そうですか。
しかしシュエさん、貴女いつまでも我々と一緒に旅をしていてもいいのですか?」
大師に問われたシュエがニコッと笑う。
「勿論です!
私は大師の"持たざる者の為"という理念に激しく共感したのです!
それに私が軟獣力を身につけることは、雪尾拳にとっても有益なことです。
雪尾拳はハクに任せておけば心配いりませんから」
「まぁこの大陸には軟獣力の使い手が少な過ぎますから、貴女が良ければ私は一向に構いませんが」
大師はそう言って立ち上がると、机の上から分厚い書物を手に取った。
「それではお勉強の時間といきましょう」
それを聞いてシュエの顔に冷汗が流れる。
「た、大師、いま診察が終わったばかりですし、少し休憩されてからでも……」
狼狽えるシュエを見て、大師は満面の笑みをみせた。
「ご心配ありがとうございます。
でも私は大丈夫ですから
では、指南書の十一頁を開いてください。
パド君! 早く来なさい!」
「ひゃあ! いま参りますー!」
「うう……、エノさんの話ではウー大師はとても優しい指導者だと……」
シュエが指南書をめくりながら呟く。
「エノ君は嘘を言ってはいません。
無償で己の秘技を他人に伝授するなど、聖人君子と言って良いでしょう」
診察室に戻ってきたパドが、大師の言葉を聞いて何かを閃いたという様な顔になった。
「そーいえば! エノさん達は今頃どうされているのでしょう? ねぇ、大師? アム様やゴウリ様の行方の手掛かりは掴めたのでしょうか?」
「ふむ……。
彼らは今頃……って、パド君、その手には乗りません。
早く座りなさい」
「はい……」
読んでいただきありがとうございます。
エピローグって言うのでしょうか?
そんな感じのお話でした。
次回で終わりとなります。
よろしくお願いします。




