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ネコジャRUSH!   作者: ジョン・道
第一章 転移と出会い〜フェリダエ武獣研鑽会まで
39/89

第三十八集 兄と妹 その二


「やったニャー!!」


 空中で喜びを爆発させるタマ。

 だがその喜びも束の間、タマはそのまま空中で気を失った。


「あっ!」


 真っ逆さまに落ちていくタマ。

 このままじゃ闘技場の石の床に頭から激突してしまう。

 どうしようとあたふたしていると、金色の風が吹いてタマの体を優しく受け止めた。

 ふわりと着地したそれは、金髪に王者の風格、フェリダエそして獅子爪牙拳の主、リオンだった。

 気を失ってるタマを抱えたリオンは、審判席に座っているアムに向かって言った。


「アム、この娘面白いかも」


「でしょ?

 あんまりカワイイから、トラじゃないのに色々教えてあげちゃったわ〜」


 アムが椅子に腰掛けたまま、リオンに向かってウインクした。


「アムから教わる事って……。

 なんだか不安ね」


「ちょっと何よ〜。

 失礼しちゃう!」


 アムはそう言うと椅子から飛び出し、闘技場の上のリオンの下へ宙返りして降り立った。

 目の前に現れたアムにリオンが微笑みかける。


「でも分かるかも、アムの気持ち」


「アンタを動かすなんて、タマちゃんもいよいよ本物ね」


 タマとミケの壮絶な闘いも然ることながら、突然現れたフェリダエ二大巨頭に観客席は騒然としていた。

 その間に虎皇拳のトラたちによって、ミケが担架で運ばれていった。

 それを見届けたリオンが、タマを抱えてこちらへとやって来る。

 目の当たりにしたその風格に、上手く言葉が出てこない。

 流石のレサも顔に冷汗をかいている。


「あ、あの、リオンさん。

 タマを助けてく、くださって、ありがとうございます」


 僕が詰まりながらも言うと、リオンは黙ったままタマの体を差し出した。

 リオンの腕からタマを受け取る。

 そこでようやくリオンが少しだけ表情を崩した。


「アムにも言ったんだけど、この娘面白いよ。

 明日も見たいけど、この様子だと……。

 まぁ早く休ませてあげなよ」


「あ、ありがとうございます」


 タマを抱えたまま改めて頭を下げる。

 レサは抱拳礼をしていた。

 それを見たリオンは踵を返し、自分の席へと戻っていった。

 リオンと入れ替えにアムがこちらへやって来る。


「エノちゃん、早くタマちゃんを道場へ連れていきなさい。

 獣力の使いすぎだから、とにかく休ませるしかないわ」


「わ、わかりました」

 

 僕が頷くとアムも審判席へと戻っていった。

 

「レサ急ごう」


「うん……」


 タマを背中に背負って、レサと二人駆け足で虎皇拳の道場へと向かった。

 

 ■


「ニャ?」


「あ! タマが起きた!」


 ミケとタマの激闘から半日が経った。

 夕食も食べ終わって、夜も更けた頃にタマがようやく目覚めた。

 目覚めたタマは慌てた様に布団から体を起こした。


「! 痛たっ!」


「大丈夫!?」


 胸を押さえるタマ。

 ミケの蹴りをまともに受けた所だ。

 蹲ったタマが、苦笑いをしながらこちらを見た。

 

「大丈夫ニャー。

 ここは虎皇拳の道場かニャ。

 エノが運んでくれたニャ?

 ところで研鑽会はどうなったニャ?」


「うん、僕らもタマの試合の後の事はフーさんに聞いたんだけど……」


 タマの試合の後、リバが八強入りを決めたらしい。

 リバの気合は凄まじく、長い付き合いのゲパも驚くほどだったという。

 タマの試合に刺激を受けたからだとゲパは言っていた。

 相手は長い牙を持った"虎牙拳こがけん"の使い手だったが一蹴だったとか。

 次はリバ対クーニャンの道場主対決だ。

 一武獣家ファンとして絶対に見逃せない試合だ。

 あとは雪尾拳のシュエ、そしてライが勝ち進んだ。

 

「エノ、それと……」


「お兄さんだね?

 怪我とかは大したことないって。

 妙に大人しかったって、フーさ……えっ?」


「邪魔するぞ」


 僕らの部屋にノックもせずに急に入ってきた男。

 それはまさかのタマの兄、猫爪拳代表ミケだった。

 道着の下からは包帯が見え隠れしていた。


「ニャニャ!

 兄さん!?」


「全くいつまで寝ているのだ。

 待ちくたびれたぞ」


 聞くとしばらく前から部屋の前にいたらしい。

 話し声が聞こえたから入ってきたのだとか……。

 相変わらず横柄というかなんというか。

 タマがそんなミケを真っ直ぐに見つめて言った。


「兄さん、あれがワタシの拳ニャ。

 旅をして、色んな方との出会いの中で身につけた拳ニャ」


「ふん。

 確かに猫爪拳にいた頃よりはマシになったな」


 負けたくせに随分なもの言いだとも思ったが、これでもミケなりに褒めているのかもしれない。

 タマもそれが分かってるのか、優しく微笑んでいた。


「もちろんワタシの土台は猫爪拳。

 兄さんの背中を追っていた日々ニャ。

 でも今は誰の背中も追っていニャい。

 ワタシはワタシの道を歩くニャ」


「生意気な事を……」


 そう言ってミケは悪態をつくが、その顔は言葉に似合わず穏やかだった。


「ワタシは拳法が好きニャ。

 武獣家として生きるのが好きニャ。

 単純にそれだけの話かもしれニャいニャ」


「ふん、私と一緒ではないか」


 照れ隠しなのか、ミケはそっぽを向いてそう言った。

 そんなミケを見て、タマはどこか嬉しそうだった。


「タマ、今回はまぐれとはいえ勝ちを譲った。

 だが、そんな奇跡は二度と起きん。

 同じ武獣家として今後お前には絶対に負けんぞ。

 覚悟しておけ」


「同じ武獣家……」


 ミケが改めてタマの事を一武獣家として認めた。

 タマの目に涙が滲む。

 でもタマは、それを見られまいと頭から布団を被った。

 布団を被ったままタマが言う。


「あれをまぐれだと思ってるニャら、兄さんも大したことニャいニャ!

 次もワタシの勝ちみたいだニャ!」


「ふん、減らず口を」


 そう捨て台詞を吐いて、ミケは出口の方へ向かった。

 そのまま出ていくかと思ったが、不意にこちらを振り返った。


「タマ、父と母が心配している。

 時々でいいから手紙を出せ。

 分かったな?」


「分かったニャー」


 ミケが客間を出ていった。

 別れ際に見せた二人の姿は、紛れもなく兄妹そのものだった。


読んでいただきありがとうございます。


リオンの見た目や話し方は、ギャルっぽい感じをイメージしています。

表現力に乏しく伝わっていないかもしれませんが……。


次話はあいつ等が再登場です。

よろしくお願いします。



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