表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコジャRUSH!   作者: ジョン・道
第一章 転移と出会い〜フェリダエ武獣研鑽会まで
4/89

第四集 副作用とトラ


「えーと、なになに。

 摂取は一日一本。空腹時に限るか。

 厳守って書いてある……」


 獣総栄食の袋を読むと、注意書きがちゃんと書いてあった。

 太るとはっきりと書いてはいなかったけど、取り過ぎると栄養過多になり、健康を損ねる場合もあるとあった。

 ちなみにやっつけたサル達は、タマが持っていた薬草で止血して、木陰に寝かせておいた。

 傷は浅くはないけど、武獣家は丈夫だから死にはしニャいとタマが言っていた。


「まいったニャー。

 こんな副作用があるニャンて。

 でも、あんな力を得られるんだから当然かニャ」


「そのうち元に戻るんじゃないかな?

 要は食べ過ぎって事だろうから、大丈夫だと思うけど……」


 でも、どれくらいで元に戻るのだろう?

 一気に太った分、戻る時も一気にかな?

 それとも徐々にか?

 様子を見るしかないか……。


「エノの話だと、サル達は他にもいるのニャ

 いま、そいつらに襲われたらやばいニャ」


「確かに。

 あと十匹はいるんじゃないかな?

 タマが元に戻るまでちょっと隠れてよう」


 何処か隠れられる場所は無いかとあちこちを探す。

 でもタマが動く度に、ドスンドスンと大地が揺れた。

 これでは居場所を教えているようなものだった。 

 拙いなと思っていると、道の向こうに土煙が上がり、正体不明の集団がこちらへと向かってきた。


「あ!」


「やばいニャ!」


 二人してあたふたしていたが、集団の姿が大きくなるにつれてタマの顔に安堵の表情が浮かんだ。


「エノ、安心するニャ! 味方ニャ!」


 やってきたのはトラの集団だった。

 タマが例の、拳と掌を合わせる抱拳礼の形をとって出迎えた。

 僕も一応真似しておいた。

 集団の中には、気を失って捕らえられているサル達の姿も見えた。


虎皇拳こおうけんの方々とお見受けするニャ。

 私は猫爪拳のタマ。

 修行の旅の途中ですニャ。

 皆さんはどうしてこちニャに?」


 虎皇拳と呼ばれたトラ達の中から、一人が前に歩み出てきた。

 タマと同じ様なヒト感の強い見た目だが、黄色と黒のトラの縞模様がくっきりとしていて風格がある。

 彼らのリーダーだろうか。

 腰まで伸びた長い髪と大きな目が印象的だ。

 雌かな? いや、女性と言った方がいいか。

 彼女は抱拳礼を返し、毅然とした態度で話し始めた。


「いかにも我々は虎皇拳の者。

 私はフー。

 この者たちを束ねています。

 我々は豹猟拳の使者から、助力を請われやって来たのです。

 エープのサル共が、フェリダエに侵入してきたのはご存知かな?」


 タマが笑顔で答える。

 よく見るとタマの体が徐々に戻りつつあった。


「私達もサルと闘いましたニャ。

 毒を放つので苦戦しニャしたが、何とか三匹倒しましたニャ」


 フーと名乗ったトラは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になった。

 

「それは重畳。

 三匹という事は、我々が倒した分と合わせると、これで侵入者は全て倒したことになります。

 お二人が倒したというサル共は何処に?」


 フー達をさっきのサル達が倒れている処へ案内した。

 フーが検分したところ、命に別状は無いとの事だった。

 トラ達は改めて手当を施し、三匹のサルを捕らえた。

 捕虜にして情報を聞き出すみたいだ。


「ところで、サル共の胸の傷。

 もしや噂に聞く猫爪波では?」

 

 フーがタマに訊ねる。

 タマが驚いた表情で答える。


「フー様、流石ですニャ。

 猫爪波をご存知ニャんて。

 でも使えたのはホントに偶然ですニャ。

 全然、自分の物にはなっていニャいです」


 タマが頬を掻きながら少し俯く。

 そしてこちらをチラッと見ると、パチっとウインクしてきた。


〈獣総栄食の事は内緒ってことかな?〉


 タマのウインクの意図を自分なりに解釈する。

 確かに神様から貰った特別な物だ。

 誰かれ構わずに触れ回るものでも無いな。


「タマ殿はかなりの使い手のようですね」


 タマの体は完全に元に戻っていた。

 見た目には問題なさそうだが、何かおかしな所は無いだろうか?

 フーに褒められたタマだったが、激しく首を横に振った。


「私などまだまだですニャー」


 フーはタマの肩を励ますようにぽんぽんと叩くと、続いてこちらを向いた。

 フーと目が合う。


「ところで、あなたは?

