第五集 豹猟拳へ到着ニャ!
「見えました!」
先頭を走るゲパが後ろに続くトラ達に向かって叫ぶ。
タマの背中越しに、小高い丘の上のお寺のような建物が見えた。
その丘の麓には柵に囲まれて小さな家が連なって建っていた。
この世界の集落は、まず武獣の各流派の道場があって、その周りに武獣家以外の者が暮らす里がある。
というのが一般的な形らしい。
「まずは道場へ急ぎましょう!」
フーとゲパに率いられた一団は丘を登り、豹猟拳の道場へと入った。
「大きい道場だなー」
「これくらいは普通ニャ。
道場は門下の者が寝食する場所も必要ニャから、どうしても大きくなるニャ」
道場は多少だけど壊れている所があった。
ただ、故意に荒らされたというよりは、闘いで傷ついたといった感じだった。
「ゲパ!」
「ルート、無事か?」
道場の中ではゲパとそっくりなチーター達が、里の者たちに介抱されていた。
寝ている者、自力で動ける者など様々だったが、毒にやられたようだ。
「すまない。
情けない事にサル達を不法にフェリダエに入れてしまった。
お前が戻るまで持ちこたえる事が出来なかった」
「安心しろ。
侵入者達はここまでの道中で既に捕らえた。
虎皇拳や旅の方々のおかげだ」
ルートと呼ばれたチーターが驚いた顔をする。
そして、すぐにフーやトラ達に礼をした。
ルートは足を引き摺っていた。
どうやらあのサルの毒は、浴びた箇所が痺れて動かせなくなるものみたいだ。
ゲパに言われ、ルートは僕らの前にもやって来た。
「ルートと申します。旅のお方。
我等の未熟さゆえ、ご迷惑をおかけしました。
助力、感謝致します」
タマが抱拳礼で返す。
「猫爪拳のタマですニャ。
あの毒で奇襲を受ければ、手練といえども苦戦するのは当然ですニャ。
みニャさんが頑張ってくれたお陰で、奴ら他の道場までは行けなかったニャ」
挨拶が終わるとトラ達は解毒薬を配った。
捕虜にしたサル達が持っていたものだとか。
闘いに敗れたので渋々だが差し出してきたようだ。
負けた時の潔さは、腐っても武獣家ってやつだ。
解毒薬を飲んで、動けるようになったチーター達は感謝しきりだった。
回復したルートにゲパが訊ねる。
「リバ様はまだ戻られていないようだな?」
「行かれたのが雷下咬拳だからな。
かなり遠い。
既に使者は到着しているだろうが、いくらリバ様でもあと数日はかかるだろう」
リバとは豹猟拳の主で、"神速のリバ"と呼ばれる程の名手だとタマが教えてくれた。
リバと高弟たちは他の道場との交流のために留守にしているらしい。
今回の件はその隙を突かれた形になってしまったみたいだ。
ただ、サル達はその事については「俺たちだってリバと闘いたかった」と否定していた。
ゲパ達の会話を聞いていたフーが割って入る。
「ところでルート殿、その後サル達の追撃は無かったのですか?」
ルートはフーに向かって低頭しながら答える。
「はい。
あの毒のサルが去ってからは特に何も。
奴らは数も多くなかったので、いずれ本隊が来るだろうと我々も思っていたのですが……」
「変だニャ。
あいつ等が単独で動いたって事かニャ?」
タマが首をかしげながらそう言うと、フーも怪訝な顔をした。
「その可能性は低いと思うのですが……。
実は"何も喋らなくても良い"という事を交換条件に、サル達にあの解毒薬を出させたのです。
なので情報が不足しているのですよ」
確かに情報も大事だが、チーター達の体には変えられない。
フーの判断は正しいと思う。
「サル達は本当に温和なのです。
私はエープの国主、大猩拳のゴウリ殿とも交流が有るのでよく知っています」
ゲパが頷きながら、フーの言葉に続く。
「フー様のおっしゃる通り。
サル達は基本的に温和で対応も丁寧なのです。
正直、国境の警備など要らない程です」
再びフーが口を開く。
「どの流派も穏やかで、修練としての他流試合も滅多にやらないと聞きます。
ただ、一部の流派がその事を不満に思っているとも聞いたことがあります。
今回の件の黒幕はその辺りかもしれませんね」
そうしてみんなで話し合っていると、急に道場の外が騒がしくなった。
すると、どことなく若く見えるチーターが、道場内に駆け込んできて叫んだ。
「大変です!
サルの集団がこちらへ向かってきます!」
「ニャんと!」
驚きの知らせに、僕らは慌てて外へ飛び出した。
丘の上から見ると、三十匹程のサルの集団が『黒』と書かれた大きな旗を掲げ、土煙を上げながらこちらへと迫ってきていた。
読んでいただきありがとうございます。
チーター達はこれからもしばしば登場する予定です。
次回は再びサルと対決です。
よろしくお願いします。




