おまけ 祭りのあとニャ!
「皆さん、お疲れ様でした。
皆さんのお陰でフェリダエ武獣研鑽会、無事に終えることが出来ました。
選手として参加してくださった方も、尽力してくれた運営も本当にありがとうございました!」
表彰式も終え、僕らは虎皇拳の道場へと戻ってきた。
そこでは虎皇拳の皆が、慰労会の様なものを開いてくれていた。
研鑽会の出場者は全員招待されていたが、辞退した者も数名いたらしい。
「それではアム様、一言お願い致します」
最初の挨拶をしたフーが一礼して下がる。
代わって前に出てきたアムはご機嫌だった。
「みんな、お疲れちゃんだったわね!
素敵な闘いをたくさん見られて、アタシ的にも"やったぜグッ!"って感じだわ。
美味しい食べ物や飲み物も用意したわ。
食べて飲んで、大いに語り合って頂戴! チュッ♡」
最後は投げキッスのおまけ付きだった。
早速脱落者が出るかと思われたが、流石研鑽会に参加した猛者たちだった。
〈というかアムさんって、公の場でもあのキャラでいいのか……〉
周りを見渡しても、アムの強烈な個性に戸惑った素振りを見せる者はいなかった。
周知の事実だったのか?
まぁこの世界の流儀、"細かい事は気にしない"でいいか。
「なんで? なんでお前までウホウホ言ってたんだよ!
笑いそうになったじゃねーか!
アハハハハッ!
あー、おっかしー……」
リバがゲパの背中をバンバンと叩いている。
「いや、なんか興奮してしまって……」
ゲパは顔を赤くしていた。
いつも冷静で真面目な印象のゲパだけに、リバ対クーニャン戦のあのウホウホは確かにびっくりだった。
もちろんふざけてた訳ではなく、真剣にリバを鼓舞しようとしたのだろうけど……。
今思い返すとちょっと面白い。
「でもあの時、ゴウリ師匠の大猩音が聞こえて来た時はびっくりしたニャ!
てっきり帰ったとばかり思ってたニャ!」
「アタシもビックリしたよ!
でもなーんか、あの時は力が湧いてきたなー。
ゴウリの事苦手だったんだけどな〜」
腕を組んで首を傾げるリバ。
その仕草が妙に可愛らしくて、ちょっとイタズラをしてみたくなった。
「あ、ゴウリさんだ!」
「え! どこどこ?」
慌ててゲパの後ろに隠れるリバ。
まだ完全に克服したって訳ではないみたいだ。
「エノ! てめぇ!」
お前、アタシの事舐めてんだろ!」
「わぁー!
ごめんなさい! ごめんなさい!」
リバに首を固められ、拳骨で頭をグリグリされた。
前にゲパがやられてて、うら……ゴホン、痛そうと思っていたやつだった。
現に痛かった。
でも、そのなんというか……。
とりあえず抱拳礼をしておこう。
「皆さん、随分楽しそうですね」
「あ! ライじゃねーか!」
フェリダエ武獣研鑽会、優勝者のライが僕らが囲む食卓へとやって来た。
早速リバが絡んで、「次は負けねー」なんて言っていた。
でも次第に、獣力の扱い方について意見を交わしたりして、武獣家らしい会話になっていった。
ライは見た目通りとても礼儀正しくて、僕にも丁寧に挨拶してくれた。
中性的で、落ち着いていて品がある。
見た目を気にしない者が大半のこの世界でも、ライは多分人気者だと思う。
そういえば決勝戦でも、何やら黄色い声援が飛んでいたっけ。
きっと"ライギーク"も既に存在しているのだろう。
「ところでライさん、リオンさんってホントにカッコいいですよね!
