第四十三集 傷だらけの女神ニャ!
「リバが優っている力、それは体力よ!」
「体力ー!!」
みんなが揃えて驚きの声をあげた。
でも多分、アムがなんと言おうと同じ反応をしていたと思う。
「体力って、何処まで走っても息が切れニャいみたいな、その体力かニャ?」
「そうね。
細かくいえばそれは持久力かしら?
まぁそれも含めてね。
あとはワンフーみたいな耐久力や筋力なんかも入るわ」
なるほど、一口に体力と言っても色んな要素がある。
でもリバは、見た目からはそんなに体力があるようには見えないけど……。
「リバは細身だけど筋力もあるわ。
それになんといっても持久力と耐久力ね。
リバはこれで豹猟拳の先頭に立った、と言っても過言じゃないわ。
根性とか、精神的な強さも関係してくるけどね!♡」
僕の疑問を見透かしたかのようなアムの説明に驚く。
おまけのウインクは有り難く頂戴した。
「まぁ見てなさい。
あの娘も考え無しに、あんながむしゃらに突っ込んでる訳じゃないわ。
ゲパちゃんが必死で抑えようとしてるのも、逆に効果的よ」
改めて闘技場の上に注目すると、リバが変わらず猛攻を仕掛けていた。
時折反撃を受けるが、またすぐに間合いを詰める。
「確かに、始まってからずっーと攻撃し続けてるのに、リバさんの速さは変わってない。
むしろ速くなってるんじゃ……」
「見るニャ!
クーニャン様の顔!
涼しい顔してるけど、何となくさっきまでとは違うニャ!」
「ほんと……」
タマの指摘にレサが頷く。
そう言われると、僕にもそんなふうに見えてきた。
「どうした、ばぁーちゃん!
疲れてきたか?」
曇り始めたクーニャンの表情とは対象的に、リバの顔をますます生き生きとしてきた。
「しつこい娘っ子だね!」
クーニャンが再びリバの懐に入ってしゃがみこんだ。
今度は肘ではなく、突き上げるように両足でリバの腹部を蹴り上げた。
「疾風猫脚!」
「ぐぇっ!」
後ろへと吹き飛ぶリバ。
さっきは見事に着地してみせたが、今度は闘技場の石の上をゴロゴロと転がった。
「痛ってぇー……」
腹を押さえて立ち上がるリバ。
だが、その足取りはまだまだ確かだった。
「埒が明かないね。
リオンさんや、少々荒っぽくやるけどいいかい?」
クーニャンがリオンへと問いかける。
受けたリオンは少しだけ考える仕草を見せたが、すぐに大きな丸を両手で作って見せた。
それを見たクーニャンがニヤリと笑った。
「それじゃあ行かせてもらおうかね」
クーニャンの爪が青白く光る。
「あ! あれは!」
僕とタマが目を見合わせる。
あの爪の感じ、間違いない!
「猫爪破!」
クーニャンが爪を下から上へと振り上げる。
すると三日月型の刃が飛び出し、リバを襲った。
「くっ!」
なんとか避けようとしたリバだったが、猫爪破は高速で襲い掛かり、リバの太ももを切りつけた。
ついに膝を着くリバ。
その時どこか遠くの方から、バンバンと太鼓を叩くような音が響いた。
会場全体を揺るがすほどの大音量で響く太鼓の音。
それはまるでリバを鼓舞しているかの様だった。
「こ、これは!」
「ゴウリ様の大猩音……」
太ももを押さえ、苦悶の表情を浮かべていたリバだったが、音の正体に気が付いたようだ。
「これは、ゴ、ゴウリの……」
リバがゆっくりと立ち上がる。
クーニャンがまたしてもニヤリと口元を緩めた。
「これで少しは落ち着いて……!」
「猟豹驚躯!」
太ももを負傷したことで、リバの機動力も落ちるかと思われた。
クーニャンもそう思ったようだ。
でもリバはそんな負傷を感じさせる事なく、何度めだろうか、またしても瞬時にクーニャンに詰め寄った。
「なんじゃ!」
リバの爪がクーニャンの肩を捉え、鮮血が飛び散る。
さらにリバは手を休めず、そのまま攻撃を続けた。
「オラオラオラー!」
「くっ、小娘が調子に乗るんじゃないよ!
