第四十一集 タマは泣いて、そして笑う。
「タマ! 具合はどうゴリ!」
リュンピョウとの闘いに破れ、医務室となっている天幕へと直行したタマと僕たち。
そこにティグとジーショウ、そしてゴウリがやって来た。
医務室は、アムも出入り出来るようにしたのかかなり大きめで、ゴウリが入っても大丈夫な造りになっていた。
「ニャニャ! 師匠!
せっかく来ていただいたのに、無様な姿を見せてしまったニャ……」
「無様などではない!
実に可愛かった!」
「うむ! ジーショウの言う通り!
特にあの……」
ティグとジーショウが前のめりなって、タマの可愛さについて語り合う。
熱くなりつつも、タマの寝るベットまで一定の距離を保っているところはちゃんとしていた。
「邪魔ゴリ!」
熱弁を振るうティグとジーショウだったが、ゴウリに肩を捕まれ、そのまま後ろへと投げ飛ばされた。
鼻息をフンっと吹き出し、仕切り直すゴウリ。
「ジーショウの言うことも一理あるゴリ。
決して無様ではないゴリ。
どんな時も己の最上を尽くす。
これが武獣家としてのあるべき姿ゴリ」
「ゴウリ師匠〜。
ニャニャ〜」
ジーショウ達の熱弁には呆れ顔だったタマ。
だが、ゴウリの言葉を聞いて今にも泣き出しそうだ。
「大事なのは事が起きた後と前とで、自身がどう変わったかゴリ!
どうゴリ、タマ?
お前はあの雷ネコに負けて弱くなったゴリか?」
タマは必死で涙を堪えながら、首を横にぷるぷると振った。
「な、なっでないでしゅニャ〜」
ゴウリが腕を組み、再び鼻息をフンっと鳴らす。
「そうだゴリ!
それにあの拍手聞こえなかったゴリか?
あれが答えゴリ!
そうであろう? エノ! レサ!」
「そうだよ! タマ!
ほんとにカッコ良かったよ!
タマの闘いはいつだって最高だよ!」
「その通り……」
レサはゴウリの真似をして腕を組みながら、僕は涙ぐみながらタマを労った。
「みんニャーー!!」
タマの目から堰を切ったように涙が溢れ出した。
そんなタマを微笑ましく見守っていると、フーが医務室の中へ飛び込んできた。
「これじゃ足りません!
簡単でいいのでもっと寝床を用意しましょう!」
フーに言われたトラ達がせっせと布団を運んできた。
何が起きているのかと不思議に思っていると、こちらに気が付いたフーがやって来て説明してくれた。
「今、闘技場では前半戦と後半戦の間の休憩時間を使った、アム様と希望者による組手を行っているのですが……。
予想してたより希望者が多くて、その為に慌てて準備をしているのです」
「なるほど……。
アムさんと闘って無事に済むわけないですもんね」
フーがニコっと笑う。
「きっとタマさんや、他の勇士達の闘いに触発されたのでしょうね。
アム様も喜んでいました」
前に虎皇拳の道場で見たアムの組手を思い出す。
三十人位いたのに、ものの数分で終わったっけ。
「エノも参加すればいい……」
「そーニャ! そーニャ!」
「か、勘弁してよ!」
レサが悪戯そうに笑っていうと、タマも泣き笑いでレサの冗談に乗っかってきた。
「では、組手希望者もう一方追加ですね」
「フーさんまで〜」
僕が困った顔でそう言うと、皆の口から笑い声が溢れた。
そんな僕らをよそに、医務室には次々と担架が運び込まれて来ていた。
「そろそろですかね。
組手が終わればすぐにリバの試合です。
特別に闘技場の側で見てもいいですよ」
「やったニャー!
見る見る、見!
痛たたた……」
タマは思わずといった感じでベットから飛び起きたが、左腕を押さえて蹲った。
「タマ! 無理しちゃダメだよ!」
「だ、大丈夫ニャー
リバさんとクーニャン様の闘い、何があっても見逃す訳にはいかないニャ!」
タマの目はまるで闘いの前のように燃えていた。
これは言っても多分聞かないな。
「仕方ないなー。
てもあんまり興奮しないでよ」
「分かってるニャ!」
タマは左腕を押さえながら立ち上がった。
僕らの心配を他所に満面の笑顔だ。
「儂らは帰るゴリ!
リバのやつ、儂を見たら緊張するゴリ。
だから帰るゴリ」
ゴウリの言葉を受け、顔を見合わせる僕たち。
するとフーがふっと優しく微笑んで、ゴウリに向かって言った。
「わかりました。
リバにもそう伝えます。
それにしても、リバもいつまで昔の事を言っているのでしょうね」
「儂が何かしたわけではないゴリが」
そう言って頭をポリポリと掻くゴウリ。
なんだろう? 昔に何かあったのか?
「ニャー?
師匠とリバさんに何かあったのかニャ?」
タマが首を傾げる。
それを見たゴウリが、仕方ないといった様子で語り始めた。
「昔、ちょっとエープの猿と豹猟拳との間で揉めた事があったゴリ。
その時ひょんな事から、当時豹猟拳最強だった者と儂が闘う事になったゴリ。
原因は忘れたゴリが、些細な事だったはずゴリ」
ドカッと地面に胡座をかいて、昔を思い出すように時々上を見ながら話すゴウリ。
「そいつも中々強かったゴリが、単純にパワー不足で、儂のこの体を覆う毛には歯が立たなかったゴリ」
ゴウリはそこまで話すとフーに視線を送った。
それを受け、フーが話を引き継いだ。
「豹猟拳では圧倒的で、最強だと信じられていた者が手も足も出なかった。
当時まだ駆け出しだったリバには、その姿は衝撃だったようです。
それ以来、リバはゴウリ殿を見ると震えてしまうのです。
ご存知の通り、道場主となった今でも変わりません」
なるほど。
流派としての相性だとか聞いていたけど、そんな過去があったのか。
確かによく考えれば、相性だけであそこまで意識することも無いか。
小さくなっているリバの姿に気を取られて、あんまり深く考えていなかった。
「リバの佇まいから見てゴリ、今のリバの実力はあの時の武獣家を遥かに凌駕してるゴリ」
ゴウリの言葉にフーが頷く。
「リバは強い。
きっとクーニャン殿との闘いでその事を証明してくれるでしょう」
ゴウリとフーの話を聞いたタマは目を爛々と輝かせていた。
同じ武獣家として、何か思うところがあるのかもしれない。
「よくわからニャいけど、とにかく早く見に行くニャー!」
そう言ってタマは医務室を飛び出していった。
医務室には相変わらず、次々と担架が運び込まれてきていた。
読んでいただきありがとうございます。
ゴウリはいい事言います。
次回リバVSクーニャンです。
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