颯爽と現れ、タマのピンチを二回も救ってくれたし。
審判席ではなんか面倒くさそうに座ってたのに……。
いつもあんなふうに、"やる時はやる!"って感じなんですか?」
僕にそう聞かれたライは、うんうんとにこやかに頷いた。
「リオン様を初めて見た方は、大抵そう仰っしゃられますね。
でもリオン様はフェリダエ一、いや、この大陸一の働き者だと思います」
「えー!」
「あんなダルそうに話すのにか!?」
ライが頷く。
「リオン様は常に獅子爪牙拳の事、そしてフェリダエの事を思っています。
自ら門下の者に指導もされますし、里の巡回なども頻繁に行かれます。
かといって独裁というわけではありません。
我々の意見にも耳を傾けてくれますし、誰に対しても隔てがありません。
理想の主と言っていいお方です」
「ニャー……」
タマは呆気に取られてぼっーとしていた。
そこへ方方に挨拶して回っていた、アムとフーがやって来た。
「アタシと一緒ね」
「"誰に対しても隔てがない"という部分ですね」
誇らしげに胸を張ったアムに、フーが鋭くツッコむお馴染みの光景だ。
「何よ〜、ちゃんと指導もしてるじゃないのよ」
アムが頬を膨らませて抗議の意を示すと、フーが呆れたように何度も首を横に振った。
「あれは指導とは呼べません。
ただ、来た者をぶっ飛ばしているだけです」
「あら? ちゃんとアタシの想いも込めてるのよ」
アムがそう言うと、タマが元気良く手を上げた。
「ニャー! ニャー!
ワタシはちゃんとその想いを受け取ったニャ!」
そういえばタマもアムにぶっ飛ばされて、虎皇拳の道場の壁をぶち破ってたな。
「ホントか〜?
じゃあ、どんな想いが込められてたんだよ?」
リバがニヤニヤしながらタマの顔を覗き込む。
「えっと、その……、が、"頑張れ!"……ニャ!」
タマがなんとか捻り出した答えに、リバは腹を抱えて大爆笑だ。
「言うに事欠いてそれかよ!
"頑張れ"って、随分と単純だな!
アーハッハッハッ! 腹痛ー」
リバの隣ではレサも笑って転げ回っていた。
すると、そんな二人の様子を見ていたアムの目がキラリと光った。
「タマちゃん、正解よ!」
「正解かい!」
「ズリーぞ! アムねーちゃん!」
「絶対ウソだ……」
みんなから色々言われても、アムは全く動じなかった。
それどころか何処か嬉しそうにさえ見えた。
「さぁアム様、そろそろ行きますよ。
まだ挨拶回りは終わっていません」
「あら、そーなの?
仕方ないわねー。
じゃあね。アンタたち。
また後で遊んであげるわ♡」
アムは投げキッスを置き土産に、フーに腕を引かれ別の武獣家達の輪に加わっていった。
「遊んであげるって……、さり気なくめちゃくちゃ怖ぇー事言ってたな……」
「ですね……」
アムの残滓に怯えていると、何故かライもふるふると震えていた。
「ラ、ライさん?」
「素敵です」
「ニャ?」
ライが瞳を輝かせながら、ボソッと呟いた言葉に僕らは耳を疑った。
素敵? 今のやり取りに、素敵な所なんて一つもなかったはずだ。
「アム様と皆さんには、主従を越えた信頼関係を感じました!
なんて素敵な関係性なんだろう!
僕もいつかリオン様に"正解かよ!"とか"ズルいな"とか言ってみたいものです!」
興奮気味に語るライ。
そんなライを見て、僕らの心は一つだった。
決して自分たちを卑下するわけじゃない。
でもやはり、こう言わずにはいられなかった。
「やめとけ」
「やめるニャ」
「やめましょう」
「絶対ダメゴリ……」
でもこんなにハッキリと止めたにも関わらず、ライは変わらずに憧れの眼差しを僕らへと向けてきた。
「素敵です……」
読んでいただきありがとうございます。
おまけという事で、このお話全体に在る、コメディ色の強さを全面に出したつもりです。
文の拙さから伝わらないかもしれませんが……。
さて、このおまけにて第一部終了となります。
想像していた以上の方が読んでくださり、モチベーション高く毎日書くことが出来ました。。
お陰様で10万字を超えることが出来ました。
改めてありがとうございます。
といっても、また明日から新章を投稿します。
なんとか毎日投稿続けたいと思います。
これからもよろしくお願いします。
"ブックマーク"、それから"いいね"を下さった方も本当にありがとうございます。
嬉しかったです。




