第六集 タマvs黒猩拳ジーショウ
遂に現れたサル達を迎え討つため、僕らは道場を出て、丘の麓の平野に陣取った。
サル達もそれを見て、少し離れた所で進行を止めた。
「あの旗は"黒猩拳"。
やはり奴らの仕業でしたか」
フーがズラリと並んだサル達を睨みつけている。
隣にいたゲパが不思議そうな顔をする。
「フー様、やはりとは?
我々も場所柄サルには詳しいですが、黒猩拳なる流派は聞いたことがありません」
「昔、大猩拳のゴウリ殿から聞いたことがあります。
ヤンチャな奴らがいて困っていると。
その者らの名が確か黒猩拳だった。
エープの外れに道場を構えていたはずです。
知らなくて無理もないですよ」
ゲパとルートが低頭する。
タマもフーの博識に感心といった感じだ。
「ねぇ、タマ。
もしかしてフーさんて凄い方なの?」
タマにそっと耳打ちで訊ねると、タマは何度も首を縦に振った。
「もちろんニャ。
虎皇拳といえば主のアム様が有名ニャが、アム様に次ぐ実力者と言われているのがフー様ニャ。
武獣家で知らないやつはいないニャ」
貫禄はあるが、物腰の柔らかい感じだったので気軽に話していた。
そこまで凄いトラだったとは。
改めてフーの背中を見ると、何かオーラのようなものを感じた。
フーが前に進み出て、黒猩拳に向かい大音声を上げる。
「私は虎皇拳のフー!
黒猩拳の者共よ!
何ゆえ豹猟拳に奇襲をかけた!
返答次第ではただでは済まないぞ!」
フーの名に驚いたのか、ざわつくサル達。
その中から、一際大きい三匹のサルが前に出てきた。
「遅猿拳のノロマ共が中々帰ってこないと思ったら、意外な大物が釣れたようじゃな。
何ゆえと問うたか? 虎皇拳のフーよ。
我ら武獣家であろう。
いつ如何なる時も、闘いの準備が出来ていなければ、武獣家としての心構えがなっとらんという事じゃ!」
首領と思われる先頭のサルが叫ぶと、それを合図にしたように二匹のサルがこちらへと飛びかかってきた。
「黒猩拳パンショウ!」
「同じくジーショウ!」
パンショウと名乗ったサルの、両足揃えての蹴りがゲパに襲いかかる。
ゲパはそれを両腕でガッチリと受け止めた。
「豹猟拳のゲパ!」
ゲパがお返しとばかりに上段蹴りを放つ。
パンショウはそれを宙返りでかわした。
彼らの目にも止まらぬ攻防にも驚いた。
が、それ以上に驚いたのは、ジーショウとかいう忍者みたいな格好をしたサルがタマに襲いかかった事だった。
てっきり首領をフー、後の二匹はゲパとルートが相手をすると思っていた。
何であのサルはタマを選んだんだ?
「ニャんと!」
ジーショウは両手を握り合わせ、それをハンマーのようにして打ち下ろしてきた。
タマは必死でそれを避け、躱し際に爪で一撃を加えた。
しかし、攻撃を受けたジーショウはニヤリと笑い、逆にタマが爪を押さえている。
「タマ、大丈夫?!」
「か、硬いニャ〜」
ジーショウが腕を組み、勝ち誇ったように言う。
「黒猩拳奥義、硬猿毛!
硬化されたこの毛はどんな攻撃も跳ね返す」
言い終わるとジーショウは、長い手足を活かした攻撃を次々と繰り出す。
タマは防ぐので精一杯だ。
何度かまともに喰らい、かなりダメージを受けてしまっている。
タマがなんとか反撃をし、二人の間が一旦開く。
うずくまるタマの元に慌てて駆け寄る。
「タマ! 大丈夫?」
タマは苦しそうにしながらも、なんとか笑顔を見せる。
「大丈夫。まだまだこれからニャ……」
「そうだ! 獣総栄食を……」
獣総栄食を出そうとした僕の手をタマが制する。
「いや、それは必要ないニャ。
これは武獣家同士の一対一の勝負。
自分の力以外のものに頼るわけにはいかないニャ」
「タマ……」
「でもそれを見て、猫爪波を使った時の事を思い出したニャ。
猫爪波はまだ使えニャいけど、あの時何となくコツは掴んだニャ。
だから、その前段階の技なら使えるかもしれニャい」
タマがフラフラと立ち上がる。
そんなタマの様子を見て、ジーショウが鼻で笑う。
「ふん、何をコソコソ話している。
何をしようと貴様の攻撃は俺には通用しない」
それを聞いたタマはジーショウを指差し、大声を張り上げた。
「言ったニャー!
次の攻撃に私の全身全霊を込めるニャ!
受けてみるニャー!」
タマの両手の爪が、青白く薄っすらと光る。
タマは空中へと飛び上がると、クルクルと連続して前方に宙返りをする。
そしてその回転を利用して、両手の爪をジーショウに向かって振り下ろす。
ジーショウは両腕で顔を覆い、背中を丸め、完全防御の体制だ。
「回転ネコ波无智!」
タマの体が回転しながら、ジーショウの頭の上を通過する。
タマは着地に失敗し、ザッサーっと地面へと転がった。
ジーショウはしばらく動かなかった。
その様子を見て、誰もがタマの攻撃は通用しなかったと思った。
でも次の瞬間、ジーショウの背中から血が吹き出し、うめき声と共にバタリと倒れた。
「バ、バカな……」
読んでいただきありがとうございます。
タマ、頑張りました。
次回、黒猩拳の目的が明らかに!?
よろしくお願いします。




