第六十八集 リバがリバであるために
「リバの真骨頂はこれからです!」
フーの力の籠もった言葉で、僕らから悲壮感が拭われた。
とはいっても、戦場のリバが追い込まれている事に変わりはなかった。
「どんどん行くよ〜」
突進を続けるファカマバ。
リバは赤い汗に動きを制限されながらも何とか躱す。
ただ足の負傷もあってか、動きにいつものキレはなかった。
「姉上、やはりリバ殿は……。
まして猟豹拳は機動力が命でごわす。
このままではマズイでごわす」
ワンフーが心配そうな顔をして戦場を見る。
「確かに豹猟拳といえば機動力。
でも、リバはそれだけの武獣家ではありませんよ。
そう、あの時も……」
そう言うとフーは、リバの過去について語り始めた。
「昔の話ですが、二人で山に籠もって修行した事がありました。
その時、フェリダエオオトカゲの群れに襲われたのです。」
「フェリダエオオトカゲの群れ!?
そんな、一匹でも大変なのに……」
以前襲われた事を思い出し、あれが群れで襲ってきたかと思うとゾッとした。
フーが続ける。
「闘いの最中、私とリバは逸れてしまいました。
私はリバが心配でした。
というのも、リバは修行の中で脚を負傷していたのです。
そんな状態で、フェリダエオオトカゲを何匹も相手に出来るだろうかと……」
「一匹ならまだしも、複数相手では万全の状態でもキツイでごわす」
ワンフーの言葉に、フーは当時を思い出したかの様な厳しい表情で頷いた。
「私も何とかオオトカゲを退け、すぐにリバの下へと向かいました。
そこで私が見たのは、全身傷だらけになりながらも、首に噛みついてフェリダエオオトカゲを討ち取っていたリバの姿でした」
「ニャンと……」
その凄惨な様子を思い浮かべ、皆がゴクリと唾を飲み込んだ。
「武獣家リバ、その強さは心の強さ。
絶対に諦めないという不屈の闘志が、リバをリバたらしめているのです。
ですから今回も……」
そう言って、フーは戦場のリバを見つめた。
その目からは、先程と同じく揺るぎない信頼が見て取れた。
戦場では、満身創痍のリバが膝を着いて肩で息をしていた。
「くっ……」
「そろそろ限界みたいだね〜。
オイラも十分楽しんだからもうおしまいにするよ〜」
ファカマバは、右足で地面を引っ掻く様な仕草を見せると、またしてもリバへ体当たりを仕掛けた。
それは今まで見せた中で、一番といえる速さのものだった。
「速いニャ!」
「そ〜ら!」
「!?」
ファカマバの体当たりを受け、リバの体が宙を舞う。
万事休すともいえる状況だったが、何故か僕の目に映ったリバの顔は笑っているように見えた。
余りにも速い攻防に錯覚したのかもしれないが、僕にはそう見えた。
「いただき〜。
河馬爆食〜」
ジーショウ戦でも見せたものと、同じ仕掛けで技へと入るファカマバ。
宙に浮くリバを、その大きな口で捕らえようとしていた。
その時、リバが体全体を一度ギュと縮こませて、それから目一杯に全身を大の字に広げてみせた。
「なんだ~?」
すると、口を開けて飛び上がるファカマバに、何か赤いキラキラした物が降り掛かった。
「あれは!?」
「まさか汗!」
驚く僕らに、リバはしてやったりの表情だった。
「闇雲に逃げてたわけじゃないさ!
汗が乾いて固まるのを待ってたんだ!
やっと自由だぜ!」
だが、体を伸ばしたリバにファカマバの大口が襲い掛かる。
「残念〜。
手遅れだね〜」
「リバ!」
ファカマバがバクっとリバを捕らえた。
しかし、ファカマバの口は大きく開いたままで、そのまま閉じることはなかった。
なんとリバはファカマバの口の中で踏ん張り、両手両足でその口が閉じるのを防いでいた。
「アタシを喰おうなんて百年はえーんだよ!!」
そう言って、リバが踏ん張っていた両手足を上下に思いっきり伸ばすと、ファカマバの口が限界以上に開いた。
「あほははふれふぁ〜《あごがはずれた〜》」
言葉にならない言葉がファカマバの口からこぼれだす。
痛みからか天を仰いだため、ファカマバの喉元が露わになった。
「それに汗を流し過ぎたみてーだな!
皮膚が乾いてきてんぞ!」
リバはその露わになったファカマバの喉にガブリと噛みついた。
そしてそこを出発点にして、牙を立てたまま螺旋状にファカマバの全身を駆け巡った。
「猟豹螺走牙!《りょうひょうらそうが》」
「かばぁ〜」
ファカマバの喉、そして全身から血が吹き出す。
血まみれのファカマバは、真っ逆さまに地面へと落ちていった。
気を失って横たわるファカマバ。
その側へリバがふわりと空から降り立った。
ファカマバに負けず全身傷だらけのリバだったが、地面に突っ伏すファカマバとは対象的に、二本の足でしっかりと大地を踏みしめていた。
「圧勝だ!」
拳を高々と掲げるリバ。
「信じていましたよ、リバ」
そう言って少しだけ表情を緩めるフーの顔は、軽く笑っただけなのに、不思議と今までで一番嬉しそうな顔に見えた。
読んでいただきありがとうございます。
一日空いてしまいましたが、リバ対ファカマバ、決着までいけて良かったです。
次は誰が闘うのか。
次話もよろしくお願いします。
ブックマークなどもよろしくお願いシマッス。




