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ネコジャRUSH!   作者: ジョン・道
第一章 転移と出会い〜フェリダエ武獣研鑽会まで
35/89

第三十四集 対するは大耳拳カル! 


 大会も順調に進み、一回戦も第七試合まで終わった。

 タマの兄で猫爪拳代表のミケは、タマに対して尊大な態度を取るだけの事はあり、第七試合で対戦相手を一蹴した。

 試合が終わったばかりなのに、涼しい表情で闘技場を後にするミケ。

 待機場所で出番に備えていた僕らの事は、一瞥もせず去っていった。


〈余裕って感じかな……〉


 ちなみに僕とエノも、タマと一緒に闘技場の側で控えていた。

 大会の規定で出場選手には、介添人が一人二人付いても良いという事になっていた。

 もしかしたらフーが、僕らの事を考えてくれたのかもしれない。

 いや、それは自意識過剰ってやつか……。

 ミケに無視された形になった僕らだったけど、タマもあえてなのか、ミケの試合を見ることはなかった。

 そしてミケの試合が終わったという事は、次はついに我らがタマの出番だった。

 

「次が前半戦最後の試合になりまーす!

 まずは主催者推薦タマ!」


 進行役のリースがタマを呼び込む。


「タマ! 頑張って!」


「タマー……」


「ニャ!」

 

 闘技場へと足を踏み出したタマの背中に、僕とレサで声をかけるとタマは元気よく応えた。


「対するは大耳拳カル!」


 続いて対戦相手のカルが登場する。

 大きな耳にふさ毛、相変わらず特徴的な耳だ。

 タマとカルが闘技場の上で向き合い、抱拳礼を交わすと互いに構えた。 

 いよいよタマの闘いが始まるとドキドキしていると、カルが構えたままタマに声を掛けた。


「タマ、全力でいくぞ!

 主催者推薦、楽しみにしてるぞ!」


「肩書きニャんてどうでもいいニャ!

 カル! 負けないニャ!」


 互いに言い終わると、タマがカルに向かって飛び出した。

 両手の爪を出し、タマが仕掛ける。


「ネコ波无智パンチ!」


 両手を振るい、タマが連続攻撃を繰り出す。

 

「いいぞ! タマ!」


 しかし、それらは見事に全て躱された。

 タマの攻撃も鋭いと思ったけど、カルの身のこなしもかなりのものだ。


「むっ……」


 レサが珍しく難しい顔をして唸る。


「レサ?」

 

「いや……」


 その後もタマが猛攻を仕掛け、それをカルが躱す形が続いた。

 それにしても尽くタマの攻撃が躱される。

 まるで動きが読まれてるみたいだ。


「へっへー!

 おい! どうしたタマ!

 こんなもんか!」


 カルが逆立ちをしながらおどけた様に言うと、タマは地面をドンドンと踏みつけて悔しがった。


「ニャー!

 まだまだニャ!」


 タマがカルに向かって突撃する。

 カルはそれをヒラリと躱し、右足で一撃を加えた。

 

「ほい!」


「ニャが!」


 だがカルの攻撃は当りが浅かったようで、ダメージは大したことない感じだった。

 一旦離れた両者は、そのまま間合いを取り、相手の出方を窺っている。


「分かった……。

 あの耳だ……」


 レサが突然呟く様に言う。


「耳?」


「多分カルは異常に聴覚が優れているんだ……。

 タマが動き出す時の、微妙な擦れの音で動きを察知してる……」


 そんな事が出来るのか……。

 流石武獣家、凄い世界を生きている。


「レサもスゴイね。

 まるで武獣家だ」


「ナメんなよ……」


 レサが鼻息荒くし、胸を張る。

 つい冗談っぽく言ったけど、レサもれっきとした武獣家なんだ。


「でもその事、タマは気づいてるのかな?

 もし気づいていてもどうすれば……」


「大丈夫、ワタシに策がある……」


 レサの目がピカンと妖しく光る。

 何か良からぬ事を考えてるんじゃ……。

 しばらく様子を窺っていた両者だったが、今度先に動いたのはカルだった。


「しゃあ!」


 カルも爪を出し、タマに向かって振るう。

 たがタマも上体を反らして躱す。

 するとカルは体勢を低くして、タマの懐に潜り込もうとしてきた。

 その時、レサの目がカッと見開いた。


「タマ! ゴウリ様の真似ー!」


「!? ウホウホウホー!!」


 初めて聞いたレサの大声に、タマが思わずといった形で反応する。

 タマは胸を手のひらでバンバンと叩きながら、大猩樹に届けとばかりに大声でウホウホと叫んだ。


「うるさーい!!」


 それはかなりの声量で、少し離れた僕でも耳を塞ぎたくなるくらいだった。


「これぞ大猩模倣騒ゴウリのモノマネ!」


 レサは何故か平気なようで、腕を組み得意な顔をして言う。

 いつも眠そうな目がバキバキだ。

 

「ギャー!」


 懐に潜り込み、タマの顎を正確に捉えようとしていたカルだったが、耳をつんざく大声を出され、思わず両手で耳を塞ぐ。

 そのためカルの胴体はがら空きとなった。


「隙ありニャー!」


 タマは右腕を大きく後ろに引くと、カルの土手っ腹めがけ掌を思いっきり打ちつけた。


「肉球掌底!」


 がら空きの腹に肉球の掌底を受けたカルは、闘技場の場外へと吹き飛ばされた。

 砂埃を立て地面に倒れたカルは、目を回し微動だにしなかった。

 それを見たアムが右手を上げて叫んだ。


「勝者タマ!」


「ニャーー!!」


 雄叫びを挙げて両手でガッツポーズをするタマ。

 僕とレサがタマに駆け寄り飛びつく。


「タマーー!!」


「タマ、ナイス……」


 涙が止まらない僕と笑顔のタマ。

 レサはいつもの眠たそうな顔に戻っていたが、何処となく嬉しそうに見えた。


〈あれはアタシの"愛・アム・レディ"……。

 流石タマちゃんね。

 アタシとゴウリちゃんが見込んだだけの事はあるわ〉


 喜ぶ僕らを見て、アムの口元が少しだけ綻んだ。


読んでいただきありがとうございます。


タマ、一回戦突破です。

次話は初戦の感想戦?です。


よろしくお願いします。

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