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ネコジャRUSH!   作者: ジョン・道
第一章 転移と出会い〜フェリダエ武獣研鑽会まで
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第三十六集 運命の兄妹対決ニャ!


 夜中にふと目が覚めた。

 真っ暗だったが、次第に目が慣れてきた。

 周りが見えるようになると、壁にかかったカバンに入って、鼻提灯を膨らませているレサの姿が目に入った。

 続いてタマの布団に目をやると姿が見えなかった。

 また変な所で寝てるのかと思って辺りを見渡したけど、どうやらこの客間の中にはいない様だった。

 

〈タマ……〉


 心配になったので、客間を出てタマを探す。

 何となく道場の方へ行ってみると、道場の真ん中で正座しているタマの姿があった。


「こんなところまで来ちゃうなんて、タマは寝相が悪すぎるよ」


 近づいて冗談っぽく言うと、タマは閉じていた眼を開け、ニコっと笑った。


「明日の事を考えると眠れニャくって……」


「お兄さんの事?」


「ニャ」

 

 タマがゆっくりと頷く。

 表情が少し固いけど、何処か穏やかな顔をしていた。


「やっぱりお兄さんに勝ちたいの?」


 そう言うとタマは、今度は首を横に振った。


「勝ち負けとかそんなんじゃニャいニャ。

 ただ、知ってほしいだけニャ」


「知ってほしい?」


 タマは上を向いて、何かを思い出しているようだった。

 タマが続きを語る。


「兄さんは拳法の天才だったニャ。

 ワタシはそんな兄に憧れて、猫爪拳の道場に通うようになったニャ」


「うん」


 何となくそんな気はしていた。

 ミケのあの態度は挫折を知らないって感じだった。

 実の兄で天才か、憧れるのも無理もない。


「兄を超えたい。

 その一心でずっと頑張ってきたニャ。

 でもエノを初め、オネーさん、ゴウリ師匠、それにレサ。

 色んな出会いが教えてくれたニャ。

 武獣家って、誰かを超えるとかそんなんじゃニャいって」


「タマ……」


「エノが前に話してくれたニャ。

 自分で道を選んだら心が自由になったって。

 ワタシも同じ気持ちニャ。

 もう兄さんを超えたいなんて気持ちは無いニャ。

 ワタシはワタシの道を歩き出した。

 逃げ出したとかそんなんじゃニャいと。

 それをミケ兄さんには知ってもらいたいのニャ」


 武獣家を目指すきっかけにもなった、たった一人のお兄さん。

 やはりその存在は特別だ。


「分かってもらえるといいね」


「そうだニャ……」


 それから、その為にはちゃんと寝ようという事になり、二人で一緒に客間へと戻った。

 

 ■


 フェリダエ武獣研鑽会。

 二日目も初戦を飾ったのはこの男だった。


「虎皇拳ワンフー!」


「ほほー!」


 相手は一回戦で、ターチを破った雷下咬拳スンピョウ。

 ワンフーはその巨体に似合わない素早い動きを見せた。

 上から来る雷を、全て躱しきる事は流石に出来なかったが、上手く致命傷を避けていた。

 最後は、繰り返しの攻撃で一瞬疲れを見せたスンピョウを、ワンフーがその巨体で押し潰した。


圧死虎傘あっしとらさん!」


 ワンフーに押し潰されたスンピョウの姿を見て、タマと僕は青い顔になった。


「あの技だけは喰らいたくニャい……」

 

「確かに……」


 その後も二回戦は進み、八強入りの猛者が次々と決まっていった。


━━雪尾拳ハク

━━雷下咬拳最後の一人リュンピョウ


 そして遂にその時がやって来た。


「タマ、いよいよだね」


「ニャ」

  