猫爪閃光波!」
クーニャンがリバではなく地面に向かって拳を放つ。
すると抉れた地面から閃光が四方に広がり、リバの体を吹き飛ばした……かに思えたが、リバはそれを耐え抜いた。
「効かねー!
もっと来いやー! ばあちゃん!」
「クソガキめ!」
両者の闘いは互いの技量を競うものから、最早防御を無視した殴り合いへと変わった。
「す、スゴい……」
「これが道場主同士の闘いかニャ……」
アムとフーは、笑いを堪えきれないといった様子でお腹を抱えていた。
「これが武獣家の闘いかしら?
クーニャンちゃんまでムキになっちゃって」
「ホントですね。
でも、これこそリバの狙い……」
二人の殴り合いに観客席からは大歓声。
興奮のるつぼってやつだ。
「とりゃー!」
「てぇい!」
「ウホウホウホー!!」
タマとレサは胸を叩き、声を揃えて大猩音を真似ていた。
なんと介添人のゲパまで、同じ様にウホウホ言っていたのには驚いた。
「先輩を敬わんかい!
ネコ波无智!」
クーニャンがネコ波无智を繰り出す。
だが、クーニャンが狙った場所にリバの姿はなかった。
「消えた!?」
クーニャンが後ろを振り返ると、そこには腰を落として構えるリバがいた。
「アタシはリバ!
フェリダエ一の速さを誇るチーター達の頂点だ!
くらえ! 神速昇空撃!」
足元から伸び上がったリバの拳がクーニャンの顎を捉える。
弧を描いて後ろへと飛んでいくクーニャン。
そしてそのまま、闘技場の石の上へ仰向けに転がった。
それでもなんとか立ち上がろうとするクーニャン。
だがその途中で、何を思ったか「ふ~」と長いため息をつくと、リオンに向かってバツ印を作った。
リオンがそれを見て頷く。
「勝者リバ!」
勝ち名乗りを受けたリバだったが、納得いかないといった感じでクーニャンに向かって叫ぶ。
「なんだよ、ばあちゃん!
まだやれんだろ!」
クーニャンが首を使って跳ね起きる。
そして頭を振ってリバの言葉に応えた。
「アンタみたいなバカには付き合ってらんないんだよ!
全く……。
もう懲り懲りだよ。
アンタとは二度とやんないよ!」
そう言い捨てて闘技場を降りていくクーニャン。
後ろ手に組んで歩いていく姿は、登場した時と同じ様にまるで散歩の途中だった。
「なんだよー、アタシはまたやりたいけどなー」
頭の上で手を組んでそう呟くリバ。
その顔は血が出てるわ、腫れてるわでボコボコだった。
〈あの美しい顔が……〉と一瞬思ったが、何故かそんな顔なのにキラキラ輝いて見えた。
そこへゲバが泣きながら駆け寄ってきた。
「リ、リバ様……、この不肖ゲパ!
一生リバ様に付いていきます!」
「げっ! なんだよゲパ!
いいから泣くな!
鼻水ででんぞ! キタネーな」
顔をクシャクシャにするゲパ。
闘技場の下では、ターチもさめざめと涙を流していた。
「ウホウホウホー!!」
突然、闘技場にゴウリの声が木霊した。
それを聞いたリバは、いつもの様にゲパの後ろへと隠れるかと思ったが、そうはしなかった。
「リ、リバさま……」
姿の見えないゴウリの大猩音に応えるように、リバは高々とその長い腕を空に向かって伸ばした。
読んでいただいてありがとうございます。
リバ、根性の勝利でした。
次話で研鑽会終わりになります。
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お陰様で昨日も100pv行きました!
話数が増えてきたのもあるのでしょうか?
なんにしても、読んでくださってる皆さんのお陰です。
ありがとうございます。




