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ネコジャRUSH!   作者: ジョン・道
第一章 転移と出会い〜フェリダエ武獣研鑽会まで
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第四十集 青白き閃光ニャ!


「雷下咬拳の到達点、お見せしましょう!」


「光栄ニャ!」


 そう言葉を交わし、互いに構えるタマとリュンピョウ。

 先手を取ったのはタマだった。

 雷下咬拳の使い手は、先手必勝って感じで先に仕掛けているイメージだったので、リュンピョウが先に動くかと思っていた。

 タマは早速ネコ波无智を振るったが、リュンピョウは後ろに飛んでそれを躱した。


「ナントカのカントカを見せてくれるんじゃニャいのか!」


「分かってないのに光栄とか言ってたんですか……」


 苦笑いのリュンピョウが改めて構える。

 何かに集中して気合でも溜めてる感じだ。


「細かい事はいいニャ!

 早く見せるニャ!」


 タマが逃げるリュンピョウを追いかけ、二発三発とネコ波无智を放つ。

 リュンピョウも華麗な身のこなしを見せ、タマの攻撃をいなしていく。


「僕も見せたいけど、そう簡単に出来る技じゃないんですよ。

 獣力をしっかり溜めて練らなきゃ」


「そうだったニャ。

 じゃあちょっと待つニャ……、なんて言うわけないニャー!」


 一瞬だけ間を開け、遠心力の効いた後ろ回し蹴りを放つタマ。

 技の入り、角度など申し分ない様に思えたが、リュンピョウはバク転を繰り出しこれも躱した。

 だが、着地したリュンピョウの頬が薄っすらと切れていた。

 垂れてくる赤い血を手で拭うリュンピョウ。


「危なかった……。

 掌底の印象はありましたけど、蹴りも鋭いですね」


「軽く躱しておいてよく言うニャ!」


 再びタマが攻撃を仕掛ける。

 だがやっぱりどこか動きにキレがなかった。

 リュンピョウが後ろに飛んで距離を取る。


「ニャっ!」


 離れた両者が睨み合う。

 しばらく膠着状態だったが、リュンピョウの深くて長い息がその静寂を破った。


「ふぅ〜〜。

 準備が整いました」


 リュンピョウがそう言うと、闘技場とその一帯の雰囲気が明らかに変わった。

 二人の熱戦に沸いていた観客席も、打って変わって固唾を飲んで見守る。

 嵐の前の静けさって感じだ。


「ねぇ、レサ?

 動きながらでも、獣力を溜めたり練ったりって出来るものなの?」


 レサはいつもの眠たそうな顔をして頷く。


「一流の武獣家なら……」


「なるほど……」


 リュンピョウは紛れもなく一流の武獣家だろう。

 これはいよいよ来るのか……。


「タマ、気をつけて!」


「ニャ!」


「はぁぁぁぁ!」


 リュンピョウが両足を開いて腰を落とす。

 そして握った拳を軽く後ろに引いて、腰のあたりで構えた。


「行きます」


 リュンピョウが鋭い目をして静かに言うと、闘技場の上からその姿が消えた。

 それと同時に僕らの頭上の所々が、点滅するようにもの凄い速さで青白く光った。

 姿は見えないけど、まさかリュンピョウが移動しているのか……。


「ニャニャ!?」


 タマは首を振ったり、体の向きを細かく変えている。

 レサも首を忙しく動かしている。


「えー! レサ、見えるの!?」


「いや……、ほんの少しだけ。

 速すぎる……」


 闘技場の上は相変わらずの光景だった。

 いつ攻撃が来るのかとドキドキしていると、リュンピョウの声だけが闘技場に響いた。


「雷下咬拳・滅!」 


 突然タマに向かって雷が落ち、その体が弾き飛んだ。

 タマの体がゴロゴロと闘技場の上を転がる。

 

