第六十集 決死の覚悟! 伝説を超えるニャ!
「まだまだ!」
「そうでなくては面白くない。
首角鞭撃!」
またしても首を伸ばし、雪尾拳の二人に襲い掛かるジラ。
「首角鞭撃……。
恐ろしい技でごわす」
「ニャ……、あの動きにあの速さ、ハクとシュエはよくやってるニャ」
雪尾拳の二人は首の攻撃をかいくぐりながら、シュエが胴体、ハクが首と、手分けして攻撃していた。
「ぐはっ!」
「ハク!」
それでも何度か攻撃を喰らってしまった。
何とか致命傷は避けていたものの、二人とも既にボロボロだった。
首の一撃を受けたハクの下へシュエが赴く。
それを見たジラが首を縮め、攻撃の手を休めた。
「私の首角鞭撃を喰らって立ち上がってきたのは、超獣拳の同胞以外では初めてだ。
誇っていいぞ。
しかし、それも次で最期だ」
そう言って少しづつ首を伸ばしていくジラ。
心配そうに寄り添うシュエにハクが声を振り絞る。
「シュエ……、ジラの首が何処まで延長出来るか掴んだ……。
伸びきった所で攻撃を加えれば、あの強靭な首でも切れるはず」
ハクの提案を受けたシュエだったが、その顔は晴れなかった。
「でも、伸びきるというのも一瞬。
その瞬間に攻撃をするなど可能なの?」
「問題はそこだ……」
しばしの沈黙を破ったのはシュエだった。
「私が凍らせる」
ニコッと笑うシュエ。
それを見たハクは、シュエの肩を慌てて掴んだ。
「それはダメだ!
あの技は獣力を使い過ぎる!
今のシュエでは……」
「迷ってる時間はない。
超獣拳相手に二人とも生き残ろうなんて、虫が良過ぎたわ」
「シュエ!」
ハクの静止も聞かず立ち上がって構えるシュエ。
その決意漲る横顔を見て、ハクもついに覚悟を決めた。
「シュエ、死ぬなよ!」
ハクの言葉に、シュエは少しだけ頬を緩めた。
「今度こそ別れの挨拶は済んだか?
行くぞ! 首角鞭撃!」
迫りくる首の速さに合わせ、バク転で逃げるシュエ。
ハクはその隙に上空へと飛んだ。
シュエを追っていたジラだったが、その途中で不意に追うのを止めた。
首がビィーンとなっていたので、ハクの言う通り、延長の限界まで伸びきったようだ。
「好機!」
「む!?」
逃げるのをやめたシュエは、ジラの太い首を右の脇にガチッと抱えた。
「ふん、こんなもので私の動きを止めたとでも?」
馬鹿にした様に笑うジラ。
負けじとシュエもフッと鼻で笑った。
「いい気でいられるのも今のうちだわ!
雪尾拳奥義! 雪華氷縛波!」
シュエの体が白くキラキラと光る。
すると、抱えられているジラの首も次第に白く輝き初め、その表面を氷の結晶がびっしりと覆った。
「アナタの首を伸びきった所で凍らせたわ。
最早その強靭さは失われたし、縮める事も出来ない」
「なに!?」
そう言ってシュエは空を仰いだ。
その視線の先に居たのは、右腕を氷の刀に変えて振りかぶるハクだった。
「氷腕大刀!」
「ぐぉぉっ!」
落下の勢いを利用したハクの一撃はジラの首に大きな傷をつけた。
「くっ……、おのれぇぇえ!!」
「うぐっ!」
ジラは深手を負いながらも、シュエの氷の呪縛から暴れ逃れる。
ジラを抑えきれなくなったシュエは、吹き飛ばされ地面に転がった。
ジラは首を縮め通常の姿へと戻ると、首の傷口を抑え膝を着いた。
「シュエ!」
地に伏せるシュエの下に駆けつけるハク。
心配そうに見つめるハクに、シュエは拳を握ってみせた。
「これでジラは首角鞭撃が使えない。
接近戦なら貴方にも十分勝機はあるわ」
「分かった!
