第二十七集 唐突ニャ! 修行の終わり!
「タマ! 惜しかったゴリ!」
「はいですニャ! 師匠!」
ウー大師の技を受けきれなかったタマだったが、何かを掴んだようだ。
表情は明るかった。
「大師、ありがとうゴリ」
「ありがとうございますニャ」
ゴウリとタマが揃ってウー大師へ抱拳礼をする。
ウー大師は首を横に振ると、掌を上に向け差し出し、二人に礼を解くよう手で示した。
抱拳礼を解いたゴウリがタマに向き直る。
「タマ、お主は速さもあるゴリ。
そして何より、獣力の量は並大抵のものではないゴリ。
それを活かして質より量で攻撃を防ぐゴリ。
柔弾肉球の基本はバッチリだから、微妙な獣力の加減は考えなくても大丈夫ゴリ。
それを体で覚えるために、大師に協力を仰いだゴリ」
「おかげ様でニャんか分かったような気がしますニャ」
タマが今度はゴウリにも抱拳礼をする。
ゴウリはそれを見て、大きく頷いた。
「よしゴリ!
ではこれで儂との修行は終わりゴリ!
今までよく頑張ったゴリ!」
「ニャんと!」
ゴウリの突然の修行終了の言葉に、タマは唖然とし眉尻を下げた。
ゴウリはそんなタマに向かってニカっと笑うと、自分の胸を掌でバンバンと叩いた。
「サルじゃない、ネコに教えるということで儂も勉強になったゴリ。
初めは面倒だと思ったゴリが、中々どうして楽しかったゴリ!
ウホウホウホー!」
「ニャ!」
ゴウリの豪快な励ましを受け、タマに笑顔が戻る。
それを見たゴウリは胸を叩くのをやめ、腕を組むとドカッと座り込んだ。
「儂がここまでやってやっただけでも大サービスゴリ!
これ以上は贅沢というものゴリ。
あとは自分で何とかするゴリ!」
「はいですニャ!」
元気よく返事をするタマ。
落ち込んだのは一瞬だった。
いつもの明るいタマにすっかり戻っている。
「精進するゴリ。
タマ、お主なら使えるかもしれないゴリ。
あの伝説の……」
「伝説の……」
その場にいた全員がゴクリと唾を飲み込む。
「百肉球壁を!!」
「百肉球壁ーー!!」
ゴウリが目を"くわっ"と見開いて言った。
なんだか凄そうな技の名前に、思わず叫んでしまった。
レサなんかは掌を頬に当てて、顔を細長くして叫んでいた。
なんか、見覚えがある顔だな……?
「百肉球壁って技、大師ご存知ですか?」
僕が訊ねると、大師は首を横に振って答えた。
「いえ、国内外のあらゆる流派に精通する私でも聞いたことがありません」
大師がうーんと首を捻ると、それを見たゴウリが「ウッホッホー」と悪戯そうに笑った。
「いやー、すまんゴリ!
伝説なんて嘘ゴリ。
儂が考えた名前ゴリ」
おちゃめなゴウリに一同笑顔だ。
「ふふふ、ゴウリ様も"サル"が悪いですね」
真剣に考えていたウー大師も余裕の笑顔だった。
流石に大師と呼ばれる事だけのことはある。
と思ったら、こめかみがピクピクと動いていた。
〈キレてたのかい……〉
「百肉球壁!
かっこいいニャ!
気に入ったニャ!
師匠、必ず完成させてみせるニャー!」
タマが目をキラキラとさせてそう言うと、ゴウリも心底嬉しそうに「ウホ!」と笑った。
全くタマは"人たらし"ならぬ"何たらし"だ?
"ケモノたらし"なんだから。
「よしゴリ!
じゃあ大猩樹に戻るゴリ。
明日はタマ達のお別れの宴ゴリ!」
「ニャー!」
「オー……」
「え?」
タマとレサが、拳を上に突き上げる。
返事はバラバラだったが動きは揃った。
ところで今、お別れって言った……?
「ちょ、ちょっと待って下さい!
お別れ?
僕の、僕の修行はどうなっちゃうんですか!?」
僕の抗議を聞いたウー大師が、つかつかとこちらへ歩いてくる。
そして僕の前まで来ると、徐ろに僕の両肩に手を置いて微笑んだ。
「君に教えることはもうありません」
「うそつけ!」
大師は僕の肩をぽんぽんと叩き、ニコっと笑うとその場を去ろうとした。
慌てて大師の腕を掴む。
そんなので誤魔化されはしない。
「待て待て。
大師!
僕はまだ砂塵障壁の練習中ですよ!」
「砂塵障壁って棒を回すだけですからね。
教える事って正直無いんですよ」
「そんなぁ……」
僕ががっくりと肩を落とすと、ウー大師が腰に手を当て、しょうがないと大きく息をついた。
「わかりましたよ。
明日、宴の前に最後の助言を贈りましょう」
「ホントですか!」
もっと修行を続けたいというのが本音だけど、実をいうと研鑽会の日程も迫ってきていた。
最後の助言を受けて、砂塵障壁は自力で習得しよう。
「話はまとまったようゴリな。
じゃあ大猩樹に帰るゴリ。
明日の宴に備えて、今日はゆっくり休むゴリ!」
「オー!」
タマが僕らに合わせてくれたので、今度は声も動きもぴったり揃った。
読んでいただきありがとうございます。
百肉球壁が完成する日は来るでしょうか?
次話もよろしくお願いします。




