第三十三集 ついに開始ニャ! フェリダエ武獣研鑽会!
「はっ!」
「ぬん!」
いよいよフェリダエ武獣研鑽会が始まった。
初戦を飾ったのは、虎皇拳から唯一出場しているワンフーだった。
ちなみにワンフーはフーの弟で、フーに並んで腕が立つらしい。
初戦でもその力を遺憾なく発揮して、梅花拳の某という豹の武獣家を一蹴した。
「ほほー!」
ワンフーの勝利の雄叫びに、観客席からも大きな声援と拍手が贈られた。
観客席は満員で、もちろん応援に来た各道場の門下の武獣家達も多かったが、道着を着ていない者もたくさん見られた。
観客席は初戦から凄い盛り上がりだった。
「ワンフーさん、めちゃくちゃ強い!」
「ニャー!」
僕とタマも豹猟拳の応援団に混ざって、観客席から初戦を見ていた。
「ワンフーの奴、また腕を上げたなー!
もうフーより強ぇーかもなー」
「レベルが高すぎる……。
留守番してれば良かった」
ワンフーの圧倒的強さに、ゲパは顔色を失っていた。
「おい見ろ! ターチの奴が出てきたぞ!」
リバが指差す先を見ると、ターチが闘技場に現われたところだった。
対峙するのは雷下咬拳のスンピョウとかいう武獣家だった。
「スンピョウか。
うーん……」
リバが腕を組み考え込む。
「そういえばリバさん達は雷下咬拳と交流があるんでしたね?」
「ああ。
ターチとスンピョウも手合わせしたことがあるよ。
その時は互角だったけどな。
あれからお互いに腕を上げてるだろうし、わかんねーな」
闘技場の二人が抱拳礼を交わし、試合が始まった。
先に仕掛けたのはスンピョウだった。
「出た!
雷下咬拳!」
空高く飛び上がったスンピョウが読んで字の如く、雷のようにターチに上から襲いかかった。
「空中で加速したニャ!」
雷となったスンピョウの攻撃をターチが間一髪で躱した。
その後もスンピョウの雷下咬拳を、ターチが何とか躱すという構図が続いた。
ただターチも躱してばかりという訳ではなく、躱しばなに攻撃を仕掛ける。
しかしスンピョウも、すぐに飛び去りスキを見せない。
一進一退の攻防だったが、ターチが次第にスンピョウの攻撃のタイミングを掴んだようで、落ちてくるスンピョウの雷に合わせてカウンターを仕掛けた。
「ああ! バカ!
ダメだ!」
リバが立ち上がり叫んだが遅かった。
リバが叫んだ時には、スンピョウの牙がターチの肩を完全に捉えていた。
「ぐぉぉぉ!」
「それまで!」
ターチが膝を着いたところで、アムの野太い声が響いた。
闘技場のすぐ側にいるなーと思っていたら、審判をやっていたのか。
「あれ? ターチさんまだやれるんじゃ?」
咬まれたターチだったが、肩からは出血もしていない。
戦闘不能という感じでは無かったので、アムが試合を止めたのは意外だった。
「ありゃ牙に被せを着けてるんだ。
雷下咬拳みたいな一撃必殺の技は、手合わせの場合は致命傷を与えないように工夫されてるんだ。
研鑽会に来て、武獣家生命を断たれたんじゃ元も子もないからな。
でも、本当の戦闘ならあれで終わりさ。
アムねーちゃんが止めたのも当然だ」
確かにこの大会は殺し合いじゃない。
あくまでも互いに研鑽するのが目的だから、その辺の配慮は不可欠だ。
「それにしても、ターチさんのカウンターは完璧なタイミングだと思ったニャ!
ニャンで決まらなかったニャ?」
「うむ……。
私も完璧だと思った」
タマとゲパが揃って首を捻る。
するとリバが、その様子を見て高笑いをした。
「アーハッハッ!
まだまだだな、お前ら!
あれはスンピョウが意図的に、技の速度をほんの少しづつ遅くしてたのさ!」
「ニャんとー!」
「まさか……」
タマは目を丸くし、ゲパは口を半開きにして唖然としていた。
「あからさまに遅くしたら、相手にバレるけどな!
絶妙に技の速度を落した事で、ターチは相手の攻撃に慣れてきたと思っただろうな。
でもそれはスンピョウの罠さ。
スンピョウは、ターチの呼吸からカウンターを仕掛けてくるのを感じて、ここぞと最速の雷下咬拳を出してきやがった。
だからターチのカウンターは一歩遅れたのさ」
「そう……。
リバ様の言う通り……」
レサが観客席で立ち上がり、腕を組んで言う。
風はほとんど吹いていないのに、レサの髪がなびいていた。
「レサ、ズルいニャ」
「ズルい」
僕らにそう言われても、レサは澄ました顔をしていた。
相変わらずいい度胸をしている。
「それにしてもリバさん、スゴいですね!
それをここから見抜いたんですか?」
「あったり前だ!
伊達に道場主やってねーよ!
アーハッハッハ!」
僕がそう言うと、リバは腰に手を当てて、改めて高笑いをした。
「あのスンピョウの罠に気付けるようになったら一流だな!
お前らも精進しろよ!」
「はっ!」
「ニャ!」
タマとゲパが同時にリバに抱拳礼をする。
「そう……。
リバ様の言う通り……」
レサがまたしても胸を張って言うと、タマが呆れ顔で言い返した。
「レサはリバ様より先に言ったら認めてやるニャ」
「それは無理……」
「不正を認めた!」
それでもレサは何処か偉そうに、観客席の上で腕組みして立っていた。
そして相変わらず、風も無いのに髪がなびいていた。
〈一体、なぜ……〉
闘技場ではスンピョウとターチが、お互いの健闘を称え合っていた。
読んでいただきありがとうございます。
ついに開幕しました!
次話はタマの初戦です。
よろしくお願いします。