 見たところネコには見えない。

 体付きを見ても、武獣家でもなさそうだ」


 当然の疑問だ。

 どうする?

 

「僕はエノといいます。

 ヒトという種族です。

 記憶を失い彷徨っていたところ、偶然タマと出会い、行動を共にしていました。

 拳法は全く使えません」


「ヒト? 記憶を……」


 嘘はどうせ見抜かれる。

 正直に答えた。

 違う世界から来たということだけは伏せておいた。

 フーは少しだけ怪訝な顔つきになったが、すぐに表情を緩めた。


「にわかには信じ難い話ですが、私も武獣家のはしくれ。

 言葉の真偽くらいは見抜くつもりです。

 エノさん、あなたは嘘を言ってはいないようですね」


 タマが助け舟を出すように会話に入ってくる。


「エノは私が空腹で行き倒れていた所を助けてくれたのニャ。

 自分の貴重な食料を分けてくれたニャ」


「ふむ……」


 タマの言葉を聞き、考え込むフー。

 他のトラとも話し合っていたが、すぐに僕とタマの方に向き直った。


「お二人、我々はこれから豹猟拳の道場の様子を見に行くのですが、一緒にどうでしょう?

 もちろん、急ぐ旅であれば引き止めはしませんが」


 タマと顔を見合わせる。

 目と目で「どうする?」と会話する。

 よく考えれば、僕たちは別に一緒に旅をしている訳じゃない。

 偶然森で出会い、成り行きでサルと一緒に闘い、って僕は戦ってないか……。 

 そんな事を考えていると、目を合わせていたタマがニコッと笑った。

 そしてタマはフーに向かい、改めて抱拳礼をした。


「フー様、我々二人喜んでお供させていただきニャす」


 フーも拳と掌を合わせる。


「有難い。

 サル共の動きも読めぬ中、勇士は一人でも多い方がいい。

 歓迎しましょう」


 見ると他のトラ達も、フーに倣って拳と掌を合わせていた。

 黄色と黒の縞模様の男女が、ズラッと並んでいる姿はかなりの迫力だった。


「共に豹猟拳の里に行くならば、この者も紹介しておいた方が良いでしょう」


 フーはそう言って、一人の男を呼び寄せた。

 やってきた男はスラリとした長身で、黄色地に黒い斑点の毛で全身覆われていた。

 目頭から口元への黒い線が特徴的で、二足歩行だがそれを除けばいわゆるチーターそのものだった。


「お初にお目にかかる。

 豹猟拳のゲパと申す。

 お力添え感謝いたす」


「猫爪拳のタマだニャ」


「エノです」

 

 互いに挨拶を交わすと、ゲパはすぐに下がった。

 入れ替わるようにフーが再び前に出る。


「闘いの後で疲れているとは思いますが、急がなければいけません。

 すぐに出発しようと思うが大丈夫ですか?」


「もちろんですニャ。

 これもまた修行ニャ」

 

 フーは微笑むと「適当に付いてきてくれ」と言って、トラ達の先頭にゲパと一緒に立った。

 ふとタマを見ると、こちらを向いて申し訳無さそうにしていた。

 どうしたのだろう?


「エノ、勝手に決めてごめんニャー

 大丈夫かニャ?」


 それを気にしていたのか。

 タマはホントに良いやつだ。


「大丈夫!

 なんのあても無かったからむしろ助かったよ」


 そう言うとタマの顔がパッと明るくなった。


「それにまだお礼を言ってなかった。

 タマ、助けてくれてありがとう」


「何を言うニャ!

 こちらこそだニャ」


 タマは慌てて首を横に振り、照れくさそうにしている。


「でも、豹猟拳の里って遠そうだけど、どうやって行くの?

 急ぐって、まさか走っていくんじゃ……」


「そりゃあ走っていくニャ。

 他の方法なんか無いニャ」


 思わず絶句してしまうが、よく考えれば彼女らはネコやトラだ。

 わざわざ乗り物なんかに乗る訳無い。

 でも僕は、そんな長距離を走り続けるなんて無理だ。

 どうしようかと思っていると、タマが僕の不安を察した様に肩をぽんと叩いてきた。

 

「心配ない!

 こーすればいいニャ!」


 タマはそう言うと、僕をひょいと持ち上げ背中へ乗せた。

 

「ええ?! タ、タマ!

 重たいよ! 無茶だよ!」


「大丈夫! これも修行ニャ!」


 フーが「行くぞ!」と号令をかけ、トラ達がドドドっと一斉に走り出す。

 その集団をタマの背に乗って後ろから追いかけた。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