第四十集 青白き閃光ニャ!
「雷下咬拳の到達点、お見せしましょう!」
「光栄ニャ!」
そう言葉を交わし、互いに構えるタマとリュンピョウ。
先手を取ったのはタマだった。
雷下咬拳の使い手は、先手必勝って感じで先に仕掛けているイメージだったので、リュンピョウが先に動くかと思っていた。
タマは早速ネコ波无智を振るったが、リュンピョウは後ろに飛んでそれを躱した。
「ナントカのカントカを見せてくれるんじゃニャいのか!」
「分かってないのに光栄とか言ってたんですか……」
苦笑いのリュンピョウが改めて構える。
何かに集中して気合でも溜めてる感じだ。
「細かい事はいいニャ!
早く見せるニャ!」
タマが逃げるリュンピョウを追いかけ、二発三発とネコ波无智を放つ。
リュンピョウも華麗な身のこなしを見せ、タマの攻撃をいなしていく。
「僕も見せたいけど、そう簡単に出来る技じゃないんですよ。
獣力をしっかり溜めて練らなきゃ」
「そうだったニャ。
じゃあちょっと待つニャ……、なんて言うわけないニャー!」
一瞬だけ間を開け、遠心力の効いた後ろ回し蹴りを放つタマ。
技の入り、角度など申し分ない様に思えたが、リュンピョウはバク転を繰り出しこれも躱した。
だが、着地したリュンピョウの頬が薄っすらと切れていた。
垂れてくる赤い血を手で拭うリュンピョウ。
「危なかった……。
掌底の印象はありましたけど、蹴りも鋭いですね」
「軽く躱しておいてよく言うニャ!」
再びタマが攻撃を仕掛ける。
だがやっぱりどこか動きにキレがなかった。
リュンピョウが後ろに飛んで距離を取る。
「ニャっ!」
離れた両者が睨み合う。
しばらく膠着状態だったが、リュンピョウの深くて長い息がその静寂を破った。
「ふぅ〜〜。
準備が整いました」
リュンピョウがそう言うと、闘技場とその一帯の雰囲気が明らかに変わった。
二人の熱戦に沸いていた観客席も、打って変わって固唾を飲んで見守る。
嵐の前の静けさって感じだ。
「ねぇ、レサ?
動きながらでも、獣力を溜めたり練ったりって出来るものなの?」
レサはいつもの眠たそうな顔をして頷く。
「一流の武獣家なら……」
「なるほど……」
リュンピョウは紛れもなく一流の武獣家だろう。
これはいよいよ来るのか……。
「タマ、気をつけて!」
「ニャ!」
「はぁぁぁぁ!」
リュンピョウが両足を開いて腰を落とす。
そして握った拳を軽く後ろに引いて、腰のあたりで構えた。
「行きます」
リュンピョウが鋭い目をして静かに言うと、闘技場の上からその姿が消えた。
それと同時に僕らの頭上の所々が、点滅するようにもの凄い速さで青白く光った。
姿は見えないけど、まさかリュンピョウが移動しているのか……。
「ニャニャ!?」
タマは首を振ったり、体の向きを細かく変えている。
レサも首を忙しく動かしている。
「えー! レサ、見えるの!?」
「いや……、ほんの少しだけ。
速すぎる……」
闘技場の上は相変わらずの光景だった。
いつ攻撃が来るのかとドキドキしていると、リュンピョウの声だけが闘技場に響いた。
「雷下咬拳・滅!」
突然タマに向かって雷が落ち、その体が弾き飛んだ。
タマの体がゴロゴロと闘技場の上を転がる。
「タマー!」
タマは気を失ってはおらず、ゆっくりと体を起こした。
「ニャ、ニャー……」
見ると左腕から血を流している。
タマが左腕を押さえながら、なんとか立ち上がる。
「よく避けましたね。
だけど今のは小手調べの様なもの。
次が本当の雷下咬拳・滅です」
リュンピョウがそう言うと、再び僕らの上空に青白い火花が舞った。
「肉球のかっ! ニャがっ!」
「ああ!」
肉球の壁を張ろうとしたタマだったが、腕の痛みかガクッと膝をついてしまった。
そもそも体力と獣力も十分に回復しないままに、無理して闘いに臨んだ事も響いているのかもしれない。
「終わりです!
雷下咬拳・滅!」
「タマーー!!」
僕とレサが声を揃えて叫ぶ。
片膝を着き、蹲ったタマが顔を上げる。
再びタマに雷が落ちた。
青白い閃光が闘技場の上を走り、あまりの眩しさに目を背むけてしまった。
「タ、タマ……、えっ?」
改めて見た闘技場の上では思いもよらない光景が広がっていた。
しゃがみ込むタマ、その傍らには左腕を真っ直ぐに突き出し、タマを庇うように立っているリオンの姿があった。
そしてそのリオンの左腕には、リュンピョウの牙がガッチリと食い込んでいた。
リュンピョウの体は、その食い込んだ牙を支えにして、逆立ちの状態で空に向かって伸びていた。
観客席は水を打ったように静まり返っている。
「リオン様……」
放心状態のタマが呟く。
それを聞いたリオンが頷く。
リュンピョウは何も言わず、牙をリオンの腕から外し、二人から少し離れた位置へと飛び去った。
リオンが右手を上げて、周囲に向かって言った。
「勝者リュンピョウ」
勝ち名乗りを聞いた観客席は騒然としていた。
手を下ろしたリオンがリュンピョウに顔を向けた。
「止めて悪かった、リュンピョウ」
「いえ、それより腕の方は……」
リオンが自身の左腕をまじまじと見つめる。
血も出ていないし、特に変わった様子はなさそうだった。
あの技を受けてほぼ無傷って、そんな馬鹿な……。
「牙に被せをしてあったし。
大丈夫」
「そ、そうですか……」
リュンピョウの顔から冷汗が流れた。
「でもあの状態のタマが、まともに喰らえば致命傷になる。
だから止めた」
「手負いとはいえ、タマさんは不屈の闘志の持ち主。
手心を加える事は出来ませんでした」
リュンピョウが抱拳礼をする。
その姿を見て、ずっと放心状態だったタマがヨロヨロと立ち上がった。
「リオン様、助けていただきありがとうございますニャ。
仰るとおり、リュンピョウの攻撃を防ぐ力は、ワタシには残っていませんでしたニャ」
タマもリオンに向けて抱拳礼をした。
そして今度はリュンピョウの方へ向き直った。
「リュンピョウ、全力で闘ってくれてありがとうニャ。
雷下咬拳・滅、もの凄い技だったニャ。
完敗だニャ」
「タマさん……」
清々しい笑顔をリュンピョウに向けるタマ。
潔く負けを認め、相手を素直に称えるタマの姿は武獣家そのものだった。
「二人とも、また闘いなよ。
今度はお互いに万全な状態でさ」
リオンが二人に向かってそう言うと、タマとリュンピョウはお互いの目を見合わせ頷いた。
「ぜひ!」
力強い抱拳礼がタマとリュンピョウの間で交わされると、それを待っていたかのように、観客席から大きな拍手が二人に降り注いだ。
読んでいただきありがとうございます。
タマ、負けてしまいました。
次回、負けたタマは何を語るのか?
そしてその時仲間たちは?
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