 待機場所で出番を待つタマは口数は少なかった。

 でも緊張してるって感じでもなく、静かに闘志を燃やしている様子だった。

 ミケは闘技場を挟んで反対の位置で待機している。

 あえてなのか、タマはそちらを全く見ようとはしなかった。


「猫爪拳代表ミケ!」


 リースに呼び込まれ、先にミケが闘技場へと上がる。

 その時になって初めて、タマはミケの事を真っ直ぐに見つめた。


「対するは主催者推薦タマ!」


 タマが僕らに向かって掌を向ける。

 僕とレサも、自分の掌をタマの肉球に合わせた。

 

「タマ、やってやれ」


「頑張れ!」


「いってくるニャ!」


 僕らの言葉にニコっと笑って答えたタマは、ゆっくりと闘技場へと上がっていった。

 

「それでは始め!」


 リースの合図でタマは抱拳礼をして構える。

 しかしミケは後ろ手に組んだまま、中々構えようとはしなかった。

 皆が不思議に思っていると、ミケが徐ろに口を開いた。


「タマよ、武獣家を諦めていないというのは本当だった様だな」


 ミケがそう言うと、タマは構えたまま答えた。


「当たり前ニャ。

 そうでなきゃここに立ってないニャ」


「ふん、生意気を言う。

 とはいえ、お前が猫爪拳から逃げ出したのは事実だ。

 私はお前を武獣家だとは認めんぞ!」


 ミケか高圧的に言うと、タマが怯んだように見えた。

 でもそれもほんの一瞬で、タマの背中には強い意志と自信が漲っているように見えた。


「逃げ出したんじゃニャい!

 自分の道を歩き出したのニャ!

 ワタシは今までもこれからも、ずーっと武獣家ニャ!」


 タマが気迫を込めてそう言うと、今度はミケが少し怯んだ様に見えた。

 

「この闘いでそれを証明するニャ!

 構えるニャ! 兄さん!」


「ふん! やってみろ!」


 ようやくミケが組んだ手を離し構えた。

 それを見てタマが早速仕掛ける。


「回転ネコ波无智!」

 

「いきなり大技!」


 回転しながらミケに向かっていくタマ。

 以前見た時より回転も、向かう速さも数段上がっていた。


「ほう……」


 だがミケは慌てる事なく、最小限の動きで躱してみせた。

 大技を躱されてしまったタマだったが、回転を止め着地すると、ミケへとまたすぐに向き直った。


〈前はザッサーって転んでたのに……〉


 タマの成長を改めて感じていると、今度はミケが仕掛けた。


「お前にこれが躱せるか!

 猫爪連撃びょうそうれんげき!」


 ミケの両手両足を駆使した連続攻撃。

 とてつもない速さだ。

 追いこまれるタマだったが、それでも何とか躱している。

 以前のタマなら絶対に無理だったはずだ。


「タマの体の動き、前より何か自然に見える……」


 僕がボソッと呟くと、レサがそれに反応した。


「"受け"の自信が付いたから。

 それまではきっと、躱さなきゃ、身のこなしを上手くやらなきゃって、体が硬くなってた。

 それでどんどん深みにはまってた」


「その気持ちわかるな」


 上手くやろうとすればするほど、緊張して体が動かないっていうのは僕にも経験がある。

 といっても具体的には全然思い出せないけど……。


「でも、今のタマには肉球の受けがある。

 その心の余裕が自然な動きに繋がってる……」


「レサってほんとにスゴイね」


「これくらい朝飯前ゴリ」

 

「なぜゴウリさん……」


 目にも止まらぬ攻防を続けていた両者だったが、タマがバク転を繰り出した事で間合いが空いた。

 今度は構えたまま、ミケが驚いた顔で口を開く。


「タマが私の猫爪連撃を躱すだと……。

 あのいつも尻もちをついていたタマが……」

 

「だから言ったニャ!

 以前のワタシじゃニャいって!」


 タマが得意気な顔をして言う。

 そんなタマの顔を見て、ミケの顔は真っ赤になった。


「いい気になるなよ……」


読んでいただきありがとうございます。


始まりました兄妹対決。

次話はその続きになります。


よろしくお願いします。


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