第七十一集 トラは見た目じゃニャい! 頭脳派ワンフー!
「次はそれがしの番でごわす!」
ワンフーがファンに向かって突進する。
「ふん……。
ただの突進とは芸がない」
そう言うとファンは、向かって来るワンフーの胴に再び鼻を巻き付けた。
「ごわっ!」
先程と同じく、捕らえたワンフーを空中に留めるファン。
「なにやってるニャ! ワンフー!
これじゃさっきの二の舞いニャ!」
タマが怒ったように戦場のワンフーに向かって叫ぶ。
そんなタマの肩にライがそっと手を置いた。
「ワンフーさんはああ見えてかなりの戦略家。
同じ失敗は繰り返さないはず。
闘った僕には分かります」
ライの言葉に落ち着きを取り戻すタマ。
ライに顔を見てゆっくりと頷くと、戦場のワンフーへともう一度視線を向けた。
「やはり絞め殺すか……。
ふん!」
ファンが鼻による締付けを更にきつくする。
すると急にワンフーの体が、ズルッとその鼻の輪の中から抜け落ちた。
「なんじゃと!?」
「隙ありでごわす!
虎突猛進」
地上に降り立ったワンフーが青白く輝く。
そしてそのままその巨体を、猛スピードでファンにぶちかました。
「ぬおっ!」
跳ね飛ばされ宙を舞うファン。
「あんなデカブツをふっとばすとは……。
流石ワンフー殿でごザルな」
「いいぞー! ワンフー!」
「ほほー!」
自陣からの声援に両手を上げて応えるワンフー。
よく見るとその体はしっとりと濡れていた。
「油か……。
通りで」
受け身を取り起き上がるファン。
ワンフーの体を見て、合点がいったというようにニヤリと笑う。
それを見たワンフーも負けじと豪快に笑った。
「ごわっはっは!
さっきのおカバさんの様にはいかないでごわすがな。
それがしも、多少は油の分泌量を変えられるでごわす!」
「ふん。
そんなものは大したことではないわ!
鼻鞭嵐打」
ファンが今度は鼻を鞭のように振るい、ワンフーの体に打ち付ける。
息をつく暇もないほどの連打に、ワンフーも防戦一方だった。
「あの太い鼻で何度も……。
ワンフー殿でなければ既に終戦だ……」
「ええ……」
ハクとシュエが、滅多打ちのワンフーを見て息を呑む。
流石のフーも少しだけ表情を曇らせていた。
「ワンフー……」
戦場では、変わらずファンが鼻で猛攻を仕掛けていた。
ワンフーの体には所々血が滲んでいる様だった。
「どうした? ワンフーよ。
このままでは何れ力尽きるぞ!」
それでもワンフーは、両腕で顔を覆い背中を丸めた防御の姿勢を解かなかった。
「ふん! ぬん!」
だがファンも攻め疲れたのか、次第に鞭を振るう速度が落ちてきた。
「ごわっ!」
するとワンフーが、ここぞとばかりに防御を解く。
そして向かってきた鼻を、その脇にがっちりと抱え込んだ。
「!?」
「この鼻は、お主へと続く道標でごわす!
虎滑撃!」
毛を覆う油を利用して、ファンの鼻を抱えたまま滑っていくワンフー。
そのままファンの眉間へと頭突きを食らわせた。
「ぐおっ!」
「決まったー!!」
思わず尻もちをつくファン。
その眉間からは赤い血が一筋流れた。
だがその顔に焦りの表情はなく、むしろ軽く笑っているようにさえ見えた。
「虎皇拳ワンフーか……。
ただの力まかせの単細胞かと思っていたが、中々どうして……。
久々に本気をだすか……」
ファンのその言葉に、敵陣のジャパがピクリと反応し顔を上げる。
ファンは立ち上がると腰を落とし、気合を溜めるように踏ん張った。
その不穏な雰囲気に、僕らも思わず騒然となった。
「なんニャ? 何が起こるのニャ?」
「うん……。
何かヤバそうな感じがする……」
ファンの異様な感じを受け、ワンフーも身構える。
「な、なんでごわす……?」
「パ……、パ……、パオーン!!」
ファンが両手を空に向かって目一杯に伸ばす。
するとその体が金色に光り輝いた。
「眩しいでごわす!」
「うわ!」
それは近くのワンフーは勿論、離れた僕らさえも目を背ける程だった。
光が収まり再び戦場へと目を向けると、そこには先程よりも一回り大きくなったファンが立っていた。
更に目についたのは、異様に大きくなった耳と鼻の横に生えていた牙だった。
「ワンフーよ! 超獣拳の者でもこの姿を見た者は少ない!
光栄に思うがよい!」
ファンの本気の姿に一瞬怯んだ様に見えたワンフーだったが、それを否定するかのように右足をドンと踏み鳴らした。
そしてゆっくりと半身に構え大声で叫んだ。
「光栄に思うでごわす!」
「いや! 素直だな!」
ワンフーの言葉にリバが即座に反応すると、フーが苦笑いで応えた。
「そういう子なんです……」
読んでいただきありがとうございます。
ワンフー対ファン、まだ続きます。
今さらかもしれませんが、ファンはぷよ◯よのゾウのキャラクターをイメージしています。
あのキャラクターの頭身を高くして、悪者にした感じです。
よろしくお願いします。
気がつけば七十集を超えていた!
ありがとうございます。




