第二十五集 四十八の護身技ニャ!
ラオ=タン=ウー大師との修行が始まって数日が経った。
「回して回してー。
はい! 決め!」
「はっ!」
「いいですねー。
はい、もう一度!」
体の前でグルグルと棒を回して、ポーズを決める。
基本的にはこれの繰り返しだった。
「あの、ウー大師……。
"決め"は必要なんでしょうか?」
何をするにも、必ず最後は"決め"をさせられる。
見ている人がいないとはいえ、流石に恥ずかしかった。
レサは寝ていた。
道案内の方は初日だけで、二日目からは僕の背で寝ていた。
まぁ僕も道を覚えたからいいんだけど。
ちなみに今も寝ている。
布団まで持ち込んでる。
一体どうやって?
「それはもう。
これが一番大事といっても過言ではないです」
「はぁ……」
「護身にはハッタリも重要なのです。
強者の感を醸し出す事で、相手に躊躇させるのです」
髪をかきあげながら、自信満々に答えるウー大師。
そういうものなんだろうか?
これだけ自信満々に言われるとそんな気もしてくる。
ああ、つまりそういう事か。
「私を信じるのです。
さぁ、目を閉じて祈りなさい」
「祈ってどうするんですか……」
その日は終日"回して決め"の練習が続いた。
時々レサも起きてきて、その辺で拾った木の棒で僕の真似をしていた。
「おつかれ~、タマ〜」
「おおー、エノ。
頑張ってるニャー」
棒の回しすぎで腕がパンパンだ。
腕をダラリと下げながら大猩樹に帰ってきた。
レサには歩いてもらった。
「タマの方はどう?
お尻、大丈夫?」
夕食を食べながら、タマに進捗状況を聞く。
ちなみに夕食はお手伝いのゴリラ、シンシンさんが作ってくれていた。
食事だけではなく、寝床の準備やお風呂など身の回りの世話は全てシンシンさんがやってくれた。
お手伝いとはいえ、シンシンさんも大猩拳を使う武獣家でめちゃくちゃ強いらしい。
エプロン姿で、お玉を持っている姿からは想像も出来なかったけど。
「ニャ〜、お尻はもう大丈夫ニャ。
柔弾尻は大分感覚を掴んだのニャ。
もうすぐ肉球でも出来るように練習を始めるニャ」
「そっか。
順調だね」
「いや~、ここまで来るのに何度お尻が割れた事かニャ……」
タマが青ざめた表情でお尻を擦る。
タマも苦労しているみたいだ。
「エノはどうニャ?」
「僕は……」
"回して決め"を説明するのはちょっと恥ずかしいので躊躇っていると、レサが椅子を立った。
「これやってる……」
レサが"回して決め"をする。
何処から出したのか木の棒も持っていた。
それを見たタマは案の定、苦笑いだった。
「何でいちいち決めるんニャ……」
「強者感を出すためだって……」
「まぁお互い頑張るニャ……」
グータッチをしてタマとお互いを励まし合う。
レサはまだやっていた。
「レサ、もういいよ」
「決め……!」
翌日、ウー大師の処へと行くと大師が真剣な表情で待っていた。
「ウー大師、おはようございます」
寝ているレサを地面に降ろし、大師に抱拳礼をする。
大師は右手を上げて応えると、ゆっくり口を開いた。
「エノ君、そろそろいいでしょう。
今日は技を一つ教えます」
「え! ホントですか!」
思わず顔が綻ぶ。
反復練習とか、地味な作業は嫌いじゃないけど、流石にそろそろ違う事をしたかった。
「大分回すのも上手くなりましたからね。
早速お手本を見せましょう」
そう言うと大師は、例の如く背中から棒を取り出すと、体の前でクルクル回し始めた。
段々と速度を上げていくウー大師。
すると砂煙が巻き起こり、大師の体がすっかり見えなくなった。
「これぞウー式護身棒術、四十八の護身技の一つ、砂塵障壁!」
「うわー!」
辺り一面が煙に包まれ何も見えない。
目に砂が入らないように、腕で顔を覆うので尚更だ。
しばらくそうしていたが、次第に視界が開けてきた。
「はぁはぁ……」
ようやく煙が晴れた。
ウー大師の姿は見えなかったが、すぐに上から飛び降りてきた。
着地を決め、ウー大師が自慢気に言う。
「いかがでしたか?
これが四十八の護身技の一つ、砂塵障壁です。
今日からこれを練習してもらいます」
これをやるためにずっと棒を回していたのか。
確かにこれなら守りにも逃げるのにも使える。
護身術の名にふさわしい技だ。
何で四十八なのかはとりあえず置いておいた。
「凄い技ですね、大師。
是非教えてください」
「よろしい。
では、早速……む!」
大師が何かに気が付く。
大師の見ている方向を見ると、レサが寝ていた。
というか、大師に挨拶するために地面に降ろした時の姿のままだった。
「我楽護拳のレサ、出来る!」
「いや、ただのねぼすけだと思います……」
「zzz……」
読んでいただきありがとうございます。
四十八の護身技、屁の突っ張りはいらんやつです。
次回、修行も佳境に入ります。
よろしくお願いします。