もう喋るな!」
「共に伝説を超えましょう……」
シュエはそう言い残して気を失った。
ハクはシュエを労うように肩に手を置いて、それからゆっくりと立ち上がった。
「シュエさん、大丈夫でしょうか?」
「まだ獣力は尽きてはいないようです。
ただ早く手当をしないと……」
フーの顔に迷いが見える。
隙を見てシュエを離脱させるか?
でもシュエも意識こそないが、未だにハクと一緒に闘っているように見える。
フーの迷いは最もだった。
そんなフーにライが声をかけた。
「フー様、これは雪尾拳の闘い。
ハク殿から頼まれるまでは見守りましょう」
ライの言葉にフーが頷く。
「ですね。
あのお二人を信じましょう」
戦場ではハクとジラが睨み合っていた。
「私の首に傷をつけるとは……。
だが首角鞭撃は我が技の一つに過ぎない」
そう言うとジラは傷口から手を離した。
そして、首から流れる血はそのままに半身に構えた。
対するハクはジラに向かって正対した。
「それは羨ましい。
我々には雪と氷しかない。
次が最後の攻撃だが、それも氷の技だ……」
自虐的な苦笑いを浮かべるハク。
ただ口ではそう言うが、その佇まいには何処か自身の拳への誇りを感じさせた。
「最後の攻撃って……。
まさかハクさん……」
動揺する僕の肩に、タマのぷにぷにの肉球が置かれた。
「ハクさんは、純粋に持てる力の全てをぶつけようとしているのニャ。
しっかりと見届けるニャ」
「タマ……」
タマの言葉を受け、僕はハクの一挙手一投足を見逃すまいと戦場へと目を向けた。
「ジラ! 覚悟!
奥義! 旋風氷山撃!」
ハクは叫ぶと同時に、自身の体を氷の塊へと変えた。
ただ尻尾だけはそのままで、その尻尾を例の如く高速で回した。
回転する尻尾の推進力を受け、氷塊となったハクが猛スピードでジラへと突撃していった。
「見事な技だ!
だが甘い!」
ジラは負けじと叫ぶと、四つん這いの体勢になった。
すると何と、ジラの手足が三倍位の長さに伸びた。
「なっ!!」
まさかの出来事に絶句する僕ら。
氷塊のハクは正確にジラの体の中心を捉えていた。
しかし手足が伸びた事で、その間を通る形になってしまった。
「終わりだ!
長脚蹄踏」
自身の足の間を通り過ぎようとする氷の塊を、長い手で押し潰そうとするジラ。
その瞬間、ハクの氷塊にヒビが入った。
「旋風尾氷弾!」
割れて細かくなった氷弾が尻尾からの追い風を受け、ジラの体へと次々と突き刺さった。
「がはっ……」
手を振り上げていたジラは氷弾を喰らい、そのまま仰向けにひっくり返った。
「ま、まさか、私の手足が伸びるのを……」
仰向けのまま、顔だけハクに向けて言うジラ。
ハクはそんなジラを立ったまま見下ろして言った。
「先程のライ様の闘いに学ばせて頂いたのだ。
首が伸びるなら足が伸びる事もあるだろう。
もちろん確信は無く、一つの賭けだった」
ハクの言葉を受け、ジラはふぅ~と長い息を漏らした。
「改めて見事だ。
雪尾拳の名は、確かにこの身に刻ま……れ……たぞ……」
言い終わると同時にジラは気を失った。
「恐ろしい相手だった……。
超獣拳ジラ、その名の通り武獣を超えた強さだった……」
そう言うとハクも仰向けに倒れた。
「ごわす!」
「ニャ!」
その姿を見届けたワンフーとタマ、そしてパドが、猛スピードで雪尾拳の二人の下へと向かった。
読んでいただきありがとうございます。
超獣ジラは強敵でしたが、ハクとシュエの決死の想いが上回りました。
次の対決は誰が出るのか?
よろしくお願いします。
ブックマークなどもお願いしニャッス!




