第二十六集 ゴウリの課題は激ムズニャ!
「おや?」
「おーい! エノにゃ〜い、レサにゃ〜い」
48の護身技の一つ、砂塵障壁の練習をしていると、タマとゴウリがやって来た。
「ウー大師、修行の邪魔してすまんゴリ!」
「いえいえ、ゴウリ様ご機嫌麗しゅうございます」
「ご機嫌う△□◎✕◯◇☆/ます……」
〈前より言えてない……〉
ウー大師がゴウリに挨拶したのを聞いて、レサも対抗して挨拶したが、相変わらず上手く言えてなかった。
「エノ、レサ!
聞いてくれニャ!
ついに肉球で攻撃を受ける技、"柔弾肉球"が出来るようになったニャ!」
「おおー!
タマ、やったね!」
タマはレサの両手を取り、「やった、やった」と上下に振り回している。
レサは「うわぁぁぁぁ……」と、されるがままだ。
「エノ、その棒でワタシに打ってくるニャ!
思いっきりニャ!」
タマに言われ、ウー大師をチラッと見る。
大師がコクリと小さく頷いた。
「分かった! じゃあ早速行くよー。
ほっ!」
タマの言う通り全力で振りかぶって、タマの頭めがけて棒を振り下ろした。
タマが頭を守るように、右手の掌の肉球でそれを受ける。
すると、棒は確かに当たったはずなのに、ポヨンとしてて手ごたえが全く無かった。
不思議な感覚だった。
「思いっきり打ったのに、何も打ってないみたいだ……。
タマ、すごいよ」
「衝撃を完全に吸収したニャ。
でも、本当は跳ね返すつもりだったニャ。
獣力の加減を微妙に間違えたニャ」
「タマは繊細な力加減は向かないゴリ。
それより豊富な獣力を利用した力技がいいゴリ。
そこで一つ、ウー大師に頼みがあって来たゴリ」
「ほう、私に頼みですか?」
タマの技を見て拍手をしていたウー大師が、意外といった表情をする。
ゴウリもそれに気がついた様だったけど、構わずに続けた。
「大師が武獣家に興味が無いのはわかってるゴリ。
ただ一回だけでいいゴリ。
タマに一度に何発も攻撃を加える、同時攻撃をしてほしいゴリ。
儂がやると、一発が重すぎるゴリ」
「同時攻撃ですか、ふむ……」
手を後ろに組み、地面を見つめる大師。
しばらくそうしていたが、やがてゆっくり顔を上げた。
「良いでしょう。
他ならぬゴウリ様の頼み。
それにタマ君は私の一番弟子、エノ君の相棒とも呼べる存在。
特別にやって差し上げましょう」
ウー大師はそう言って長く茶色い髪を掻き上げた。
いちいち気取った感じになる事に、僕らはもう慣れてしまっていた。
でもタマは、胸焼けを起こしたような顔で苦笑いだった。
「ちょうど良い技があります。
十発の攻撃を同時に加える技です。
エノ君も良い機会なので、しっかり見ておいてください」
「じ、十発ニャー!
受けきれるかニャ?」
「タマ、一つ一つを完璧に受ける必要はないゴリ。
獣力と速さと肉球で、とにかく攻撃を防ぐゴリ」
不安そうに冷汗をかいていたタマに、ゴウリがアドバイスを送って落ち着かせる。
極度の面倒臭がりとか言われてたけど、やると決めたら面倒見はいいみたいだ。
「行きます」
「ニャ……」
ウー大師がいつもの棒を背中から出す。
大丈夫だろうか?
もしタマが防ぎきれなかったら、大怪我するんじゃないかと心配になる。
「十閃棒!」
ウー大師が叫ぶと、タマに棒の雨が降りそそぐ。
タマは両の掌をおでこの辺りで正面に向け、そして円を描くように素早く動かす。
〈肉球の壁だ!〉
ぽよぽよぽよーんと、間の抜けた音が森に響いた。
その音を聞いて、タマが全て受けきったかと思ったが、よく見ると大師の棒がタマのおでこを捉えていた。
「タ、タマー!」
大流血でぶっ倒れるかと思ったが、タマは目をパチクリさせて立ったままだ。
「痛くニャーい」
「当然。
本物の棒で殴ったら死んでしまいますから。
これは模擬棒。
多少の重みはありますが、柔らかい素材で出来ています」
良かった。
流石ウー大師、ちゃんと考えてくれていた。
でも……。
「大師、背中に棒、何本入ってるんですか?」
「それは聞かない約束です」
大師は模擬棒を体の左右や頭の上でグルグルと旋回させると、最後に脇に挟んでビシッと"決め"をした。
すると、レサがトコトコとウー大師の隣にやって来て、大師の持つ棒の先に自分の頭を当ててニヤリと笑った。
「痛くニャ〜い……」
それを言いたかっただけか……。
読んでいただきありがとうございます。
タマはメキメキと成長しています。
次話もよろしくお願いします。