「タマー!」


 タマは気を失ってはおらず、ゆっくりと体を起こした。


「ニャ、ニャー……」


 見ると左腕から血を流している。

 タマが左腕を押さえながら、なんとか立ち上がる。


「よく避けましたね。

 だけど今のは小手調べの様なもの。

 次が本当の雷下咬拳・滅です」

 

 リュンピョウがそう言うと、再び僕らの上空に青白い火花が舞った。


「肉球のかっ! ニャがっ!」


「ああ!」


 肉球の壁を張ろうとしたタマだったが、腕の痛みかガクッと膝をついてしまった。

 そもそも体力と獣力も十分に回復しないままに、無理して闘いに臨んだ事も響いているのかもしれない。


「終わりです!

 雷下咬拳・滅!」


「タマーー!!」


 僕とレサが声を揃えて叫ぶ。

 片膝を着き、蹲ったタマが顔を上げる。

 再びタマに雷が落ちた。

 青白い閃光が闘技場の上を走り、あまりの眩しさに目を背むけてしまった。


「タ、タマ……、えっ?」


 改めて見た闘技場の上では思いもよらない光景が広がっていた。

 しゃがみ込むタマ、その傍らには左腕を真っ直ぐに突き出し、タマを庇うように立っているリオンの姿があった。

 そしてそのリオンの左腕には、リュンピョウの牙がガッチリと食い込んでいた。

 リュンピョウの体は、その食い込んだ牙を支えにして、逆立ちの状態で空に向かって伸びていた。

 観客席は水を打ったように静まり返っている。


「リオン様……」


 放心状態のタマが呟く。

 それを聞いたリオンが頷く。

 リュンピョウは何も言わず、牙をリオンの腕から外し、二人から少し離れた位置へと飛び去った。

 リオンが右手を上げて、周囲に向かって言った。


「勝者リュンピョウ」


 勝ち名乗りを聞いた観客席は騒然としていた。

 手を下ろしたリオンがリュンピョウに顔を向けた。

 

「止めて悪かった、リュンピョウ」


「いえ、それより腕の方は……」


 リオンが自身の左腕をまじまじと見つめる。

 血も出ていないし、特に変わった様子はなさそうだった。

 あの技を受けてほぼ無傷って、そんな馬鹿な……。


「牙に被せをしてあったし。

 大丈夫」

 

「そ、そうですか……」


 リュンピョウの顔から冷汗が流れた。

 

「でもあの状態のタマが、まともに喰らえば致命傷になる。

 だから止めた」


「手負いとはいえ、タマさんは不屈の闘志の持ち主。

 手心を加える事は出来ませんでした」


 リュンピョウが抱拳礼をする。

 その姿を見て、ずっと放心状態だったタマがヨロヨロと立ち上がった。


「リオン様、助けていただきありがとうございますニャ。

 仰るとおり、リュンピョウの攻撃を防ぐ力は、ワタシには残っていませんでしたニャ」


 タマもリオンに向けて抱拳礼をした。

 そして今度はリュンピョウの方へ向き直った。


「リュンピョウ、全力で闘ってくれてありがとうニャ。

 雷下咬拳・滅、もの凄い技だったニャ。

 完敗だニャ」


「タマさん……」


 清々しい笑顔をリュンピョウに向けるタマ。

 潔く負けを認め、相手を素直に称えるタマの姿は武獣家そのものだった。


「二人とも、また闘いなよ。

 今度はお互いに万全な状態でさ」


 リオンが二人に向かってそう言うと、タマとリュンピョウはお互いの目を見合わせ頷いた。


「ぜひ!」

 

 力強い抱拳礼がタマとリュンピョウの間で交わされると、それを待っていたかのように、観客席から大きな拍手が二人に降り注いだ。


読んでいただきありがとうございます。


タマ、負けてしまいました。

次回、負けたタマは何を語るのか?

そしてその時仲間たちは?


よろしくお願いします。


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