第五十集 超獣拳からの手紙ニャ! 宣戦布告はエノのせい!?
『フェリダエの武獣家に告ぐ。
貴様らの先途を問う。
勝負されたし。
超獣拳 六覇衆』
「超獣拳 六覇衆……」
手紙は超獣拳からの宣戦布告だった。
読み上げたライは困惑した表情だった。
「先途を問う……?」
「我らの伝説にも"審判"とあります。
やはり超獣拳こそが、雪尾拳の伝説そのものという事になるようですね……」
ハクがなんとも言えないといった表情をした。
無理もない。
流派に昔から伝わっていた伝説が、いざ現実のものになろうとしている。
嬉しいだの悲しいだの、一言で表せるような感情ではないだろう。
「しかし、審判とはいかなる了見でごわす?
なぜ、それがし達が審判されなければいけないのでごわすか?」
ワンフーが心外だといった感じで、鼻息を荒々しく吹き出した。
ワンフーの言葉を受け、ライがリオンを見た。
ライと目が合ったリオンは、肘掛けに持たれていた体をゆっくりと起こし、正面を向いて座り直した。
「研鑽会が鍵になってる。
研鑽会ほど大規模な動きは、今までフェリダエには無かった。
研鑽会を行った事で、フェリダエは一線を越えたのかもしれない」
「え?」
リオンの言葉に僕の胸がざわついた。
研鑽会は僕の一言がきっかけで始まった。
という事は僕が引き金を引いたって事?
「とはいっても、ワンフーの言う通り、私達が審判される理由など無い。
超獣拳が、我々を創り出した創造主だとでもいうなら話は別だけどね」
リオンは相変わらず気だるそうに話していたが、話の節々に何か強い意志を感じさせた。
リオンも怒っているのかもしれない。
リオンの言葉にフーも続いた。
「リオン様のおっしゃる通りです。
我々は、我々の意志で研鑽会を開きました。
それを超獣拳などに、とやかく言われる筋合いはありません」
フーはそう言うと、僕の方を見て優しく微笑んだ。
フーは僕の動揺に気が付いたみたいだ。
その優しさが身に沁みた。
それでも胸のドキドキは止まらなかった。
「エノ? どうしたニャ?」
僕の一言がきっかけで再び闘いが起こる。
それも今度は交流なんて穏やかなものじゃない。
真剣勝負、という事はもしかしたら……。
呼吸が荒くなる。
次第に目の前が暗くなってきた。
「エノ!」
完全な暗闇が訪れる前、最後に見たのは心配そうに僕を見つめるタマの顔だった。
■
「エノ!」
再び目を開けた時も、最初に見たのはタマの顔だった。
でも今度は嬉しそうな顔だった。
「ここは……?」
「獅子爪牙拳の道場の客間ニャ。
今日はここに泊めてもらうニャ」
寝ぼけ眼であたりを見回すと、レサが椅子で舟を漕いでいた。
隣には空いているベッドが一つ置いてあった。
「エノ大丈夫かニャ?
急に倒れるからびっくりしたニャ!」
「ごめんね。
急に目の前が真っ暗になって……」
そうだった。
リオンの話を聞いて、胸が苦しくなって……。
「研鑽会は僕の一言がきっかけで……。
そのせいで梅花拳が全滅。
それに超獣拳とも闘かうことに……」
僕が俯きながらそう言うと、タマは僕の肩に手を置いて真剣な表情を向けてきた。
「エノのせいじゃニャい!
難しい話は分からニャいけど、それだけは絶対にニャいニャ!」
「タマ……」
「その通りです」
タマが大きな声で言うと、それを合図にしたようにフー達が僕らの部屋へと入ってきた。
「エノさんはただ一例を示したのみ。
決断したのは我々。
責任は全て私達にあります」
フーの言葉にワンフー、ティグ、そしてタマも頷いた。
腕を組み、念を押すようにうんうんと何度も。
「それに梅花拳は政変を狙っていたそうです。
獅子爪牙拳に夜襲をかけようとしていたとか。
パド殿が教えてくれました」
「ニャンと!」
まさかそんな事が……。
「じゃあ超獣拳ジラは、結果的にそれを止めたということですか?」
僕の疑問に、フーも顎に手を当て考える仕草を見せた。
「結果的になのか、それとも意図的に止めたのか……」
「意図的にですか!?」
ティグが驚いて声を上げる。
「わかりませんがパド殿の話だと、ジラが"政変を懸念していた"というような発言したとか。
それに"欲をかくからこうなる"とも……」
「"欲"でごわすか……。
政変、つまりリオン様に取って代わろうという事でごわすな」
フーが頷く。
「それに政変とまではいきませんが、虎牙拳が西の盟主と認めて欲しい等と、アム様に言ってきた事もありました。
これは研鑽会が開催される前の話です」
「え?
研鑽会の前……」
驚く僕を見て、フーはもう一度優しく微笑みかけてくれた。
「そう。
このフェリダエでは、研鑽会前からしばしば"欲の萌芽"とでも言いましょうか。
他者からの称賛や、他より優位に立つ事を重要視する連中が現れ始めていたのです」
「そんなの変ニャ。
大事なのは自分の武と真っ直ぐに向き合う事ニャ」
タマが仙人の様な顔して言う。
あれ? なんか髭がフサフサ?
気のせいか……。
「タマさんの言う通り。
ただ武獣家も増えてきました。
その中で手が回らないのか、"心"の鍛錬を疎かにする道場があります。
"心"の鍛錬は時間がかかりますからね」
「だが、最も大切……」
ティグが最近の言動には似合わない、真剣な表情で呟いた。
そんなティグを、フーが温かい目で見ていた。
「アム様もリオン様も、エノ殿による研鑽会の提案を聞いた時に"心"の鍛錬が不十分な者への影響を考えました。
それでも実行したのは、やはり武獣家を信じていたから。
結果的に梅花拳は、その信頼を裏切ってしまったようですが……」
フーは一瞬残念そうな顔をしたが、すぐにいつもの柔らかい表情を僕へと向けた。
「とにかくエノさん、そういう訳でこの超獣拳や梅花拳の問題で、貴方が責任を感じる必要など微塵もありません。
全て成るようにして成ったのです」
「フーさん……。
ありがとうございます」
フーの気遣いに涙が出そうになる。
それを見られるのも恥ずかしくて、必要以上に深々と頭を下げてしまった。
そんな僕の側にタマがやって来て、元気づける様に肩を組んでくれた。
「もう大丈夫かニャ?
超獣拳がいつやって来るか分からないニャ!
落ち込んでる暇はないニャよ!」
「そうだね!
ありがとう、タマ!
あ! そうだ、超獣拳といえば……」
超獣拳という名前、ずっと何処かで聞いた事があるなと思ってたのだが、それをこの一連の騒動の中で思い出した。
という事で、枕もとにあった滅多に使わないカバンの中を探る。
「これだ!
『武獣流派大全』!」
「『武獣流派大全』!?」
みんなの視線が、僕の手の中の分厚い本へと注がれた。
読んでいただきありがとうございます。
お陰様で五十話まで来ました!
五十集か。
改めて、ありがとうございます!
ちょっと堅い話になってしまいました。
次話はコメディ感を出していきたいです。
よろしくお願い致します。
『ブックマーク』と『いいね』もよかったらお願いします。
評価もして頂けたら嬉しいです。




