第五十五集 超獣来襲ニャ! 先陣は俺に任せろ!
「来ましたか」
フーがそう言って空を見上げた。
フーに続いて空を見ると、六つの影がこちらへと迫ってきているのが分かった。
━━ドンドンドン!
派手な音を立て、獅子爪牙拳の修練場に着地した六つの影はすでに影ではなく、それぞれが個性的な姿をした六名の武獣家だった。
話に聞いていた首長の男。
グルグルと巻いた角を持ったケモノ型の者。
ずんぐりとした巨大な尻の者など、様々な見た目だった。
マントを頭から被って正体不明の者もいた。
「臆せずにいたか。
フェリダエの者どもよ」
六名の中から鼻の長い武獣家が、前へと進み出てきた。
鼻だけではなく耳も大きい。
そして灰色のザラザラとした皮膚。
〈象のケモノ型だ……〉
「決まり文句は結構です。
こちらは準備万端ですよ」
対してこちらはライが代表して、穏やかながらも鋭く言い放った。
「言ってくれるわ。
儂は超獣拳六覇衆が一人、ファンじゃ」
「獅子爪牙拳のライと申します。
以後お見知りおきを」
ライの口上を聞いて、再び鼻を鳴らすファン。
「見知って欲しい?
貴様こそ決まり文句ではないか」
「気が合いますね」
丁々発止のやり取りに早速ピリつく両陣。
沈黙の時間がしばし流れる。
それを破ったのは、ライの隣へと並び出たフーだった。
「超獣拳の者よ。
私は虎皇拳のフー。
手紙に我々の先途を問うとあったが、いかなる筋合いか?
答えて貰いたい」
いつもの柔らかい感じとは違う、厳しい口調のフー。
それに対しファンは余裕の表情を見せた。
「ふぁっふぁっふぁっ。
筋合いと来たか。
そうじゃな。
宿命とでも答えておこう。
それ以上は武獣家らしく……」
ファンがそう言って、後ろを振り向く。
すると残っていた五名の中から、巻き角を持ったケモノ型の武獣家が突然フーへと飛び掛かった。
しかしフーは、胸の前で軽く腕を組んだまま微動だにしなかった。
「フーさん!」
角がフーの間近に迫り、僕は思わずそう叫んだ。
だが超獣拳の男の角は、フーに届くことはなかった。
「フェリダエの女神にして虎皇拳の華。
フー様に物騒な物を向けないでもらいたい」
「我の突撃を止めるとは……」
超獣拳の男の鋭い角を、両腕でガッチリと押さえたのは何とティグだった。
「先陣、任せました。
ティグ!」
「はっ!」
フーはゆっくりと歩いて、僕らの下へと戻ってきた。
その表情は変わらず厳しかったが、何処か安心している様にも見えた。
だがフーを迎えたタマの表情は不安でいっぱいだった。
「フ、フーさん、ティグが、ティグが先陣なのかニャ?」
そんなタマの肩をフーがぽんと叩いた。
「安心してください。
タマさん。
確かにティグはちょっと変わった所がありますが……。
でも拳法の腕は確かです」
フーの言葉に、ワンフーが大きく頷いた。
「そうでゴワス!
ティグはそれがしをして、好敵手と呼ばせる存在。
強いでゴワス!」
「ワンフーさんの……」
「好敵手……」
意外な事実にみんなが息を呑む。
最近は料理してる姿ばかり見ていたので、特に驚きも大きかった。
一方、先陣を飾った両者はあれから動いた様子はなかった。
「我は超獣拳マルコ。
貴様の名は?」
マルコと名乗った男は、巻き角と胸まで伸びたヒゲが目を引いた。
ヤギっぽいが見たこと無いケモノだ。
「虎皇拳ティグだ。
超獣拳マルコ、相手にとって不足なしだ!」
ティグがマルコの角を持って捻り上げようする。
しかしティグが力むばかりで、マルコの体勢は一向に変わらなかった。
「我の突撃を受け止めたという事で、我と闘う資格ありと見た。
だが、その程度か!」
「ぬぉ!」
マルコは気合一閃、角を掴まれたままでティグを持ち上げた。
更にそこからティグを地面へと叩きつけようとしたが、ティグはその途中で自ら手を離し難を逃れた。
「これは……。
マジか……」
上手く対応した様に見えたティグだったが、その顔は汗でびっしょりだった。
「ティグさん、まだ始まったばかりなのに汗が……」
「一流の武獣家ともなると、数手交えただけで互いの力量が分かる……」
レサが厳しい顔をしている。
「力量が分かるって……。
じゃあ……」
ティグの汗だくの顔とマルコの余裕の表情。
どちらが優勢か一目瞭然だった。
「ティグはそんなやわじゃないでゴワす!」
「その通り。
劣勢にあっても必ず活路を見出すはずです」
フーとワンフーは、ティグの事を真っ直ぐに見つめていた。
「まいったな。
さて、どうするか……」
ティグはその流れ落ちる汗を静かに拭った。
読んでいただきありがとうございます。
ついに開戦しました。
まさかのティグの登場でした。
次話、初戦決着です。
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